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2017年05月09日18:20

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天才スピヴェット



『天才スピヴェット』
  期待していなかったからか、かなりおもしろく観れた。
   おおらかな流れをもつ大陸横断の旅は、アメリカの風景を懐かしく雄大に表わす。それは心の休まる風景であり、寂しさを取り払ってくれる。そうした旅のなかで、エキサイトでサスペンスフルな出来事、或いは、暖かな結びつきをさりげなく生む人々との出会いが描かれてゆく。
  出来事的には定番なシネマ的出来事が表わされるけれど、なによりも、心を癒してくれる雄大な景色が逸品となる。ジュネゆえ、エフェクトして組み合わさった絵なのであろうが、ここに表わされる落ち着きは最先端の賜物だ。クリスチャンラッセンを通過した現代において、この綺麗は優雅で甘美なるものであるはず。今回のジュネはとても映像をすっきりとさせる。そうすることにより、ユーモアを際立たせる。人情味を際立たせる。そして、西部ないし大陸的なロマンを際立たせる。
  ロマンは大切なもの。包み込んでくれる優しさの風景である。その風景の奥底には、アメリカというより、フランス的な繊細なものがある。アメリカ映画の大胆ではない。ユスターシュやガレルにも表わされる、繊細なもの。大人になれば、黒でも白と言ったり白でも黒と言い放ったり、根拠なき我が侭が特権的にもたれてきたりする。しかしまだ未成熟な少年には、まわりを気にして内側に閉じこもってしまう繊細さがある。大人の世界には逆らえない未成熟が表わされる。それはある意味、アメリカのインディヴィデュアルとは違った孤立する個の姿である。アメリカとは違う、その個はアメリカのおおらかさに包み込まれながらも、フラジルな固有性を表わしているのだ。
  スピヴェットの固有性は、しかしながら、ネガティヴなものとして終わるのではない。アメリカンTVショーの形態で表わされながらも、そのTVショーはフランスの討論番組と同じように、自身の声が吐露されることにより、嘘を引き剥がす。仏蘭西的に家族社会よりもその固有性を尊ぶ両親たちは、少年のあるがままを尊重する。TVショーにおいて建前のない純然たる本音が表わされ、人々の名誉欲も蟠りも消え去る。旅に表わされるロマンの景色は心に残るものを包み込み、確かに在るものとして現前される。消えることない繊細な優しさは家族の愛によって包み込まれ、愛が保たれるのである。



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