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日記一覧
- 本棚419『深夜特急3 インド·ネパール』沢木耕太郎(新潮文庫)
- 2021年09月20日00:15
「横になると、星のスクリーンが覆いかぶさってきそうなほど間近に見えた。やがて、土の微かな温りがシーツを通して体に伝わってきた。大地の熱にやさしく包まれ、緊張が解けていくにしたがって、何千人ものインド人と同じ空の下で夜を過ごしているというこ
- 本棚418『素晴らしき哉、フランク·キャプラ』井上篤夫(集英社新書)
- 2021年09月17日23:58
これまで無数の映画を観てきたけれど、最も好きな洋画はフランク·キャプラの『素晴らしき哉、人生！』だ。何度観てもラストシーンの大団円では滂沱の涙が流れ出る。 キャプラの生涯と作品をコンパクトにまとめた本書は、山田洋次監督の談話から始まる
- 本棚417『ブラタモリ6 松山 道後温泉 沖縄 熊本』NHK「ブラタモリ」制作班(株式会社KADOKAWA)
- 2021年09月12日23:46
荒れ地だった松山は、戦国武将の加藤嘉明が築城し、土手と川の工事を進めることで、四国第一の街に変貌していく。熊本では、加藤清正が「やりすぎ」と言われるまで熊本城を鉄壁な守りで固め、川の流れさえも城下町を守るために改変する。那覇の街は、終戦後
- 本棚416『Alaska アラスカ 極北・生命の地図』星野道夫(朝日新聞社)
- 2021年09月11日21:48
雪解けのツンドラをさまよう一頭のカリブー、煌めく水しぶきをあげながら鮭を捕まえるクマ、4千キロの旅を経て北の海にやってきたザトウクジラのブリーチング。大判の写真で見ると、文庫版とは違って、壮大な極北の大地に包み込まれる感覚を覚える。 星野
- 本棚415『人間であること』時実利彦(岩波新書)
- 2021年09月09日00:53
食べること、交わること、健康であること、学習すること、考えること、ことばを話すこと、創造すること、喜ぶこと·悲しむこと、笑うこと·泣くこと、生へ執着すること、夢みること、遊ぶこと、いのちを尊ぶこと、人間であることー。 医学部で脳生
- 本棚414『深夜特急2 マレー半島·シンガポール』沢木耕太郎(新潮文庫)
- 2021年09月05日20:39
第2巻では旅の舞台は香港から東南アジアへ。バンコクにペナン、クアラルンプール、シンガポールと鉄道でマレー半島を下ってゆく。それぞれの土地の人びととの束の間の一期一会の交流は描かれるものの、興奮や熱気、心震えるような感動は見られない。その訳
- 本棚413『深夜特急1 香港·マカオ』沢木耕太郎(新潮文庫)
- 2021年09月01日12:55
「〈さて、これからどうしよう···〉 そう思った瞬間、ふっと体が軽くなったような気がした。 今日一日、予定は一切なかった。せねばならぬ仕事もなければ、人に会う約束もない。すべてが自由だった。そのことは妙に手応えのない頼りなさを
- 本棚412『後世に残したい昭和史の名著と人物』保阪正康(山川出版社)
- 2021年08月29日23:01
本書の前半は、昭和史の名著を、作家·ジャーナリスト、学者、政治家や軍人の手記·回想録、外国人研究者という「書き手」と、通史、権力構造、個別事象の分析、庶民の体験という「テーマ」から紹介する。 最も読んでみたいと思ったのは、艦内の様
- 本棚411『アークティック·オデッセイ 遥かなる極北の記憶』星野道夫(新潮社)
- 2021年08月23日00:12
大判の写真は雄大なアラスカの12ヶ月の自然の息づかいを伝えてくれる。間に挟まれる詩のような、神話のような星野の文章も魅力的だ。自然の中で生きる一員として、全ての生きものが魂を持つとされ、人と動物との距離がまだ近かった古の時代。それは神話の世
- 本棚410『さぶ』山本周五郎(新潮文庫)
- 2021年08月22日21:14
「そう呟いているうちに、栄二は自分の眼の裏が熱くなり、涙があふれ出てくるのを感じた。誰一人よせつけず、世間もあらゆる人間も敵だとおもいきって、固い殻の中に閉じこもっている自分が、急に自分で哀れになったのである。ーほかの人足たちはもう寝床に
- 本棚409『面白くて眠れなくなる社会学』橋爪大三郎(PHPエディターズ·グループ)
- 2021年08月22日00:06
人間が社会を生きる中でぶつかるあらゆる問題を対象とし、共通点や法則性を明らかにする社会学。その射程は広く、本書も家族や職業といったものから、言語、戦争、憲法、貨幣、正義など他の学問分野に隣接するテーマを広範に扱っている。 中には「幸福」と
- 本棚408『県民性 文化人類学的考察』祖父江孝男(中公新書)
- 2021年08月17日18:24
文化人類学を専門とする著者が、日本人の国民性における地域差、いわゆる「県民性」を明らかにする。50年前の著作なので、都市と農村の暮らしのギャップの大きさや調査方法の洗練度合いなど時代を感じさせる部分もあるが、逆に半世紀を経ても変わらない確固
- 本棚407『図書館の神様』瀬尾まいこ(マガジンハウス)
- 2021年08月16日23:06
「文芸部は暇つぶしでもないし、垣内君はくすぶってもいません。文芸部は毎日とても活発な活動をしています。一日だって同じことをしている日はありません。毎日毎日新鮮な真新しいものを生み出しています。ただ単に勝つことだけを目標に、毎日同じような練
- 本棚406『アラスカ 永遠なる生命』星野道夫(小学館文庫)
- 2021年08月12日00:33
「人が一生を閉じる瞬間、だれでもあるひとつの強烈な風景を思い出すとしたら、自分はアラスカで見続けたオーロラではないだろうか···。」 先日読んだ星野道夫の「ノーザンライツ」は文章が中心だったが、星野の撮ったアラスカの大自然
- 本棚405 『図解土木がわかる本』永井達也(日本実業出版社)
- 2021年08月09日08:05
道路やダム、鉄道、港湾など、生活を支える「土木」について、わかりやすく全体像が整理されている。土木の役割や歴史から始まり、災害への対応や自然環境との調和、更には構造や工法といった技術的な側面も触れられている。 古代の墳墓や信玄堤、家康の利
- 本棚404『東北·蝦夷の魂』高橋克彦(現代書館)
- 2021年08月08日14:02
阿弖流為、前九年·後三年合戦、平泉滅亡、奥州仕置、戊辰戦争ー。東北の地は、金や馬といった資源を狙う中央政権から五度攻められ、全て敗れている。勝者により書かれた歴史では、自身の平穏なくらしを守り抜くために応じた戦いであっても、中央に抗う
- 本棚403『ノーザンライツ』星野道夫(新潮文庫)
- 2021年08月01日19:13
果てしない大地を進む数十万のカリブーの群れやベーリング海の氷海を悠然と泳ぐ鯨ーノーザンライツ、オーロラの下に古代のままの自然が今なお残る極北のアラスカに生きる人びと。このような地にも開発や現代文明の波(あまつさえ核実験場化計画まで)が押し寄
- 本棚402『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』廣野由美子(中公新書)
- 2021年07月27日01:15
小説に散りばめられた様々なテクニックを明らかにする「小説技法篇」と、作品分析の方法論を解く「批評理論篇」を車の両輪として、小説とは何かという真髄に迫る。 前者は、ストーリーとプロット、語り手、性格描写、結末というオーソドックスなものから、
- 本棚401『方丈記』鴨長明 武田友宏編(角川ソフィア文庫)
- 2021年07月23日15:12
十二世紀の末、平安時代末期の京を生きた鴨長明は、大火や竜巻、飢饉、地震といった様々な天災を経験する。方丈記は、これらの苦難を五感を揺さぶるリアルな描写で描き出す。本書は丁寧な解説を混じえ、天災に翻弄される「無常」の世を嘆き儚むのではなく、
- 本棚400『後世への最大遺物·デンマルク国の話』内村鑑三(岩波文庫)
- 2021年07月20日12:06
本書は2つの心揺さぶる講演からなる。 一つ目の「後世への最大遺物」は、人間が後世に遺すことのできるものを列挙する。金、事業、思想、文学、教育ーたとえこれらを遺せなくても、人は「勇ましい高尚なる生涯」を遺せると内村は言う。失望の世の中にあ
- 本棚399『万葉集を歩く』安藤典子編(JTBキャンブックス)
- 2021年07月18日23:55
万葉集の縁の地の美しい写真が織り交ぜられ、いにしえの人びとの息吹を感じられる。「采女の袖吹きかへす明日香風 京を遠みいたずらに吹く」の歌は、藤原京への遷都で寂れた廃都に流れる風を描くが、色鮮やかな服の袖が風に翻るイメージとともに、時が過ぎ
- 本棚398『ありがとう、さようなら』瀬尾まいこ(メディアファクトリー)
- 2021年07月17日22:31
京都の北部の小さな中学校で教師をしている著者の学校での出来事を綴ったエッセイ集。教師としての仕事の大変さもあるが、それを補って余りある歓びがある。生徒との心の通いあいが適度な距離感で描かれて、カラリとした明るさがあって心地よい。 二度と巡
- 本棚397『第一阿房列車』内田百��(新潮文庫)
- 2021年07月12日00:43
「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う。」 この有名な冒頭の言葉の通り、観光をして見聞を深めることも含めて、内田百�里蓮嵳兒�」のある旅を嫌う。だから、ただ汽車に乗って移動し、とんぼ返りで戻ってくることも多々ある。
- 本棚396『魚河岸ものがたり』森田誠吾(新潮文庫)
- 2021年07月04日19:43
魚河岸、という懐かしい響き。築地から豊洲へと場所は変わっても、本書のような人情味は昔と変わらずにあってほしい。 築地の市場に暮らす様々な人びとの群像劇。それぞれの話に、秘密を抱いた青年がいつも関わってくる。他のまちから追われるようにやっ
- 本棚395『そっとページをめくる』野矢茂樹(岩波書店)
- 2021年07月03日18:30
哲学者野矢茂樹の書評集。自らが編者となった『子どもの難問』の本では、「ぼくはいつ大人になるの？」という問いに対する他の哲学者の回答をもとに思考を深めていく。自分以外の「かけがえのない何かを知ること」で子どもは大人になる。かけがえのなさの例
- 本棚394『万葉の花 四季の花々と歌に親しむ』片岡寧豊(青幻舎)
- 2021年06月27日10:47
こんなにも多くの種類の花々が万葉集に詠まれていることに驚いた。古人は花に自分の想いを仮託する。恋する人を花の美しさになぞらえて歌う時もあれば、花の短く儚い命を詠んだものもある。「月草の仮なる命にある人を いかに知りてか後も逢はむと言ふ」(
- 本棚393『半七捕物帳【一】』岡本綺堂(光文社時代小説文庫)
- 2021年06月21日06:46
「江戸時代に於ける隠れたシャアロック・ホームズ」と呼ばれる半七老人。江戸の終わりの頃に岡っ引きとして解決した様々な面妖な事件を回想し、若き新聞記者の「わたし」に物語る。 一見、怪談噺のような事件であっても、鋭い洞察によって、背後にある合
- 本棚392『青春を山に賭けて』植村直己(文春文庫)
- 2021年06月19日19:53
「枯葉を集めて火をおこし、コッヘルにジャガイモ、青菜を入れて煮て食べた。しょう油がなく塩味でやっつけたが、どんな豪華なレストランで食べる料理よりもおいしかった。そして心はいつもあの見上げるばかりの白い氷河の上にあった。」「人の目につくような
- 本棚391『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』三浦雅士(新書館)
- 2021年06月12日14:08
翻訳を通じて、互いに教え合い教わり合う村上春樹と柴田元幸との関係。魅力的な訳文を村上がざっと作り上げ、細部をプロの目から柴田が指摘し整える。豪速球を投げる村上を、柴田が的確にリードする姿はまさに理想のバッテリーのよう。村上の小説を単に喪失
- 本棚390『背教者ユリアヌス(三)』辻邦生(中公文庫)
- 2021年06月07日07:54
どこへ向かって流れてゆくか分からない運命の流転。ローマ帝国の副帝としてガリア統治に当たっていたユリアヌスの人生は本巻で大きく転回する。皇帝コンスタンティウスに対するガリアの民衆や兵士たちの不満を受けて、皇帝と雌雄を決する時が迫りくる。
