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2022年10月15日22:40

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本●「汽車旅放浪記」

本●「汽車旅放浪記」(新潮社)
関川夏央・著

図書館で借りてきた一冊。
明日が返却日なので、午前中に急いで読了。

やっぱ、鉄道本は楽しい。
中盤の宮脇俊三の足跡をたどる鉄道旅の一章が白眉だ。
この章だけ、他のページとはレイアウトを変えている。ページの上下に飾り罫を施すという凝りようだ。
先に読み終えた「有栖川有栖の鉄道ミステリー旅」でも、宮脇俊三について言及していた。
これだけあちこちで引用されるのだから、宮脇俊三の鉄道本というのは、すでに古典ということになりそうだ。
その他、関川夏央には『坊っちゃん」の時代』という谷口ジローとの共著によるコミックがあるように、夏目漱石と鉄道とのかかわりを綴った一章も読みごたえがあった。
「三四郎」の主人公、23歳の青年・小川三四郎が九州福岡の片田舎、行橋の駅から汽車と船を乗り継ぎ、下関、神戸、大阪、京都、米原、そして名古屋で車中で知りあったばかりの女性と同宿したのち、今の御殿場線経由で東京へ至るまでの旅程を、鉄道ファンらしく当時の「時刻表」を参照しながら、おおよそこんな時刻に走る、こういう列車に乗ったのではなかろうかと推測するくだりには感心した。

ところで、その夏目漱石の章で、「あれっ?!」とおもった箇所があった。
それは夏目漱石の親友で、満州鉄道の総裁や貴族院議員に東京市長などを歴任した中村是公のことだった。
中村是公、その名の正しい読みは「なかむらよしこと」とのこと。
ただ多くの人は「なかむらぜこう」と呼んでいたという。
漱石も彼のことを「ぜこう、ぜこう」と呼び捨てにしていた。
私が「あれっ?!」とおもったのは、「なかむらぜこう」と言われて、まっさきに思い浮かんだのが、昔テレビや映画でよく見かけた、痩せて奥目の爺さん俳優のことだった。まさか、あの人の好さそうな俳優さんが政治家だったとは?
しかし、どうも年齢が合わない。
あらためてウィキペディアで検索すると、私が思い描いた「なかむらぜこう」は、中村是好のことだった。
中村是好、本名・中村愚堂(ものすごい名前)は戦前エノケン一座で活躍し、戦後は庶民的な役柄を得意とした。また、後年は盆栽家としても有名だった。
それにしても、中村是好という芸名と、政治家の中村是公は偶然のことだろうか?
ひょっとしたら、黒澤映画の常連で、藤原鎌足の名をなぞった、俳優の藤原釜足と同じように、当時高名だった中村是公の名をなぞったのかもしれない。
まあ、今となってはどうでもいいことだが。

本書を読み終え、返却ついでに5冊借りてきた。
その中の1冊が川本三郎の「台湾、ローカル線、そして荷風」。
どんなローカル線が登場し、どんな「読み鉄」の旅が待っているのか、いまから楽しみ。


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