83年5〜6月にかけて行われたIWGP決勝リーグ戦、北米(カナダ)代表として来日したディノ・ブラボーは新宿・京王プラザホテルで行われたレセプションには出席したものの「自宅に強盗が入った」との報を受けて1試合も行わずに帰国。
ブラボーは93年3月に犯罪組織によって射殺されており44歳で生涯を終えていますが当時から裏社会とのトラブルを抱えていたようです。代わってラッシャー木村が出場しています。
このシリーズは予選落ちした藤波辰巳、タイガーマスクは参加せず、新WWFインターナショナル・ヘビー級王者の長州力は公式戦が組まれない選手の相手をするといういびつなマッチメーク。
5月6日福岡スポーツセンターでの開幕戦では猪木がアンドレ・ザ・ジャイアントにフェンスアウトによる反則負け、ハルク・ホーガンはキラー・カーンにアックスボンバーからの体固めでフォール勝ち。
ヨーロッパ代表のオットー・ワンツは怪我の為序盤戦で途中帰国。また、IWGP実行委員の一人であり、立会人として来日したカナダ・トロントのプロモーター、フランク・タニーが日本帰りに観光で立ち寄った香港で心臓発作を起こし客死するという悲しい出来事もありました。
5月16日津市体育館では長州とアニマル浜口が巡業から姿を消し出場ボイコット。
優勝決定戦は6月2日蔵前国技館で行われました。優勝決定戦に勝ち残ったのは猪木とホーガン。アンドレは前日の6月1日愛知県体育館でKカーンと両者リングアウトとなり決勝進出は成らず。
場外戦でコーナーの鉄柱の前に立った猪木にホーガンが背後からのアックスボンバー、これで猪木は頭から鉄柱に激突、意識朦朧とした状態でリングに上がろうとエプロンまで上がったところ、リングにいたホーガンはロープに自ら飛んでのアックスボンバー。
これがクリーンヒットし猪木は「糸が切れた凧」のように場外に落ちてしまい上がって来られず失神、21分27秒、猪木が壮絶なKO負けとなりホーガンが優勝しました。この「猪木舌出し失神事件」は一般マスコミが採り上げる事件となりました。
これは今では諸説情報が出ていて猪木の自作自演によるものというのが定説になっています。
タイガーマスクは最終戦の蔵前大会のみ出場、小林邦昭と空位のままだったNWA世界ジュニア・ヘビー級王座決定戦を行い鮮やかな飛びつき式前方回転エビ固めでフォール勝ちし2か月ぶりに王座返り咲き。
もう一つのWWFジュニア・ヘビー級王座はシリーズ終了後の6月12日メキシコシティ・エル・トレオ・デ・クアトロ・カミノスでフィッシュマンを2-1で降して王座返り咲き、返上前と同じジュニア二冠王になっていますが、タイガーマスクの生みの親である劇画作家の梶原一騎の講談社月刊少年マガジン編集長恐喝による逮捕があり猪木監禁事件が明るみに出されて「タイガーマスク消滅の危機」が報道されました。
同じ日のトレオで藤波が5月1日に同所でカネックを破り獲得していたUWA世界ヘビー級王座をカネックに1-1から反則負けで敗れベルトを落としています。4月21日蔵前国技館での長州力とのリターンマッチに敗れ失意のどん底に落ちた藤波は書き置きを残して消息を絶っていましたが、若手時代に修行したメキシコに向かっていた、というのが表向き。
実際は5月にIWGP参戦の為に日本に遠征に出たカネックとのバーターでメキシコに行っていたに過ぎませんでした。
6月17日に姿を消していた長州と浜口が港区南青山の新日本プロレス事務所に姿を現し新間寿営業本部長に辞表を提出しフリー宣言。
7月1日後楽園ホールで開幕の「サマー・ファイト・シリーズ」から長州と浜口が合体、Kカーン、タイガー戸口、小林邦と維新軍を結成しています。
このシリーズは猪木がホーガン戦で受けた頭部へのダメージの後遺症から全休となりましたが藤波がメキシコから帰国し新日本プロレス正規軍として維新軍と対峙。
7月7日大阪府立体育会館では藤波が長州のWWFインターナショナル・ヘビー級王座に2度目のリターンマッチを挑み、長州の得意技であるサソリ固めを出して、長州がロープエスケープしても絞め続けて反則負け。
梶原一騎問題でマスクのデザインを変えて下のコスチュームも赤のパンタロンに変えたタイガーマスクは寺西勇とNWA世界ジュニア・ヘビー級王座防衛戦を行い、エビ固めで丸め込んで初防衛に成功しますが、試合後に小林邦が乱入しマスクを剥がされてしまいました。
しかし、ファンが投げ入れたマスクを被ってタイガーマスクは無事にリングを降りています。黄金とオレンジのハーフタイプのマスクで、まさに劇画のようないいシーンでした。
シリーズ最終戦の8月4日蔵前国技館は猪木不在にも関わらず13,000人超満員発表の大観衆が集まり、藤波は長州に場外でのバックドロップからリングアウト勝ちでWWFインターナショナル・ヘビー級王座を4か月ぶりに奪回。
タイガーマスクは寺西をタイガー・スープレックスホールド(猛虎原爆固め)で破りNWA世界ジュニア・ヘビー級王座を2度目の防衛を果たしています。
タイガーマスクのリングネーム変更が発表され、ファン投票により新リングネームを決めることになりました。
この問題は梶原一騎とのトラブル表面化から受け入れざるを得ない面があり、新日本プロレスでは次の8月26日大宮スケートセンターで開幕の「ブラディ・ファイト・シリーズ」を「さようならタイガーマスクシリーズ」とする予定で、これで猪木がリングに戻ってくれば「雨降って地固まる」となるはずでしたがシリーズオフにとんでもない事件が勃発します。(この項続く)
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