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2025年09月30日23:51

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ジャン・チャクムル ピアノ・リサイタル~1/2

9/28(日)、アクトシティ浜松中ホールで行われたジャン・チャクムルのピアノ・リサイタルを聴いた。

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プログラムは以下の通り。

・ファジル・サイ《インサン・インサン変奏曲》
・フランツ・シューベルト〈4つの即興曲〉D935

 〜休憩〜

・ヨハン・セバスチャン・バッハ/ヨハネス・ブラームス編曲
〈無伴奏ヴァイオリンパルティータ〉第2番ニ短調BWV1004より第5曲シャコンヌ
 (ヨハネス・ブラームスAnh ��aピアノのための〈5つの練習曲〉第5曲〈左手のためのシャコンヌ〉)

・フランツ・シューベルト アレグレット ハ短調D915
・ルートヴィヒ・van・ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第21番ハ長調Op.53《ワルトシュタイン》

ジャン・チャクムル(1997- /トルコ・アンカラ)は、優勝した2018年の第10回浜松国際ピアノコンクール来、聴く機会がかなりあって、彼の音楽と人の成長を目の当たりにしてきた。
しかし、改めて計算してみるとまだ27歳という若さなので驚く。浜松のコンクールの時はまだ20歳だったのだ。
音楽に対する歓びは変わらないようだが、いろんな場所で出会う彼の文章やインタビューなどを見て、時に哲学的な とさえ形容できる知性の拡がりにも驚嘆する。今回のリサイタルのプログラムも他人任せにせず、自身で書いている。
トレードマークのもじゃもじゃ頭は少し短くなったが、髭が生えた。(笑)
細くて長い手脚と、少年のような恥じらいの笑顔は以前のまま。

第1曲目は同じトルコ出身で、チャクムルも敬愛する鬼才ファジル・サイ(1970- /アンカラ)が2024年に作曲した《インサン・インサン変奏曲》。私は初めて聴く。
16世紀トルコの神秘主義詩人ムヒディン・アブダルの詩にサイが付けた歌のメロディを使った変奏曲。歌の後尾に現れる中近東風の音形が各変奏の定型の括りとして何度も現れる。

トルコ語の" insan "は人、人間を意味する。
サイが作った歌の歌詞にこうある。それはアブダルの詩にも現れる言葉のリフレインかもしれないが、そこ迄調べる事はできなかった。

 かつて「人」、「人間」と呼ばれたもの—
 いまや私は、人の真の姿を知った。
 かつて「魂」と呼ばれたもの—
 いまや私は、その魂を悟った。

第2曲目は、F・シューベルト(1797-1828)が最晩年の1827年に作曲した〈4つの即興曲〉D935。
晩年のシューベルトは、経済的にも健康上でも困難の中にあった、にも関わらず、短い時間の中で信じられない程数多くの作品を残した。
本曲は〈4つの即興曲〉とはなっているが、個別の4つの曲でなく、4つの楽章を持った1つの大ソナタという考え方もあり、まとめて演奏される事が多い。

〈参〉音楽学者平野昭の授業「音楽史�境┘轡紂璽戰襯箸離團▲硫山據�(2010.11.20記)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1624823203&owner_id=3341406

シューベルトには交響曲第8番ハ長調《ザ・グレイト》のような、ベートーヴェンを目指したサイズも内容も大曲と言えるものがあるが、一方、小ささを愛でた作品も多々ある。
チャクムルのプログラムノートを借りれば、
「シューベルトは、小さな音の表情を楽しむ作曲家です。この作品はその極地とも言え、最後の曲の終わりまでにフォルティッシモは僅か16小節しか現れません」。

第1曲アレグロ・モデラート ヘ短調、4/4、展開部を欠いたソナタ形式
付点音符を使った下降音形の第1主題で始まるが、これが大袈裟にならないよう、1オクターブ高くした繰り返しでは付点に全部装飾音符(ターン)を付けている。ひと時代前の古めかしさを感じさせもする。

第2曲アレグレット 変イ長調、3/4、複合三部形式
冒頭にセンプレ・レガートの指示があり、メヌエットの趣きがある。
チャクムルは、まるでその掌の上で小さな人形を愛でるかのように曲を進めていく。
中間部はトリオで、軽やかな3連符のアルペッジョが続き、ここにもレガートの指示がある。

第3曲アンダンテ 変ロ長調、2/2、変奏曲形式
主題は劇付随音楽《キプロス島の女王ロザムンデ》の間奏曲から引用したもので、チャクムルの愛らしい歌にはつい目頭が熱くなる。
テーマのあと5つの変奏曲(真ん中の3つ目のみ短調)が続き、最後にはレントで主題が帰ってくる。
チャクムルはここ迄をこう語っている、
「最初の3曲は、ひときわ内面的で私的な音楽に思えます。演奏しているときは、時計もドラマも舞台も忘れ、まるで小さな部屋でピアノと二人きりで語り合っているような気持になります。果てしなく移ろう和声を楽しみながら —— 時に物悲しく、時に情熱的に、結して純粋な幸福ではないけれど、つかの間の安らぎを探し続けるような音楽です」。

第4曲アレグロ・スケルツァンド ヘ短調、3/8、三部形式
メロディは第3曲迄とは違う民俗的な雰囲気で、3/8の1小節を1拍と数えるとトルコ行進曲のようにも聞こえる。
途中には長いトリルの繰り返しや、32分音符の猛烈に早いスケール(時にユニゾン)の喜遊部があり、ひそひそ話のようなコン・デリカテッサは途中にゲネラルパウゼを挟んで繰り返す。
最後に民族風の主題が回帰、コーダはピウ・プレストで6オクターブ真っ逆さまに落ちていくスケールでエンド。
ここでもチャクムルの解説を借りると、
「最後の曲はまったく別世界です。(中略)シューベルトの作品にしばしば見られる不気味さが漂い、まるで死の舞踏のように、不穏な恐怖が音楽を突き動かしていきます。私の考えでは、この曲はシューベルトの作品全体の中でも最も難しいものの一つです」。


(続く)
 
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