NHK-BSの「プレミアムシアター」で1.5(火)に放送された、アントニオ・ガデス舞踊団公演《カルメン》を録画して観た。
有名なジョルジュ・ビゼーの歌劇《カルメン》(1874/4幕仏語)はプロスペル・メリメの小説を基に、アンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィが台本を書いた。
A・ガデス舞踊団の《カルメン》は、それをベースに、1983年、フラメンコ舞踊のための作品として制作・初演。言語は歌劇《カルメン》から挿入された部分以外スペイン語。
台本・振付・演出 A・ガデス,カルロス・サウラ(*1)
衣装 A・ガデス,マリア・エステべ
舞台装置 アントニオ・サウラ
音楽 A・カデス,アントニオ・ソレラ,リカルド・フレイレ,ホセ・オルテーガ・エレディア,G・ビゼー(*2),マヌエル・ペネーリャ
詩 フェデリコ・ガルシア・ロルカ
(*1)C・サウラ(1932-2023)はスペインを代表する映画監督で、1983年には映画『カルメン』を制作。その脚本・振付・主役をA・ガデスが行ったという経緯がある。
(*2)クレジットの順番からも察せられるが、ビゼーの歌劇《カルメン》の音楽は部分的な挿入に留まる。フラメンコ用の音楽は本作のために新たに書き下ろしたか、既存の利用もあるのかもしれない。詳細は不明。
出演
ダンサー
カルメン エスメラルダ・マンザナス
ドン・ホセ/舞踊団監督・振付師 アルバロ・マドリード
カルメンの夫 ミゲル・アンヘル・ロハス
闘牛士 ハイロ・ロドリゲス 他
歌 アルフレード・テハダ,エンリケ・ベルムデス・"ピクラベ",イズラエル・パス
ギター アルベルト・フエンテス,ホセ・ロメロ
公演・収録 2025.9.6,7/マエストランサ劇場(セビリア)
・第1幕/第1景「ダンスのレッスン」
フラメンコ舞踊〈カルメン〉のリハーサル中という設定。劇中劇の「外枠」の劇が既に始まっているという事が次第に分かってくる。
色とりどりの衣装の男女ダンサーが、個々様々に事前準備をしている。
次第に隊列が組まれ、リズムも合わされ、本格的なリハーサルに進んでいく。
一番前には舞踊団監督で振付師でもある男性がいて、ダンサー達の動きに目を配り、個別に注意などし、時に自分も彼らに合わせて踊る。
最初は、この中の誰がカルメン役,ドン・ホセ役を演ずるのか分からない。
幕と景のタイトルは表示されていたが、ナンバーは私が付けた。
伴奏はギター2本と男性歌手2人。
歌われる詩「緑よ、緑の風よ、枝よ、海を渡る船よ、山を駆ける馬よ、
ああ緑よ、私の愛する緑色、いとしい緑色。
友よ教えてくれ、あの悲し気な娘はどこへ行った?
何度彼女を待っただろう、どれほど待っていたことか、ああ緑よ、私の愛する緑色。(リフレイン)」
この歌は本作中で数度歌われる。おそらくこれがF・G・ロルカの詩だと思うが、明記されていた訳ではない。
「緑色」は本作の闘牛士がまとう正装の色である。しかし、ロルカがそう意識して書いたかどうか。ただスペインの自然を象徴しただけかもしれない。
・同/第2景「闘牛士」
ダンサー達は舞台両脇の椅子に座る。
闘牛士役の男性(この段階では正装ではない)が中央にできたスペースに現れ、荘重な闘牛士の踊りを練習する。
・同/第3景「カルメンの夫」
杖をついた中年男が登場し、足のタップに杖を加え、意外に激しく早いリズムを刻む。
・同/第4景「ドン・ホセ」
第1景で舞踊団監督・振付師だった若い男が、同じ白のシャツと黒の細いズボンで登場。
彼が舞踊団を率いる監督役と、彼が創作した舞踊〈カルメン〉中のドン・ホセの2役を演じるらしい。
劇中劇の構造になっている事が明確に分かってくる。
このあと、カルメン役の妖艶で鋭い眼差しの女性が真紅のドレスで登場。彼女の衣装は通してこの真っ赤な薄手のそれで、裾をたなびかせ、網タイツを見せて踊る。
伴奏はフラメンコ曲から歌劇《カルメン》のオーケストラによる前奏曲に切り替わり、全員の手拍子も加わって盛り上がっていく。
彼女は、闘牛士役、夫役、ドン・ホセ役とデュオを少しづつ踊り、劇中劇のカルメンになり切っていく。
メリメの原作に登場するドン・ホセの婚約者ミカエラや衛兵隊長、密輸商ら、その他多くの役は本作で省略されている。ダンスを見せる事を主眼とした作品としては、尤もな選択だろう。
歌劇《カルメン》のドラマについては以下レポートを参照頂けたらありがたい。
・「ビゼー 歌劇『カルメン』」(2009.7.21記)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1231459617&owner_id=3341406
ギター2本と歌手2人の伴奏に再び切り替わる。
「私がもっと穏やかで、愛のことなど何も知らなかった時、神は望まれた、私があなたを愛するようにと。
そして、私はあなたを愛した。死んでも愛し続ける。ウソじゃないわ、永遠にあなたを愛する。全身全霊で愛するわ。魂は決して死なない。」
これを伴奏に、カルメンがソロを、また女性ダンサーらと入り混じって群舞を踊り、その後、脇のイスに座る、大胆で挑発的な格好で。
ここ迄で序の部分が終わる構造。
(続く)
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