この9/1にNHK-Eテレ[クラシック音楽館]で放送されたN響第1915回定期公演の中から、ニルセンの交響曲第2番《4つの気質》を採り挙げてみようと思う。
ちなみに、前半では、マーラー作曲の《こどもの不思議な角笛》が演奏された。バリトンはマティアス・ゲルネだった。
◆交響曲第2番《4つの気質》Op.16
作曲 カール・ニルセン(1865-1931)
初演 1902年12月、作曲者自身の指揮によりコペンハーゲンで
指揮 パーヴォ・ヤルヴィ
演奏 NHK交響楽団
収録 2019年6/8、NHKホールライヴ
カール・ニルセンはデンマークでは最も著名な作曲家で、昔は100クローネ紙幣にその肖像が印刷されていた。
昔は「ニールセン」とされていたが、最近は「ニルセン」と表記する事が多いようだ。この番組でもそうしていた。
彼の6交響曲の中では4番《不滅》と5番がよく知られている。
その2曲については、2016年に試聴記を書いた事がある。
以下ご参考迄。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1950151084&owner_id=3341406
4番が1914〜16年に、5番が1620/21〜22年に書かれたのに対し、この第2番は1901〜02年、30歳代半ばに作曲された。時代的には世紀末文化の真っただ中である。
《4つの気質》とは、ヘンな標題が付けられたものだが、これは古代ギリシアの医者ヒポクラテス(前460頃-前375頃)の人間の気質が体液の割合によって分類できるとした説によっている。
ニルセンが夫人や友人等と田舎の居酒屋でビールを呑んでいた時、その店の壁にコミカルな絵が掛かっていた。4部からなる連作で、ヒポクラテスの人間の4気質説を描いていた。つまり、「胆汁質」「粘液質」「憂鬱質」「多血質」である。
この説は殆ど実証的基盤を持たないものだったが、エルンスト・クレッチマー(1888-1964)が『体格と性格』(1921)を発表する迄は、西欧の人々に広く信じられていた。
極く単純に示すと以下の通り。
・胆汁質;短気で怒りっぽい
・粘液質;知的で冷静
・憂鬱質;内気でメランコリック
・多血質;陽気で活発
この4気質を4つの楽章に当てはめて作ったのがニルセンの交響曲第2番である。
・第1楽章 アレグロ・コッレリーコ
「コッレリーコ」とは、胆汁質、怒りっぽいという意味。
・第2楽章 アレグロ・コモド・エ・フレッマティコ
「コモド」は気楽に、「フレッマティコ」は「冷静に」。
・第3楽章 アンダンテ・マリンコーリコ
「マリンコーリコ」は、英語ではメランコリック。
・第4楽章 アレグロ・サングイネオ
「サングイネオ」は多血質。
速度表記はともかく、そのあとに付けられている発想表記の言葉はあまり楽曲に用いられる事はない。
但し、これらは作曲する上でのきっかけ、インスピレーションだったのであって、各楽章が各気質をリアルに描写しているという考え方は、音楽の理解を矮小化してしまいかねない。注意すべきだと思う。
第1楽章はアレグロで突発的にあくせくとした感じで始まるが、第2主題はテンポダウンして穏やかに歌われる。その後、転調を繰り返し、曲想も変化させて、移り気な性格を示しているようで面白い。
第2楽章は、穏やかと言えばいいが、やや鈍重な感じのワルツ。メロディは音域が狭く似たモチーフが繰り返され、とりとめない感じ。
中間でティンパニの一撃が入りハッとするが、じきにまた元に戻り、冷静で慎重だが活力には欠ける感。
第3楽章は、ゆっくりとしたテンポで夢想的。短調と長調の間を浮遊する。山谷の起伏も作られるが、あくまで静的雰囲気。中間部では各管楽器が気分の変化を見事に表現する。ラスト近く、金管が重なって盛り上げるが、また静けさが戻り、消え入るように終える。
第3楽章については、指揮者のパーヴォ・ヤルヴィがこう語っていた、
・・・単に悲しい、悲劇的というのでなく、夢見がちで内省的でもある。岸辺で佇む少年が、遠くの方を見つめて物思いにふける様子が目に浮かぶ。それが、何かの拍子に空想から現実に引き戻される。
こうした事が交響曲の中で起こる。
チャーミングで少しナイーヴな物語だ。・・・
第4楽章は、明るく飛び跳ねるリズムが特徴。音域も激しく上がり下がりする。
中間部のティンパニのトレモロで全休止したあとは暗く沈み込むが、再び跳ねるリズムが復活し急激に盛り上がるが、クライマックスは意外にあっさりしている。
エストニア生れのヤルヴィは、日本では演奏機会の少ない北欧の作家を積極的に採り上げ、共感をもって我々の心に届けてくれる。
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