映画日記『青いカフタンの仕立て屋』

２０２３年７月２３日（日）

『青いカフタンの仕立て屋』（２０２３年）
監督：マリヤム・トゥザニ
伏見・ミリオン座

モロッコの海辺の街に、カフタンとよばれる伝統衣裳の仕立て屋を営む夫婦がいた。
夫は仕立て職人、妻は店番、ふたりに子どもはいないが、いまでも仲睦まじい。
夫はミシンに頼らず、一針一針確かな腕でカフタンを縫い上げていく。
ていねいな仕事ぶりに、どうしても注文をさばくのに時間がかかりがち。
そんな折り、若い職人があらわれて・・・・

予告編を見ればなんとなくストーリーが分かってしまう。
おおよそ想像どおりに話は進んでいく。
それなのに、深みのある映像と、コーランやアラブ音楽や人々の喧噪といった街のざわめきが絶えまなく流れる画面から目が離せない。
目が離せなくなるのは映像や音響の魅力だけはない。
夫婦と若い職人、三人の人間関係というか、愛情関係を、とても繊細に描いている点も見どころだ。
彼らが、路上からきこえてきたアラブ音楽にあわせて踊り出す、多幸感溢れるシーンにグッときた。
三人の俳優がすばらしい。
とりわけ、夫妻役のふたりが何かの拍子に「うふふふ」と笑みをかわすシーンのやさしさといったら！！

傑作。