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2014年05月23日21:44

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歌劇『死の都』

5/12(月)、NHK-BSのプレミアムシアターで、歌劇『死の都』、新国立劇場公演の録画が放映された。

歌劇『死の都』と言ってもご存知の方はあまりおられないだろう。
作曲コルンゴルト、と言っても、こちらも殆ど知る人はいないだろう。

一昨年2013年明け、恒例の「ニューイヤーオペラコンサート」(NHK-Eテレ)で、ソプラノの木下美穂子が、その歌劇中のマリエッタの唄「私に残された幸せ」を歌ったのを、私はよく憶えている。
 (参)http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1888107986&owner_id=3341406

エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(1897-1957)についても、その日記の中で簡単に触れているので、興味おありの方はご覧頂きたい。

彼の再評価の動向の中で新国立劇場でも採り上げた、そう想像する。
オペラパレスでの公演は、今年2014年3/12,15,18,21,24。録画は3/18だった。

まずはデータ。

原作 ジョルジュ・ローデンバック『死都ブリュージュ』
台本 パウル・ショット(実はコルンゴルト本人と父ユリウスの合作。これは偽名。)
作曲 エーリヒ・コルンゴルト

演出 カスパー・ホルテン
美術 エス・デヴリン
指揮 ヤロスラフ・キズリンク
演奏 東京交響楽団/新国立劇場合唱団/世田谷ジュニア合唱団

出演
パウル トルステン・ケール(tn)
亡妻マリー エマ・ハワード(歌ナシ)
マリエッタ ミーガン・ミラー(sp)
フランク アントン・ケレミチェフ(br)
家政婦ブリギッタ 山下牧子(ms)

歌劇は知らなくても、原作を読んだ事があるという方はかなりいるに違いない。
 (参) http://mixi.jp/view_diary.pl?id=304032431&owner_id=3341406

原作は1892年に書かれた。世紀末のベルギー、ブリュージュの町が主役と言ってもいい。
歌劇の方は1920年作である。1920年というと、第1次大戦直後の時代。
同大戦で大きな痛手を被ったヨーロッパには、世紀末より濃厚な死の匂いが漂っていた筈だ。特に、コルンゴルトのいたオーストリアは敗戦国である。
筋書は原作を少なからず書き変えている。時代と場所は同じ19世紀末のブルージュだが、結末はパウルが犯した殺人を夢だったとしている。コルンゴルトは救いが欲しかったのかもしれない。

今公演、カスパー・ホルテンの演出は際立っている。

パウルは愛した妻マリーを失い、彼女の遺品を集めた部屋に閉じ篭った生活を送っている。
パウルが起き上がったベッドには明らかにもう1つ膨らみがあって、誰かそこに横たわっている。
パウルがシーツを取ると、そこからマリーの亡霊が立ち上がる。青白いが、おどろおどろしいというより、哀れな感じ。
家政婦のブリギッタにも、心配して訪れた友人フランクにも、どうやら見えないようだ。

パウルは街で出会ったマリーそっくりの女を、今日自宅に呼んでいる。女はマリエッタといい、踊り子を職業にしている。
彼女の活気に満ちた歌や踊りに、パウルは魅了される。彼は、マリアの着ているショールを取ってマリエッタに掛けてやる。マリアの細い体はシュミーズ姿となり、如何にも寒そう。パウルは時々マリアを見ては、申し訳なさそうに縮こまる。

他の登場人物からは見えない亡妻マリアがいつも無言で舞台上におり、観客からはそれが見える、この特異なシチュエーションはホルテンの独創だ。
パウルの孤独がこれによって一層明確に映り、彼は生と死の間で苦悩する。
マリエッタが帰れば、彼はまたマリアに謝り忠誠を誓う。

第2幕では、パウルの部屋のベッドからマリエッタの一座の連中が次々と現れ、そこはブルージュの運河と化す。
マリエッタはマリアとは対照的な性格で、生と快楽を肯定し、酒を飲み男達と陽気に騒ぐ。そして感情と意思の分裂に悶えるパウルを誘惑にかかる。
それは、パウルの目を覚まそうとするマリエッタの策略の1つであるが、彼は馬鹿にされたと勘違いする。
パウルは生の欲望と亡妻への忠誠の間でますます懊悩する。

第3幕は第1幕と同じパウルの部屋。彼とマリエッタの関係は、更に互いを刺激し、傷付け合うものとなり、官能に身を委ねるかと思えば、怒り罵り、遂にはパウルを余所にマリエッタとマリアは直接対決する事にさえなる。
彼は「聖血の行列」祭の夢幻の中、先に述べた通り、とうとうマリエッタの首を絞めて殺すに到る。
パウルは茫然と立ち尽くして言う、「これでふたり(マリアとマリエッタ)はそっくりになった」。

だが、1夜明けると・・・、


音楽は、如何にも後期ロマンの末裔のムードが濃く、リヒャルト・シュトラウスのそれと酷似する部分がある。
甘さと苦さ、高揚と落胆、明と暗、斬新さと奇妙な古さ、そうした対立する気分が、幻惑的に短い間に取って代わる。
 
美術が素晴らしかった事も1言添えておく。
 
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