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2024年01月20日22:38

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本●「日本ハードボイルド全集7 傑作選」

今日は朝から晩まで雨だった。
年末から読み続けてきた一冊をようやく読み終えた。

本●「日本ハードボイルド全集7 傑作選」(東京創元社)
北上次郎・日下三蔵・杉江松恋 編

数えたら16編の短編アンソロジー。
私みたいな「ハードボイルド」といえば、現代を舞台にした一人称でなければならないとおもっている原理主義者にとっては、えええ???となったり、いまいちピンとこない作品もあるのだが、そのうちの何編かは、確実に凄いとおもったり、この作家の他の作品も読んでみたいと思わせるものがあった。
凄いとおもったのが、阿佐田哲也の「東一局五十二本場」。
タイトル通り、麻雀小説。
麻雀にかけては素人ながら腕におぼえのあるアンチャンが、しょぼくれたプロ雀士3人と半チャン勝負の卓を囲むことになる。
アンチャンの親で始まった東一局、彼はつきにつきまくって連荘を重ねた。
どんどんと増える点棒に、プロといってもこれしきかと、アンチャンは有頂天。
ところが、雀士のひと言にアンチャンは焦り出す。
いくら点棒が貯まったところで、半チャンが終わらなければ勝負は終わらない。
やがてアンチャンに訪れる非情な結末とは・・・・
その非情さが、まさにハードボイルド。
抜群の切れ味に、心底凄いものを読んでしまったとおもう。

藤原審爾の“新宿警察”シリーズの一編「新宿その血の渇き」が、とても琴線にふれる。
ときは1969年、ところは新宿西口広場、群れなす若者たちの歓声と歌声が溢れる片隅で、時代に取り残されたような貧しい青年が耐えがたい孤独にさいなまれていた・・・・
スコセッシ監督&デ・ニーロ主演の『タクシードライバー』(「1976)や、昨年1年をかけてネット配信で見続けた東映の『警視庁物語』シリーズを思い出す。
“新宿警察”シリーズ、これは読まなくちゃ。

巻末の編者三人によるリレー解説「日本ハードボイルド史」も読ませる。
編者のひとりで昨年亡くなった北上次郎による<1980年代から90年代>の解説が、晩年の筆とはおもえない熱気に満ちた書きぶりだ。
原“りょう”、大沢在昌、逢坂剛、船戸与一、志水辰夫などなど、登場する作家たちの作品をリアルタイムで読んでいたこともあり、懐かしさとあいまって、うんうん、そうだそうだと、うなずきながら読み終えた。
懐かしがってばかりではいけない。
杉江松恋による<90年代から2020年代>までを一気に駆け抜ける解説には、若竹七海、垣根涼介、樋口有介といった、名前は知ってるが一冊も読んだことのない作家の名が登場する。
「日本ハードボイルド全集」としては完結だが、その最終巻が私にとって、これからの本読み生活の道しるべになった。



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