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日記一覧

 厳しくも豊かな花巻の自然の写真が、賢治作品の抜粋と相まって、理想郷イーハトヴの世界を現出している。冷害に苦しむ寒村は、言葉の筆によって、とりどりの色に染め上げられる。 どこまでも広がる雪景色に小さく残るキツネの足跡の写真は、「堅雪かんこ、

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 「孜々営々として働き、その爪跡は文字にのこさなくても、集落に、耕地に、港に、樹木に、道に、そのほかあらゆるものにきざみつけられている」  宮本常一は、この世界、歴史から放っておいてはこぼれ落ちてしまう「庶民」の生きてきた姿を書き残そうとし

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 今から十五年ほど前、デンマーク人画家ハマスホイの日本で初めての回顧展を国立西洋美術館で観た時の驚きは忘れられない。 家具のほとんど置かれていない室内を描いた絵はどれも灰色を基調として、静謐を超えて、陰鬱でさえあるのだが、無性に惹きつけられ

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 漆芸、染物、焼物、建築、民具などの沖縄の美術、多様な文化が溶け合ったチャンプルー文化の魅力をまとめた一冊。 黒漆を背景に精巧な龍の螺鈿が輝く漆器、涼やかな空色地に多彩な花々が揺れる紅型、琉球・日本・中国の建築様式が融合した首里城正殿、赤瓦

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 「わっさり、ふんわりした笑い」を追い求めた十返舎一九。お馴染みの弥次さん北さんの珍道中を描いた『東海道中膝栗毛』は、江戸の人びとの心をつかんだ。東海道の旅が終わっても、金毘羅や宮島、善光寺など参詣の旅のシリーズは続き、二人が江戸に帰り着い

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 司馬遼太郎が各地に足を運び、歴史と風土が彫琢した「気質」を探る。「県民性」のように様々な差異を捨象してしまうリスクはあるものの、興味深い具体のエピソードを読み進めると、確かに土地土地の何らかの特色(著者の言葉を借りれば「傾斜」)が浮かび上が

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