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日記一覧

 「「ま、今日はくつろごうではないか。そうだ、歌でもうたうか」と、謝名親方が言った。それがきこえたのか、つぎの部屋にいた羽儀がはいってきた。母親の宝芬もそのあとにつづいた。「わしが三味線を弾こう」···なごやかな雰囲気であった。

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 言語や軍、役人などまさに日本という国のかたちについて書かれた随想集。 日露戦争においてバルチック艦隊を破った後も、莫大な維持費にも関わらず、「省益」により海軍軍縮が唱えれなかった話からは、官僚機構の肥大化という課題が当時から続いていたこと

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 モスクワにあるロシア美術の殿堂、トレチャコフ美術館。これまで来日した展覧会には何度か行ったが、単なる写実とは異なる精神性を帯びた風景画には、感動よりも圧倒されたことを思い出す。 この画集でも、シーシュキンが描くロシアの雄大な大地と果てしな

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 自然、歴史、言葉、地名、食事、音楽、工芸、行事などなど、沖縄に魅了された内地の人たちが編んだ沖縄の辞典。写真もふんだんに載っていて、存分に沖縄の雰囲気を満喫できる。 例えば、冬が終わり、大気や大地に潤いが増し、暖かな南風を受けて草木が背を

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 村上春樹の軽やかなエッセイと、それに緩やかに連関する安西水丸の温かなイラストが絶妙にマッチしている。それぞれのエッセイは身近な日常の話題を扱ったものであるけれど、静かで明るく空いている午後のレストランでの読書という小さな快適な時間や、テー

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 汽車や新幹線、地下鉄、バス、タクシー、飛行機、フェリー、渡し船、自転車、ロープウェイ、橇すべり、エレベーターなど、ありとあらゆる乗り物にまつわる想い出が詰まった一冊。変わり種だと、ヒマラヤでの馬の旅、知床の流氷の中のカヤックなども現れる。

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 どん底のような貧困に絡め取られた尼崎の裏長屋での生活を経て、貧しくも温かな家庭を築き、子どもも授かった矢先、夫が鉄道線路で命を断ってしまう。その後、奥能登の板前と再婚し、穏やかな日々を送るが、亡き夫の心に去来したものが一体何であったかを荒

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 「負のレッテルを貼られて排除されてきた水俣病の患者のうちにこそ、近代社会が打ち捨ててきた十全な人間性が潜んでいることを、うねるような文体で表現した名著」として、石牟礼道子の『苦海浄土』を挙げる「正常と異常」の章をはじめ、他者への烙印である

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