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2023年07月13日23:56

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映画日記『世界が引き裂かれる時』

2023年7月13日(木)

『世界が引き裂かれる時』(2023年)
監督:マリナ・エル・ゴルバチ
今池・名古屋シネマテーク

ときは2014年の夏、ところはウクライナ東部の小さな村。
大きなお腹をさすりながら妻のイルカは夫のトルクに、部屋に大きな窓を作ろうよと寝物語に語っていた。
ところが翌朝、窓どころか、砲撃によって部屋に大きな穴ができてしまう。
穴だけはない。生まれてくる赤ちゃんのための乳母車が壊れてしまった。
イルカが怒りの声をあげる。
親ロシア派の××××××!!(×××はどんなセリフか忘れてしまったが、いわゆる罵詈雑言のたぐい)
不穏な空気が流れるなか、夫のトルクがどうも親ロシア派に近いことが分かってくる。
いっぽうキーウで学生をしてるイルカの弟で反ロシア派のヤリクは、帰省して身重の姉を危険地帯から逃そうとするのだが・・・・

ロシアのウクライナ侵攻前に製作された1本。
侵攻の火種となったドネツク州あたりを想定した作り。
去年見た『ドンバス』同様、いわば内戦状態の異常さが描かれる。
さらに内戦状態のさなかに、上空を飛行していたマレーシアの民間旅客機を親ロシア派が発射したミサイルによって撃墜してしまう。
広大な畑のあちこちに、そしてイルカの家にも、空から落ちてきた乗客の死体がゴロリと横たわっていた。
内戦にしろ侵攻にしろ、戦争状態になればすべてが不条理になってしまう。
長回しやピンボケや極端なロングショットを駆使した奇妙な撮り方が、その不条理な世界のいびつさを強調していた。
妊婦のイルカのために、親ロシア・反ロシアで反目しあう夫と弟が、いっしょになって彼女が座るソファを外に持ち出し爆風のほこりを払い、使えるレンガを拾って、穴があいた部屋の修復にとりかかる。
いがみあってはいても、お腹の子は、大事な我が子であり、可愛い甥っ子か姪っ子なのだ。
正直、実情が分からないので、登場する兵士たちが親ロシアなのか反ロシアなのかもやもやとするが、そんなことを差し引いても、内戦への、そして戦争への、女性監督のストレートな怒りが伝わってくる。
見ごたえのある1本だった。




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