2018年11月25日(日)
『ハード・コア』(2018年)
監督:山下敦弘
名駅・ミッドランドスクエアシネマ2
愛知県の誉れ、山下敦弘監督の新作だ。見に行くしかない。
予備知識なし。いったいどんな映画なのか想像がつかない。
まあ、『ハード・コア』といっても、ポルノではないだろう。
主人公の右近(山田孝之)は、赤尾敏みたいな街宣右翼の金城銀次郎(首くくり栲象)のもとで下働きをしている。
右近は同じく下働きの牛山(荒川良々)といっしょに、金城が解読した古文書が示す山中で、埋蔵金探しの穴掘りをしていた。
金城の一番弟子で幹部の水沼(康すおん)がふたりに指図し、こき使っていた。
ある日、牛山がねぐらにしている廃工場で古いポンコツロボットを見つけた。
右近と牛山はロボットを“ロボオ”と名付けた。
だめ男ふたりと“ロボオ”は、ともにせっせと穴掘りをし、貰ったお金で連れだっておねえちゃんのいるお店に行き、はしゃぎまくる。
しかし、そんな“ロボオ”に、右近の弟でやり手商社マンの左近(佐藤健)が目をつけた。
やがて、だめ男たちの夏休みみたいな日々に、暗い影が忍び寄ってきた・・・・
と、あらすじだけでは、何がなんだか分からない映画だが、ひとことでいえばコメディ!!
荒川良々の破廉恥姿を見て、山田孝之が猛烈に怒りだすシーンがあった。
大声で「3万いくら〜」とか、「俺はまだ使ってない〜」などと叫びだす。
山田孝之が何を怒っているのか、すぐには事情が飲み込めなかった。
ところが、少し経って、“そういうことか!”と分かったとたんに、苦笑してしまう。
このシーン以外にも、ワンテンポ遅れてやって来る笑いが、おかしくってしかたがない。
加えて、荒川良々の困ったようなまぬけ顔が絶品。いま思い出しても笑ってしまう。
この映画、コメディといっても、今の時代を風刺しているようには見えない。
そんな「上等」な映画ではないとおもう。
ひたすらオフビートな笑いと、街宣右翼や埋蔵金や鉄人28号もどきのポンコツロボットに石橋けいのエロ熟女と、古くさいモチーフにこだわっている。
なにしろ、冒頭に渋谷のハロウィン騒動のニュースが流れるものの、そのテレビがあるのが、バーというよりはカラオケスナックだった。
はっきりいって、昭和だ。
この映画は、今の時代に向けて、辛辣な批評や異議申し立てをしているわけではない。
かつて浅川マキが歌ったように、
「時代に合わせて呼吸をする積りはない」
と、ぼそっと告白したような1本だった。
右翼の金城を演じた首くくり栲象は、「くびくくり たくぞう」と読む。
私はまったく知らなかったが、その名の通り、首つりをする「首つりパフォーマー」とのこと。彼は今年の春三月に肺がんで亡くなっていた。
雰囲気のある人だったので残念だ。
康すおんと石橋けいは、何を見てもいい役者だ。
佐藤健は、「嫌な男」ぶりが板についてきた。
来年あたり、映画作品でなにかの男優賞を獲りそうだ。
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