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2022年06月12日22:05

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本●『寝台特急「昭和」行』

本●『寝台特急「昭和」行』(中公文庫)
関川夏央・著

読了。

この人も鉄道ファンだったのか!!
その昔、関川夏央の著書「ソウルの練習問題」(1983年刊)を読んでたら、ソウルの街が居並ぶ建物は東京とさほど変わらないのに、看板や広告やディスプレイなどすべてハングル文字で、“ハングル酔い”になってしまった、という記述があった。
数年後、たまたま仕事の関係でソウルへ行ったら、ほんとうにその通り、私もハングル文字の洪水にめまいがした。
これまで関川夏央の本とのつき合いはこの一冊だけだった。
まさか関川夏央が子どもの頃からの鉄道ファンだったとは、意外だった。

「小説中に、汽車を主要な要素として登場させた最初の人は夏目漱石だと思う」 (本文抜粋)

文芸評論家としての一面を持つ関川夏央ゆえ、近代以降の小説家たちと鉄道についての記述が多いのも本書の特色。
漱石の「三四郎」を引き合いに、「三四郎」の主人公小川三四郎が東京帝大に入るため、福岡の行橋から汽車に乗って上京する長旅をことこまやかに採録し、解説をしている。
その書きぶりに、ついつい松本清張原作、野村芳太郎監督の映画『張込み』(1958)の、ふたりの刑事が犯人を追って、東京から九州行きの夜行列車に乗り佐賀まで行く行程をえんえんと映し出す、冒頭のシーンを思いだしてしまった。
国鉄の菜っ葉服を着た幸田文が、蒸気機関車の運転車に同乗したルポルタージュを取りあげた一編もユニーク。
とにかく幸田文と蒸気機関車という組合わせを見つけ出してきたのは、文芸評論家としての面目躍如だ。
そして、私も敬愛する紀行作家・宮脇俊三について、ひとりの鉄道ファンとして、文芸評論家として、多くのページを割いていたのも、喜ばしいことであった。



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