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2025年01月21日12:55

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「ジャム・セッション」アーティゾン美術館 (追記) デュシャン×毛利悠子

1/17の日記「「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子〜ピュシスについて」/アーティゾン美術館 (改訂)」では、以下4件を「時代を超えた思いがけない共演」としてピックアップした。

・ジョルジュ・ブラック(1882-1963)の《梨と桃》(1924)×毛利悠子《Decomposition》(2021- )
・クロード・モネ(1840-1926)《雨のベリール》(1886)×毛利悠子《Piano Solo:Bell-Île》(2021- /2024)
・パウル・クレー(1879-1940)《数学的なヴィジョン》(1923)×毛利悠子《Magnetic Organ》(2003)
・コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)《接吻》(1907-10)×毛利悠子《Calls》(2013- )

以下本文。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1989223955&owner_id=3341406

ここへきて、もう1件書いておくべきだったとの思いが強くなった。
それは、デュシャンと毛利のジャム・セッションである。
・マルセル・デュシャン(1887-1968)《マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィ(*)の、または、による(トランクの箱)シリーズB》(1952/及び1946の鉛筆素描)×毛利悠子《めくる装置、3つのヴェール》(2018- )

デュシャンの奇妙なタイトルの作品は、のち本人が関連資料をミニチュア化しトランク詰めしたものに付けたものである。
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元々は《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(通称《大ガラス》)(1915-23)という立体作品で、未完に終わったうえ、1931年の搬送時にガラスが破損してしまった。しかし、デュシャンはその状態にダメ出しせず、1936年迄にヒビの修復を行って価値を認めた。
その写真が下だ。(本展では展示していないが、トランクの内容物の中央にミニチュアのレプリカがある。)
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これは今もフィラデルフィア美術館が所蔵しており、アーティゾン美術館は、世界に何点か存在するトランク入りミニチュアセット版をコレクションしているという訳である。

(*)「ローズ・セラヴィ」とは何か? これについては、以下参。
「マルセル・デュシャンと日本美術/東京国立博物館」(2014.12.14記)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1969554731&owner_id=3341406

デュシャンの《大ガラス》については解釈に諸説あって難解なので、深入りはやめ、毛利のそれを起点にして話を進める事にする。

彼女によれば、
…「9人の独身者」が「花嫁」(当然既婚者である)に対し欲望を抱き、その欲望が様々なモチーフを介して飛んでいる…。
《大ガラス》の上半分が「花嫁」、下半分が「9人の独身者」の世界。

「花嫁」の元になっているのは、同タイトルの油彩画(1912)。(非展示)
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見にくいかもしれないが、トランクと内容物の写真の左端にもその絵の縮小版がある。
この絵の一部が切り取られてガラス上部左側に描かれている。

一方の「9人の独身者」の方は、ガラス下部左側に、チェスの駒に手を加えた形のもの、それが9体あるのがお分かりになるだろう。

展覧会場では、中央の白いパーテーションを境に、右側が「花嫁」のエリア、左側が「9人の独身者」のエリアになっている。
この写真に写っているところが左側エリアで、奥には台があり、壁には3枚の素描。
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手前には、白いプラスチックのロートを7つつなげてアーチ状にしたもの(デュシャンによれば花嫁が発する欲望のガスの濾過器)が見えるが、同じようなものが《大ガラス》の下部にもある。

奥の台の上には眼医者の視力検査でお目にかかるような円形の金属レリーフが載っている。「眼科医の証人」と通称されるもので、これも《大ガラス》の下部右側にあるだろう。
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《大ガラス》は上下に、本会場では左右のエリアに女性と男性の世界は分断されており、互いの欲望は不毛で満たされる事がない。
「眼科医の証人」の円形の模様上を金属毛のブラシが動くと発電が起こる。しかし「独身者」達はそのエネルギーを如何ともできず、虚しく自慰するのみ。

ガラスの下部中央に描かれているドラムスのような物は「チョコレート磨砕器」。デュシャンはそれについて、「独身者は自らそのチョコレートを挽く」とトランク中のメモに書き残している。
彼は《チョコレート磨砕器》を単体でも1913年と14年に描いている。お気に入りのモチーフだったようだ。
下は1914年版。(非展示)
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「眼科医の証人」で行われた発電は、仕組み上、花嫁側エリアにあるサーキュレーターを作動させ、スキャナー画面上のヴェールがひらひらと舞い上がる。スキャナーはそれを図として撮りこみ、天井から吊り下げられたモニターに映し出す。
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壁にかかっているのは、その繊細に震えるヴェール図を美麗に額装したもの。

〈眼科医の証人〉の台の背後の壁には、アンリ・マティス(1869-1954)が女性の顔を描いた線描画のシリーズ、《襟》(1937)、《チェックの襟の女》(1937)、《女の顔、チェックの襟》(1938)の3点が掛かっている。
下の写真は最初の《襟》。
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毛利の《めくる装置、3つのヴェール》(2018- )は、こうしてデュシャン、マティスと交歓しながら循環し続ける。
 

〈参考資料〉
図録『デュシャン 人と作品』
 執筆 アシュー・アフロン 他
 発行 2018年、フィラデルフィア美術館
 
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