mixiユーザー(id:8666179)

2025年05月27日14:41

89 view

思いやり と 重い槍

大賀ホールから得た少し哀しい人生訓。

《承前》
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990037965&owner_id=8666179
フォト

登場人物は4人。
HIMARIの演奏に聞き惚れる800余人の観衆たち。
しわぶき一つない小さなホールに、やがて「コホッ、コホッ」とささやかな咳の音。
これが大ホールの3階席、ステージにはフィルハーモニーが大演奏とあれば、よくあるケースで見過ごされていく事態も、大賀ホールの音響の良さは、小さな咳すら拾っている。

G席の主はゴッホ氏。
初老の夫婦が並んで、ストラドの音色に酔いながら軽井沢でのひとときを過ごしている。
ところが、咳が止まらない。
絶対音感の不足しているO席のおいらについては、もちろん咳は聞こえていたけれど、それほどの気にもならず、ステージ上のHIMARIの左手運指を集中して追っていた。

集中から外れていったのが前列S席のスネオレッド氏と、前々列Z席のザビエル氏。
咳が聴こえるたびにスネオレッド氏はステージから視線を右に移し、ザビエル氏に至っては後ろを振り向いている。
ゴッホ氏としたら、出る咳を止めようと、或いはピアニシシシシモ程度の騒音に抑えようと懸命だけれど、出物腫物ところ嫌わず。
隣にいる奥さまも心配そうにしているけれど、水を用意していなかったのか処置のしようもない。

やがてHIMARIの奏でるブラソナ(『Violin Sonata No.3 Op.108』)が終わる。
BRAVO!
ゴッホ氏とザビエル氏の闘いを尻目に、能天気なオスカー氏がタイミングよくブラボーをコールして20分のインターミッションに入っていく。
ため息とともに、席を離れていく観客たち。

しかし、ザビエル氏は違った。
おもむろに後ろへ振り返りゴッホ氏にひと言、ふた言。
聴こえてはこないけれど、きっと「飴を舐めなさい」とか「水を用意しておきなさい」という鑑賞マナーの注意をしているのだろう。
ゴッホ氏も恐縮しながら頭を下げている。
確かに、ザビエル氏にしてもHIMARIのDUOを楽しみに遠路、軽井沢にやってきたのだろう。微かな音色すら重要なソロパートを雑音で汚されたくないという思いは理解できないこともない。(←理解できる)

ただ、少しその注意時間が長すぎる。
ハンドサインを見ると、「咳が止まらないなら出ていけやがれ」のような印象すら感じていたO席のオスカー氏。
このシーンを傍観し続けたおかげでインターミッションにトイレへ行くことはできなかった。漏らしたらどうする。(←漏らさない)
いつまで滔々と説いているのやら、ようやく解放されてゴッホ夫婦がロビーへと退室した。

すると、やがてそそくさと、赤いベレー帽をかぶったS席のスネオレッド氏が、おもむろに、してやったりと着席しているZ席ザビエル氏の肩を叩き、
「よくぞ、言ってくれました。気になって仕方がなかった。あんなシロウトが来るべきコンサートじゃない」みたいな表現を、ボディランゲージを加えてザビエル氏に伝えている。
感謝と敬意の証明らしい。
オスカー氏的には一番嫌いなタイプの性格。
自分ではなにも言えずに、誰かが汚れ役を引き受けると「ぼくもそう思っていたんですよ手(チョキ)」というクソ野郎。
ザビエル氏の顔を見ると、満更でもないらしい。
ふんぞり返って椅子から落ちそうな勢いだ。
この2人、トランプとイーロンに置き換えても分かりやすい。

やがて、ゴッホ氏が恐縮しながら席に戻ってきた。
夫婦で話をしてきたのだろう。ザビエル氏の真後ろは奥さまが着席し、ゴッホ氏は通路側に移る。
カバンから取り出したのは喘息用のスプレー。
これを念入りに何度ものどへと吹きかけて、後半のステージに備えている。

さて、ここからが川崎オスカー、怒りの筆記。
チャイムが鳴り、インターミッションがそろそろ終わるころ。
ザビエルが何を思ったのか、また振り向いてゴッホ氏夫婦になにかを説いている。
恐縮する姿のゴッホ氏。きっと、演奏中の咳には「退場」の勧告でもされたのだろうか。
或いは、スネオレッドから褒めてもらったのをいいことに、さらにマウントを取ってのモラルハラスメントタイムのスタートか。

そこまでやる必要はないだろう。
最初の注意はまだしも、十分に対策を練って後半に備える夫婦に対して、お前は何様か。
思いやりのかけらもなく、このコンサートを楽しみにやってきた老夫婦に重い槍を突き刺した。
ザビエルはきっとこう言うに違いない。
「こっちだって折角取ったHIMARIのコンサートを、騒音でつぶされた」
なにを偉そうに、てっぺんハゲが。
お前の後方円形ハゲが天井シーリングライトに反射して、こっちはずっと眩しいのを我慢していたわい。(←してない)

スネオレッドにしてもまったくのマナーレス。
ホールに入ったら脱帽が当たり前。赤いベレー帽をかぶりっぱなしで、コンサートに挑んでいる。スネオとザビエル、ハゲ兄弟か。

それにしても難しい問題のひとつであることは確か。
特にクラシックコンサートに参加する人たちは、極めて音に敏感であり、咳のひとつひとつすら「音符」を伴って聴こえてしまう絶対音感の持ち主にとっては、完全なる不協和音となって聴こえてしまうのだから。
かつて市村正親は、類まれなる絶対音感がたたって殺人まで犯している。

どうすればよかったのか。
もし、自分の後ろの席の観客が咳き込んでいたら、自分はどうしただろう。
悪気があって咳をしているわけではない。スルーするのがきっと自分の判断。
思いやりをもって、咳を止めるためのサジェスチョンをする。
それぐらいのことしかできないだろう。

ザビエルにしても、勇気のある注意だったに違いない。
なぜなら、後半のステージにおいて、ザビエル自身は咳はもとより、放屁することすらできない雁字搦め(がんじがらめ)の道を選んでしまったのだから。
残りの生涯、ザビエルは透かしっ屁だけしか許されない。

クラシックのモラルが厳しすぎて、コンサートへ行かない人たちが増えている。
ゴッホ氏夫婦が今回の経験で、「二度と行くものか」となりませんよう、そしてHIMARIの良きコンサートともに、楽しいひと時が帰路に着く新幹線にありますようにと、オスカー氏は願うばかりであった。

思いやりと重い槍。
なぜ、これを日記に書いたのか。
願わくばザビエルやスネオレッドに読んでもらいたい。
叶わぬならば、これを読んだ人たちがゴッホ氏に対して優しくあって欲しい。
彼は大相撲の立ち合いに叫んでいるバカではない。不覚にも咳が出てしまったんだ。

反面教師に出会ったことは、間違いなく自分の糧になる。
特にスネオレッドにはなりたくない。
HIMARIのお陰で、また一つ優しくなった。

(つづく)



■【速報】「百日せき」全国の1週間の報告数2299人で過去最多 累計患者数は1万9274人 すでに年間患者数の最多を更新
(TBS NEWS DIG - 05月27日 11:25)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=266&from=diary&id=8326993

10 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2025年05月>
日 月 火 水 木 金 土
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

最近の日記

もっと見る