今年3/6(金)、NHK-BSの「クラシック倶楽部」で、「藤倉大 ”個展”」という名のリサイタルの収録が放送された。
英国在住の作曲家 藤倉大(1977- )は、世界でその動向や作品が注目されている。
私は昨2019年7/6、愛知県芸術劇場のコンサートホールで行われた名古屋フィルハーモニー交響楽団第470回定期演奏会で、彼の〈オーケストラのための《グローリアス・クラウズ》〉を聴いた。
参)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972198913&owner_id=3341406
曲だけでなく、藤倉大という人間についても少し触れているので、参照頂ければ幸いだ。
放送された演奏会は、2018年10/20、東京・ハクジュホールで開催されたもので、藤倉大の室内楽的作品を、関係浅からぬ演奏家達が演奏するという趣向だった。
大変にカラフルで、"個展"と言うに相応しいリサイタルだった。
1、三味線のための《Neo(音緒)》
三味線;本條秀慈郎
2、ソプラノのための《きいて》
ソプラノ;小林沙羅
3、ピアノと管楽のための《GO》〜第5楽章
クラリネット;吉田誠
4、ホルンと弦楽四重奏のための《ゆらゆら》
ホルン;福川伸暢
弦楽四重奏;カルテット・アマービレ
5、チェロのための《Osm》
チェロ;新倉瞳
6、ギターのための《チャンス・モンスーン》
ギター;村治奏一
7、ホルンのための《はらはら》
ホルン;福川伸暢
以下、曲個別の解説。
1、本條秀慈郎委嘱により2014年に作曲された、三味線のための独奏曲。
「音緒」というのは、三味線の最下部、3本の糸を固定する部位。
三味線の大胆な演奏法を使用して、楽器の多様でダイナミックな魅力を引き出している。
2、小林沙羅の委嘱により、2017年に作曲された、無伴奏のソプラノ独唱曲。作詞は小林自身。
藤倉は、小林の委嘱を受けて、彼女の正統派イメージを覆すようなグロテスクな作品に仕上げた。
3、ピアニスト小菅優の委嘱を受け、6つの楽章それぞれをピアノ,オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルン独奏向けに書いたという珍しい曲。2016年作曲。
その中から、今回は第5楽章クラリネットのための楽章をピックアップ。
4、ホルンの福川伸暢(N響ホルン首席)の委嘱によって2016年に作られたホルン協奏曲第2番、そのカデンツァ部分を抜き出し室内楽にしたもの。
ホルンのソロは「ハーフ・バルブ」という特殊な奏法で通して演奏される。
弦楽四重奏はその伴奏に回るのだが、その音色は和楽器の笙のようだ。
5、2015年作曲のチェロ独奏曲。
タイトルは、「浸透性」や「じわじわ浸透する事」を意味する英語「osmosis」から取った。
難易度も高そうだが、完成度も高い大曲である。
6、ギタリストの村治奏一の委嘱により2014年に作曲された。
アルペッジョとラスゲアードの奏法がいつの間にか入れ替わりながら、宇宙のように広い世界を生み出していく。
7、ハクジュホール開館15周年記念として、2018年に作曲された。
ホルンのベルに右手を深く入れながら吹く「ゲシュトップ」奏法を使って、金属的なカサカサした音を出す。
最後に、インタビュー中の発言から感じた事を少しピックアップしておく。
藤倉は、いろんな楽器、様々な奏法、そして、そのプレーヤー達との出会いを愉しんで作曲している。
そういう中からより良いものが生れてくるので、楽譜を直す事も厭わない。カラの中に閉じ籠るタイプの芸術家とは違うようだ。
そんな人柄を慕って、また多くの人達が彼の周りには集まってくる。
こんな事も言っていた、
…作曲家には演奏者が必要だ。書くだけじゃ音楽にならない、音にしてくれる人が要る。彼等と二人三脚以上の関係にならないといけない。
奏法の提案等が、曲を更に面白いものにする。…
が、案外そういう作曲家は少ないらしい。
この演奏会は、彼のそうした人間性が生んだものだと言える。
また、こんな事も、
…僕は7歳の子どもがいるが、作曲というのは、小さな子供同士が遊んでいるのと同じ。友達と会って遊んでいる中でヒントがあり、そこから曲が生れる事がある。
たまたま2人がオンラインでつながっている時、書けたフレーズを送ると、演奏して送り返してくれ、その幾度かの繰り返しの中で曲ができる事もある。…
…作曲は、歳を取ると愉しい、もっと愉しくなる。やり易くなってくる。簡単という事ではないが、やりたいと思う事ができる。
スポーツは若い時にはできた事ができなくなるのが加齢。
作曲は逆。20代の時、悩んで悩んで、凝りまくって作った事が、あとから聴いてみると効果が出ていない事があった。歳を重ねて、今は、より容易くそこに手が届く。…
ログインしてコメントを確認・投稿する