2022年1月18日(火)
『世界で一番美しい少年』(2021年)
監督:クリスティーナ・リンドストロム & クリスティアン・ペトリ
伏見・ミリオン座
ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』(1971)によって“世界で一番美しい少年”と呼ばれることになるビョルン・アンドレセンの、波乱と数奇に満ちた半生を辿るドキュメンタリー。
見終わって、深い溜息しかでない。
ビョルン・アンドレセンは1955年生まれというから、私とほとんど同世代だ。
1本の映画が、同世代のひとりの男に誰もがうらやむほどの栄光をもたらすと同時に、深い傷を背負わせてしまった。
『ベニスに死す』を見た観客のひとりとして、「うわっ、すげえ美少年!」とビョルン・アンドレセンの圧倒的な美しさを称賛しつつも、いっぽうでどこか好奇の目で見ていたのも確かだ。
私もまた、彼に傷を負わせてしまったひとりだったかもしれない。
そんなどうでもいいジジイの反省はおいといて、ビョルン・アンドレセンが日本に「ベルばら」といった少女漫画に多大な影響を与え、「やおい」や「ボーイズラブ」といった、現在にも続くサブカルチャーを形作ったひとりであるという本作に指摘にうなずくものがあった。
ひとりの少年が背負ってしまった傷が、ひとつの文化が育つための種子であったということか。
さまざまな思いが頭の中に沸き起こる1本だった。
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