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2022年10月24日22:40

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本●「台湾、ローカル線、そして荷風」

本●「台湾、ローカル線、そして荷風」(平凡社)
川本三郎・著

読了。

独居老人・川本三郎が自著が翻訳出版されたことを機に、年に一度は訪れている台湾について、ふらりと列車に乗り見知らぬ町で途中下車する、そんなローカル線の旅について、そして敬愛する永井荷風について、それらへの尽きせぬ思いを縦横に語る一冊。
ローカル線のパートだけを読むつもりが、結局全部読んでしまった。
なにしろ、どのパートを読んでも、あちこちに映画の話が散りばめられている。映画好きとしてはページを繰る手が止まらない
たとえば、水害にあった関東鉄道常総線が再開されたときいて、さっそく乗りに出かけたときのことをきっかけに、話が小説家の長塚節になり、池波正太郎が突然登場し、私は高田渡の歌で知った詩人の山之口獏へと続く。
そして『男はつらいよ』に話題が転じ、山田洋次監督は鉄道好きだと推測する。
とおもったら、東映時代劇の悪役俳優・山形勲の名が飛び出してきた。
山形勲は大好きな俳優だ。
最後に、台湾の街で見かける廟(びょう)が、中央線の大久保駅近くにあり、最近よく出かけているという話で終わった。

じつは、本書を読んでいちばん驚いたのが山形勲のくだり。
というのは、山形勲がロンドン生まれであることは何かで読んで知ってが、髷を結った東映時代劇の悪役とロンドンの組合わせがとても奇妙だ。
どうして彼がロンドンで生まれなのか、長い間ずっと疑問だった。
本書によると、山形勲の父は山形巌という軽業師で、明治期にサーカスの一座に加わり長期間ヨーロッパを巡業していた。長くロンドンで暮らしていたという。やがて1914年の第一次世界大戦勃発を機に日本へ戻り、東京麻布に当時では珍しかった洋風の「山形ホテル」を建てた。
その近くに荷風の偏奇館があり、「山形ホテル」は荷風愛用のホテルだったという。
へえー、だった。

「近鉄」という言葉も本書で知った。
「きんてつ」ではなく「ちかてつ」だ。川本三郎の造語とのこと。
日帰りで近場のローカル線を楽しむというもの。
名古屋近辺にも、豊橋鉄道や樽見鉄道や伊賀鉄道といった乗ったことのないローカル私鉄がある。よく使う名鉄線でもすべての路線を完乗していない。
これからは「近鉄」だな。懐にもやさしそうだし。



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