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2022年10月27日23:54

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映画日記『七人の刑事 終着駅の女』

2022年10月27日(木)

『七人の刑事 終着駅の女』(1965年)
監督:若杉光夫
日本映画専門チャンネル

上野駅のホームで女性の刺殺死体が発見された。
さっそく所轄署に捜査本部がおかれ、七人の刑事たちの地道な捜査が始まる。
しかし、女性が所持していたバッグには岩手県の「北上」行きの切符があるだけで、彼女の身元確認がとれず、捜査は難航する。
上野駅の雑踏の中で、刑事たちは事件の真相にたどり着けるのか・・・・

1960年代の人気刑事ドラマ「七人の刑事」の劇場版。
堀雄二、芦田伸介、菅原謙二、美川陽一郎、佐藤英夫、城所英夫、天田俊明、以上七人の刑事、なんとなく覚えていた。
ところが、本編でももうひとり大滝秀治も刑事役でちょこまかと活躍する。
なんだ「八人の刑事」じゃないかとおもったら、彼は所轄署の刑事だった。
まあ、そんなことはおいといて、モノクロのドキュメンタリータッチな撮影に引き込まれる。
上野駅のホームやコンコースや地下道に、さらには駅界隈の雑踏に、ズンズンとカメラが入っていく。望遠による隠し撮りに近い撮影シーンもある。
刑事たちだけでなく、60年代の人が溢れる上野駅の喧噪も映画の主人公だ。
長距離列車の席を乗客にかわって確保するため、早くからホームに並んでの席取りを商売とするアンチャンがいたり、置き引き犯たちにも駅構内に縄張りがあって、それをきちんと守っていたりと、当時の裏稼業の片鱗がうかがえ面白い。
そして、多くの人びとが行交うシーンに、「青森行きの特急はつかりは8分遅れで出発〜」とか「景気が悪くて売れないわねえ〜」といった駅構内のアナウンスや、売店のおばさんの声、そのほか公衆電話を掛けてる人や、通行人たちの会話などが被さる。臨場感たっぷり。
話かわって、「七人の刑事」といえば♪むーむー、むむむ、むむむ、むむむ、むー・・・という山下毅雄のテーマ曲が有名。
ところが本作ではどこにもテーマ曲が流れない。テーマ曲どころか、商店街から流れてくるザ・ピーナッツの歌以外、音楽なし。
駅や雑踏に溢れる音や人声が、映画音楽のかわりになっている。
オープニングで、今年の6月に亡くなった作曲家・渡辺宙明が、「音楽」でなく「音響」とクレジットされていた(とおもう)。ひょっとしたら見間違いかもしれないが、本作における渡辺宙明の仕事はメロディの提供ではなく、いまで言う「サウンド・クリエーター」だったことは確かだ。

当時の上野駅といえば、東京の北の玄関口。
大都会・東京と東北地方の格差が刺殺事件の背景にある。
上野駅の改札口から、夢に溢れた少女が都会への第一歩を踏み出す。
少女と入れ違いに、夢に破れ、都会に疲れた女がひとり、改札口を通り過ぎていった。
余韻の残るラストシーンだった。



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