mixiユーザー(id:6810959)

2022年06月08日23:59

45 view

映画日記『悲しき口笛』

2022年6月8日(水)

『悲しき口笛』(1949年)
監督:家城巳代治
岐阜市柳ヶ瀬・ロイヤル劇場

敗戦後の横浜が舞台。
野宿をしながら日雇いで港湾労働に従事している、いわばルンペンプロレタリアートの一団がいた。
彼らに混じって暮らすひとりの浮浪児が、疲れきった彼らのために、自慢の歌声を聴かせていた。
そんなおり、復員してきた青年・健三が横浜にあらわれる。
彼は戦争で離ればなれになってしまった妹のミツコを捜していたのだ。
ミツコとはあの浮浪児のこと、演じるは美空ひばり。
健三は、もとはといえば音楽家、彼は徴兵される前に自分がつくった「悲しき口笛」という歌を妹ミツコに教えていた。
横浜の街で、いくどとなくすれちがいを繰りかえす兄と妹、はたしてふたりは再会できるのだろうか・・・・

もちろん、再会します。
その再会シーンがクライマックス。
歌の才能を認められたミツコは、ある夜キャバレーで天才少女歌手としてデビューすることになった。
そんなこととは露知らない健三は、色々あって今は婚約者となった京子(津島恵子)といっしょにキャバレーにあらわれる。すると、あのメロディが聞こえてきた。
まさかと血相を変えた健三が、人混みをかき分け前に出ると、そこにはシルクハットに燕尾服、ステッキ片手に「悲しき口笛」を歌い踊るミツコがいた!!

ときたま写真で見かけた、シルクハットに燕尾服を着た子ども時代の美空ひばりは、この映画だったのか!!!
見どころは、一にも二にも美空ひばり。
当時12歳らしいが、戦中戦後の食糧事情のせいか、どうみても小学生の低学年にしか見えない。やせて小柄な、こましゃくれたガキだ。
モノクロフィルムの中に映る、貧しい時代の風景を眺めながら考えてしまった。
当時の日本人は、こんなちっぽけな少女に、いったい何を見い出したのだろうか?
歌のうまさだけではないとおもう。
その時代の気分というのは、やはりその時代に生きていなければ、分らないものかもしれない。
いずれにしても「悲しい口笛」は彼女自身、初の大ヒット曲になり、ということは映画もヒットしたのだろう、美空ひばりは歌に映画に、大スターへの道を歩きはじめることになる。
帰宅して、いつものように日本映画データベースで「美空ひばり」を検索したら、彼女の出演作はなんと160本を超えていた。しかも、松竹・大映・日活・東宝・東映のいわゆる「五社」に新東宝を含めた、戦後日本の大手映画会社六社すべてに出演していたのには驚いた。
しかし、その出演作のほとんどが、「べらんめ芸者」や「ひばり捕物帖」といったプログラムピクチャーだった。
キネマ旬報ベストテンやブルーリボン賞といった映画賞とは無縁の作品ばかり。
とはいえ、1950年代から60年代初頭の日本映画黄金期を支えた立役者のひとりであることには間違いない。

『悲しき口笛』に続く『東京キッド』や、「りんご追分」を歌う『リンゴ園の少女』など、少女から娘時代のひばり映画が見たくなってしまった。



8 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年06月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930