寝ても覚めてもアートの島。
帰ってきたばかりだというのに、この残尿感。否、高揚感。
日本一好きなスポットであることに間違いない
《直島3》承前
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総支配人との挨拶を終えて、次なるプログラムが《ベネッセハウスパーク アートツアー》。
ミュージアムからレンタサイクルで3分ほど
定刻17時20分。わずかな鑑賞者数を前に、ガイドの井原さんがルーティンのマスク上げ下ろしをしながらやってきた。
『光の棺』
ゼネラルアーティスト・杉本博司の大ファンでありながら、この場所にこれほどの作品が贅沢に展示されていることを知らなかった。
福武財団オーナーである総一郎氏が杉本先生に依頼したテーマが《レクイエム》。
『光の教会』に対峙する『ワールドトレードセンター』が、キリスト教とイスラム教の不服従に象徴される”誤解”を解くために、ひっそりと置かれた仏教・五輪塔。
井原さんのガイドを聴きながら、溢れ出そうになる涙を抑えることに必死だった。
洗心。
数理模型は『観念の形003オンデュロイド:平均曲率が0でない定数となる回転面』
杉本作品、いわんや新素材研究所にまで深く心酔していることに気が付いた井原さんは、いつからかVIP扱いとしてディープな解説にも踏み込んでくる。

「先日、杉本先生がいらっしゃいまして、今”劇場”シリーズを撮るなら、白い部分だけを作品にする。と、言っていました

」
Sクラスの解説に、首を傾げるカップルを尻目に「うん、なるほど

」と得心するゲストに、驚きの井原さん。フレンドリーなガイドさんである。

「屋外に移設したばかりの作品があります。これをお見せしたい

」

「モ、モ、モンドリアン

」
膝から落ちそうなほどの驚愕。

「もうご存知ですね、聞鳥庵

京都にあった作品を今年3月に移設しました」

「ベルサイユ、京都、そしてここ。3か所目です

」

「

ベルサイユで観てるんですか?すごいですね。実は、その前にベネチアで公開されているので、ここが4ヶ所目。いよいよ終の棲家を見つけたと、杉本先生もおっしゃっていました

」
まさか、ここで再会できるとは。
たくさんの喜びを得たベネッセtripenart、今振り返ると、この出逢いがベストオブベストだったかもしれない。直島・豊島、どこもかしこもベストだらけなんだけど。
17時50分。次なるイベントが迫っていたので、もう少し解説をしたがっていた井原さんに感謝と別れを告げてミュージアムへと戻る
ミュージアム前に横付けされた送迎バスに乗り込んで、日没スタートの地中美術館へと向かって行く。
限られた者たちだけへの贈り物。7時間前にやってきた美術館とは雰囲気も一新。
唯一、開かれた展示室へと、およそ15人ほどが集まった。
『地中美術館ナイトプログラム』
日没から天空が暗闇に至るまでの45分。
ジェームズ・タレルの流れるようなインスタレーションは、40種類に変化するLEDの補色と共に、天空の彩がうつろって行く。
青空から夕陽を経て、モスグリーンの空。直島の空は、一瞬、紫色に色めき、やがて漆黒へと暮れる。
45分間。ただただ、ひたすら天空を見上げるだけのシチュエーション。これぞ芸術。
井原さんからの宿題だった『100生きて死ね/100 Live and Die』(ブルース・ナウマン)のナイトミュージアム。5分37秒を待つ時間は一日千秋にも匹敵する。
日本にいるのは間違いないのに、パリのミュージアムで独りきり、名作に埋もれ浸っていたあのころをふと思い浮かべていた。
2021年7月30日。生涯忘れられない日になった。
(つづく)

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