小学生たちが夏休みに入るであろうころに出掛けたフィンランド。
すでに帰国して3週間経ち、そろそろ小学生たちは夏休みの最終週を迎え現実モードへとベクトルを向けている。
FIN日記もいよいよ終幕。
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(承前)
《FIN14》
フィンランドへ行くことが決まり、一番手に浮かんだ目的地が《かもめ食堂》だった。
マイベスト邦画ベスト4以内という中途半端な位置にランクする名作への巡礼。
お陰様で《アアルトカフェ》《マーケット広場》の2ヶ所へは足跡をつけ、《ヌークシオ国立公園》は移動時間が取れずにあきらめ、《ウルヨンカツ公共プール》は廃館してしまったという噂。
翌日にフライトを控えた最終日(といっても、まだ滞在3日目)。
行かなければならない。(←行く

)
GoogleMapでは少し難しかった。道路左側にあるという情報で探し回っていたら、視線の斜め前方に太ったかもめらしき看板が見える。
クルマ通りもほとんど少ない石畳の車道を渡り、まるで、もたいまさこがそうしていたようにウインドウから店内を覗き込む。
店内には日本人と思しき若い女性が1人。すでに食事を摂っていた。
予約時間には少し早いが店内へと招き入れられて、映画とは違った店内レイアウト、つまり少し高さを取ったテーブル席に着席した。
映画では小林聡美がクッキングをしていたキッチンは左手のレジ奥へと引っ込み、調理の様子は見ることができない。その分、客席を多くとっている。
3年ほど日本に留学していたという目の碧い麗しきフィンランド女性が、当然のように日本語メニューを持ってきて、日本らしいサービス「水のボトル」をテーブルに置いた。
オーダーをする時期を狙って語り掛ける。

「日本人のお客さんは多いのですか?」

「そうですね、だいたい半分。いや、6割ぐらいが日本人のお客さんです

」

「日本語、上手ですね

」

「3年、留学してました」
メニューには「生姜焼き定食」「焼き鮭定食」それに「おにぎり」だってあったが、ここは定番「おいしいフィンランドBOX」
しばらくすると、目の前にステキな松花堂的弁当が配膳された。
日本人おやじ(←おいら)の質問攻撃に惧れをなしたのか、蒼い目の少女に代わって、サービスに来たのが黒い目をしたJ.BOY
わかりやすく云うと、日本人シェフマネージャー(自称)の剛志くん(仮称)。
「ポテト」「カモシカ」「サーモン」…そして「シナモンロール」。
9つの小さな料理を一つ一つ解説を加え、「ごゆっくり、お召し上がりください」と笑顔で去って行く。
いや、去って行かない。
店内を見回すと、まだお客さんはまばら。
どうやら、おいらを相手に油を売るつもりらしい。(←油は売らない)

「1月にフィンランドへやってきて、ほかのレストランの調理をやってました。そこがブラックで悩んでいたところ、ちょうど3か月前にここのシェフが辞めることになって、日本人オーナーから誘われてきました」

「ほーほー」

「キッチンに入っていたんですけど、前のシェフが…彼がエストニア人で仲間を数人引き連れてやめちゃったんです。それで、まだ入店も間もない私がマネージャーも任されて、今に至ってます」

「じゃあ、まだ3か月目なのにマネージャー?」

「素材の手配から予約の差配とか、従業員の出勤管理とか」

「大変だね。じゃ、メールの返信も剛志くん(仮名)がくれたの?」

「日本人の方の予約は、できるだけ私が返信を書いています」
とても、心のこもったメールの返信文とリテラシー。
不安なくこの日を迎えることができたのは、彼のメールを読んだからだ。
さすがに、ここまで会話をしていると、続々と予約客が入ってくる。
唯一のホール担当である蒼い目の少女がオーダーを取り、キッチンへと伝えている。
剛志くん(仮称)の言葉を聴きながら、アンテナの高いおいらは、少し食堂内の混雑が心配になってきた。

「ありがとう。じゃ、ゆっくりいただきますね

」
言中有響、”もう大丈夫。仕事に戻りなさい”の意味を含めてみたが、彼にとっては言中無響、響くことはなかったようだ。

「エストニア人のシェフのときは、味付けがエストニア風であまり評判が良くなかったのですが、お陰様で最近は皆さんに美味しいとか、日本らしいとか言ってもらってます

」
頑張れ、剛志くん(仮称)。ただ、かなり新規のお客さんからの視線が飛んでるよ。
仕事に戻りなさい。
一期一会。初対面の日本人同士なのに、何かここまでの苦労話を聞いて欲しかったみたいだった。とても好印象。
彼に逢ったものなら、きっと誰もがそう感じてくれると思う
9つの小さな郷土料理をとても美味しくいただいて、食後のコーヒーを追加オーダー。

「コーヒーは、コピルアックですか

」

「さすがにそれはありません。でも、かもめ食堂ブレンド、美味しいですよ」
蒼い目の少女が描いてくれたハートのラテアート。ほらね、やっぱりそうだろ。
新たにやってきた若い日本人カップルが、おにぎりとお味噌汁をオーダー。
彼らもカモメーのようだ。
ナプキンとショップカードをサービスにいただき、ホール脇にあるスーベニアコーナーで日本で待つ人たちへのお土産を買った。
レジで食事代とお土産代を払っていたら、さらに剛志くん(仮称)の話が続く。

「コーヒーのラテアート、私が描いたんですよ

」
お前か

「冬になると暗くなるのが早くて、ツアー客も少なくなって、かなり売り上げが厳しいんです」

「ぜひ、日本に帰られたら宣伝しておいてください

」
任せなさい。mixiで大々的にPRしておくよ。
レジが終わり、EXITへと視線を向ける。
つまり、かもめ食堂の客席が自然と目に入る。

「ついに、満席になりました

」
拍手で讃えたい。かもめ食堂で働く日本人マネージャーに向けて。
これにてFIN日記終幕。
ヘルシンキ、ありがとう。
(つづく)

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