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2020年01月10日03:11

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映画日記 『象は静かに座っている』

京都文化博物館で『浅草の灯』を見る前に、名古屋で見逃した1本を見てきた。
ところで、数日前に見た『読まれなかった小説』と、2日前に見た『ちいさこべ』はともに上映時間がほぼ3時間だった。
この2本は、本日のための予行演習も兼ねていた。

2020年1月9日(木)

『象は静かに座っている』(2019年)
監督:フー・ボー
京都九条・京都みなみ会館

上映時間ほぼ4時間。途中休憩なし。
睡魔とおしっこが心配。
「豚が静かに眠っていた」なんてことになったら恥だ。
しかし、杞憂に終わった。

中国の田舎町。空気が冷たく、乾いている。
理不尽ないじめにあっている友人を助けようとする男子高生。
母子家庭で、ずぼらな母親と折り合いの悪い女子高生。
住んでるアパートが狭いので、早く老人ホームに入ってくれないかと、娘夫婦から催促されている爺さん。
チンピラの色男は、親友の彼女を寝取ってしまう。
あげくのはてに、色男の目の前で、親友が高層アパートから飛び降りてしまった。
にっちもさっちも行かなくなった4人は、噂に聞いた遠く満州里の動物園にいるという、一日中座っているだけの象を夢見た・・・・

見終って溜息が出た。素晴らしい。
座っている象とは何なのか?
陳腐なようだが、私は「希望」とみた。
自分ひとりではどうしようもない、絶望しかないゴミみたいな世界で、彼ら(そして、私たち)は希望を見出すことができるのだろうか。
絶望と希望の間を、あっちへいったりこっちへきたりしながら、かすかな希望の兆しを予感させて映画は終わる。
ところが、本作が完成した直後にフー・ボー監督は自殺してしまった。
監督が自殺したという現実を抱えながら、観客の私はこの映画と向き合おうことになった。
正直、遺した映画と自殺という現実の矛盾を、どう捉えればよいのか途方にくれる。
絶望と希望、ふたつの鏡の間に立った自分が、無限反射を続けていくみたいだ。

主な登場人物たち四人の物語が、張り巡らせた伏線のように少しずつ重なっていることが、少しずつ明らかになっていく。
点と点がしだいにつながっていく様は、けっこうスリリングだ。

撮影方法も独特だ。
まず、照明を使わず自然光で撮っている、とおもう。
長回しと、『サウルの息子』のようなピンぼけが、見続けていると癖になる。
ピンぼけの向こうから現れてくるのは誰なのか?
ピンぼけの向こうでは何が行われているのか?
見る者を試しているようで、こちらもスリリングだ。

ということで、いろいろとおもうことがたくさんある。
見終ってみれば、納得の4時間だった。


『読まれなかった小説』に続いて『象は静かに座っている』と、昨年後半に公開され、見逃しになっていた長時間映画を見ることができた。
ただし、この2本を合わせた上映時間よりも長い、7時間半の『サタンタンゴ』を見逃しているが、幸いなことに、もとい残念なことに上映が終了している。
7時間半の映画かあ、見たかったなあ。
見逃しとは、まことに残念。
と、おもっていたら、なんと2月に名古屋シネマテークで「再」アンコール上映が決定したという。
げえ!!、ほんとうに上映するの???


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