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2025年08月28日11:00

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松本第2日目〜ナワテ通りから松本城へ

8/20(水)、今回の旅の主目的であるオペラ《夏の夜の夢》(ブリテン)をまつもと市民芸術館で聴き終え、20:30頃、高揚した気持ちで松本駅の方へ向かって歩いた。
さすがにもう暑くはない。
夕食の目当ての店は、「萬来(ばんらい)」。駅前の少しごちゃごちゃした一角にある、居酒屋と言うべきか郷土料理屋と言うべきか。創業は1953年だとの事。

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オペラが始まる前に電話をした時には、21:00頃ならもう大丈夫、予約は不要との事だった。
が、ほぼその時間に行くと、店の前には3〜4人並んでいる人がいた。
結局30分程待って入店。
中は年季の入ったテーブルと畳の席,カウンターで、50〜60人は座れそう。私は一番奥の狭い掘り炬燵の席へ。
店員が、この時間になると切れているものもあります、予めご了承下さい、と。
食べたかった馬刺しと「山賊焼き」は両方ともあって、生ビールと一緒に注文。
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馬刺し(ヒレ/1500円)は全くクセも匂いもなく、柔らかであっさりとした風味。醤油に生姜またはニンニクの擦りおろしを乗せて食べる。実に美味。
「山賊焼」(900円)は大きなトリ胸肉をカタクリ粉で揚げたもの。味はついている。レモンを垂らし、生キャベツと一緒に食べる。
酢の物の盛り合わせは切れていたので、店員の奨める酢クラゲ(450円)と「昭和サラダ」(650円)、「冷酒呑み比べ3種」(1000円)を追加。
満足して店を出たのは22:30頃。代金は〆て5000円程。
心地好くホテル迄歩いて帰った。


松本の旅2日目は特徴あるいくつかの通りを散策、そして松本城を見学したい。
昨日と同じように35℃近くなるとの予報なので、体調を見ながら、無理しない事を心がける。

10:00、ホテルをチェックアウト。荷物は預ける。

本町通りをまっすぐ北へ上がり、女鳥羽川(めとばがわ)にかかる千歳橋を渡ってすぐ右に折れると細長い「ナワテ(縄手)通り」に入る。
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説明板によると、女鳥羽川の水辺ではカジカガエルがよく鳴いていたらしいが、汚れでカエルは上流に追いやられ、通りも活気を失った。そこで1972(昭和47)年「カエル大明神」の祠を造って祀り、もう一度清らかな水を取り戻す取り組みを始め、以来「ナワテ通り」はカエルの街として市民や旅の人々が集う場所になった。
毎年6月には「松本かえるまつり」も開催される由。
この細い通りには古物商や土産物屋など小さな店が並ぶ。
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細い通りを少し行くと、左側に「四柱(よはしら)神社」の大きな鳥居がある。
奥には唐破風の拝殿が見える。
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「四柱」とは、『古事記』の冒頭に出てくる天地万物を生成した3つの造化神、加えて3神の意を地上に顕現させようとする神の総称で、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ),高皇産霊神(たかみむすびのかみ),神皇産霊神(かみむすびのかみ),天照大神(あまてらすおおみかみ)という事になるらしい。
1872(明治5)年に神事を始め、1879(明治12)年に社殿造営。比較的新しい。

ナワテ通りを奥迄行って左に入ると「上土(あげつち)通り」が北へ伸びている。
名前の由来は、松本城の東門前の馬出し廊の堀の土を上げて造成したからだとか。江戸時代は武家屋敷が多かった。
現在は「大正ロマンの街」をコンセプトに掲げている。名の通り、レンガを積むなど大正時代風の建物が並んでいる。
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上土通りを上がって左に曲がると、松本城が見えてくる。
と、手前の角を赤い水玉模様のド派手なバスが走ってくるので驚く。
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街の周遊バス「タウンスニーカー」の何台かがこのように飾られていて「クサマバス『水玉乱舞号』」というニックネームが付いているとの事。
草間彌生(1929- )は松本市出身の前衛美術家。2018年に文芸大の社会人聴講生グループMの会の旅行で、松本市美術館の草間彌生展を観た事を思い出す。


さて、松本城である。
築城を始めたのは、ご存知の石川数正。家康の重臣だったが、大坂へ出奔し秀吉配下に加わった。その理由は未だ明確には解明されていない。
1590(天正18)年、秀吉は数正を松本に送った。
小笠原貞慶が手をつけた城郭の整備と城下町の拡充を、数正は息子の康長と伴に進める。
1593(文禄元~2)年、数正は文禄の役出兵中に死去。その後、天守3棟,2門,本丸〜三の丸含む建築は康長が急ピッチで行った。

内堀の橋を渡ったところで観覧料(1300円)を払い、1960(昭和35)年に復元された黒門から本丸に入る。
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下の写真は東側から見た複合連結式5層6階の天守と、手前の本丸跡庭園。国宝指定を受けている。
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江戸時代またそれ以前に建築され現代迄継続して保存されている天守を「現存天守」と呼ぶ。松本城は現存天守12のうちの1つ。
1940年代迄は20あったが、太平洋戦争の空襲で7つが焼失、それ以降に1つが失火でなくなっている。

ここに写る城郭を分解すると、右側から「乾小天守」「渡櫓」「大天守」「辰巳附櫓」「月見櫓」という事になる。
時代で分けると、右の3棟が戦国時代、戦を前提として築造された城、左の2棟が江戸時代、平和が続き戦を前提とせずに築造されたもの。

城は基本的に初層から上層へ行くにしたがって小さくなる。これを「逓減率(ていげんりつ)」と言って、一般的に古い城(*1)ほど逓減率が大きく、上層が小さくて下層が大きく、どっしりして見える。
 (*1)関ヶ原の戦い以前の古い時代の城は「望楼型」が多く、入母屋型の建物の上に物見櫓をのっけたスタイル。下層と上層のデザインが違う。

新しい時代(*2)になるほど城の逓減率は小さく、上層と下層の大きさの差が少なくてすらりとして見える。
 (*2)以降の新しい城は「層塔型」が多く、下層から最上層迄同じデザインを規則的に積み上げるスタイル。材料の調達など計画的で効率的な準備ができ、スピーディな築城が可能になる。
ちなみに、望楼型は敵の来襲をいち早く見つけるのが目的だったが、層塔型は次第に城主の権威を見せつけるのが目的になっていった。

松本城の大天守は、前述の現存12天守の中で逓減率順位は真ん中くらい、小さい方の部類に入る。
層塔型は、基本的に下層から上層へ小さくなり方が同率なのだが、松本城の場合例外で、各層の屋根の広がり方がバラバラ。屋根の先端を線で結んだ時、直線にならない。
写真で分かるだろうか?

大手口より入城。天井が低い天守1階は食料,武器,弾薬の倉庫だったらしい。
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矢狭間,鉄砲狭間は全25ヶ所に。
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出っ張った櫓の角には石落も。

天守2階は天井が高く、窓が多くて明るい。当時は武者溜だったか。
現在は鉄砲など武器その他の展示が並ぶ。
天守大棟の鯱。昭和の修理時に外されたもの。高さ127cm。
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天守の屋根は唐破風,千鳥破風,入母屋破風が組み合わされている。千鳥と入母屋破風の「拝み」(合わせ目)を飾っているのは「蕪(かぶら)型懸魚(げぎょ)」。写真はその芯材の展示。ヒノキ材は創建当時のものと推定されている。
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柱よりも太い梁。
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天守3階は窓がなく暗い。「暗闇重(くらやみじゅう)」と呼ばれ、外からは分からない階で、戦時には秘密の安全な場所となった。
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天守4階にはいざという時、城主「御座所」がある。
他の階と違い、鴨居や長押があり、柱や床は丁寧な鉋仕上げを施している。
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階段はどれも55〜61℃と急勾配。特に4階〜5階は段差が40cmもある。見学客が渋滞。
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天守5階。重臣達の作戦会議の場。天井は4.5mと最も高い。
周囲には4つの破風入込間がある。こちらは千鳥破風の格子窓。
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天守6階(最上階)。
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天井は井桁梁で、中央一番上には「二十六夜神」が祀られる。
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望楼の役割を持ち、4方向に窓。
東の窓から本丸御殿址が見える。
北の窓からは遠方に「旧開智学校」の美しい八角の塔屋が望める。
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後年、松平直政(家康孫)により寛永年間(1624-45)に南東方向に迫り出す形で増築された辰巳附櫓2階。
書院造の花頭窓(かとうまど)が城郭建築にも持ち込まれた。
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同じ寛永年間、三代将軍家光を迎えるために増築された「月見櫓」。
辰巳附櫓にあとから加えた板戸。
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書院造の建具「舞良戸(まいらど)」を外せば3方が吹き抜けとなり、想像するに、朱塗りの回縁から、東の美ヶ原高原方向より昇る月がよく見えた事だろう。
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戦から平和な時代への変化が、増築の背景にあるのが窺える。

朱塗りの回縁下の出口。
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満々たる内堀を南西方向へ回り、異なる方向から松本城を眺める。こちらからだと最上階の入母屋破風とその下に唐破風、更に千鳥破風が連続して見える。
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黒の板壁は、毎年9〜10月に漆の塗替えが施されている。
石垣は野面積みで隅角だけ算木積みを用い、耐久力を増しているのが分かる。


〈参考資料〉
『日本建築様式史』
執筆 太田博太郎,光井渉 他
増補新装カラー版発行 2010.4、美術出版社

静岡文化芸術大学講義
「日本伝統建築」第8回「近世の城郭建築」(2024.6.8記)
講師 新妻淳子
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