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日記一覧

 「邪馬台国はどこにあったのか」、「鎌倉幕府はどのように成立したか」、「明治維新は江戸の否定か、江戸の達成か」、「戦争は日本に何をもたらしたか」、「戦後日本はなぜ高度成長できたのか」 古代から、中世、近世、近代、現代まで、日本史における約30

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 神戸と横浜という港町は一見似通っているようでいて、異なる点を持つ。どちらも開港後に急速に発展したものの、明治維新とほぼ同時に開港した神戸と、旧幕時代を経験した横浜とでは「迷い」や「苦味」といった点で街の性格が違うと著書は言う。様々なエピソ

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 明治初期の時代や文化の背景、日記、作品の変遷などから、その余りにも短い生を燃焼した樋口一葉の全体像を捉えている。  日記からは、名家の令嬢たちが集う萩の舎塾での、零落した士族の娘である一葉の羨望や憧憬、冷笑などがない混ぜになった複雑な心理

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 長い旅路も次第に終わりへと近づいていく。人生と同じく、旅も幼年期、少年期、青年期、壮年期を経て、老年期へと向かう。軌を一にして、旅の舞台は、熱気と混沌の渦巻くアジアから、安定と衰微をはらんだヨーロッパへと移っていく。季節もまた、旅が始まっ

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 プロジェクトXのシリーズを読んでいると、体の内側から沸々と勇気が湧き上がってくる気持ちになる。次から次へと新たに生じる苦難にもめげす、一心に自身に与えられた役割に邁進する姿は、「天職」という言葉を想い起させる。  本書では、戦後のアジア復

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 内海隆一郎の「人びとシリーズ」に出逢ったのは中学校の国語の教科書。本書にも載っている「残されたフィルム」の話は、古道具屋に持ち込まれたカメラの中に残っていた、桜を背景に母親が赤ん坊を抱いているモノクロの写真を持ち主に返そうと、写真から手が

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 米原万里さんの『旅行者の朝食』を読んでいたら、本書を海外の駐在員にあげたところ、後でとても怒られたというエピソードがあったが、実際に本書を読んで納得できた。 自家製のタクワン漬けの奮闘記をはじめ、吹いては食べ食べては吹く熱々の鍋焼きうどん

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 芥川龍之介が三十歳頃の小説が編まれている。身辺の出来事を題材にした作品から、「六の宮の姫君」といった王朝物·歴史物、キリシタン物など作品の幅は広い。そして、どの作品も削ぎ落とされた緻密な文章の中に、人間のエゴイズムや人生の業のようなも

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 平成という一つの時代を、経済、政治、社会、文化という視点から概観する。専門分化が進む現代にあって、社会学者である著者は「ショック」と「失敗」という視点から、平成時代の全体像を捉えようと試みる。 バブル経済の崩壊、阪神·淡路大震災とオウ

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 虚構という形式を借りて現実以上の真実を見せる、小説というもの。特に著者は、普段見慣れたものを「見慣れないもの」として表現することで、認識に揺さぶりをかけ、ものの本質に触れさせようとする技法、「異化」に注目する。一人称形式により、語り手の特

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 食をテーマにしたこのエッセイ集は、幼い頃にプラハで過ごし、その後ロシア語通訳として活躍した著者らしく、あまり馴染みのないロシアや東欧の食べ物が多く現れるが、どれも面白い蘊蓄に溢れ、ついクスッと笑みがこぼれてしまう。そして、「生きるために食

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 「働くということは生きるということであり、生きるとは、結局、人間とはなにかを考え続けることに他ならない。」 大学を卒業後、自動車メーカーで勤務しつつ小説を書き、三十代後半で会社を辞め作家として独り立ちするまで十五年の間会社員生活を送ってき

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 トルストイのアンナ・カレーニナは、「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」という一文から始まるが、樋口一葉のこの短編集も様々な形の不幸が変奏されている。 ままならない人生、一時はそれに抗おうと反

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 中公新書の『不平等社会日本』が注目を浴びた著者の論考集。格差問題を中心に幅広く日本社会の抱える課題を取り上げており、社会学者ならではの論理的で明晰な分析は鋭さを帯びている。 本書が書かれた2000年代は小泉構造改革の中、格差問題や自己責任論が

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 「雪が見たいな、とはげしく思うときがある。暗い空の果てから雪片が音もなく、休むこともなく、霏々翩々と舞い下りてくる。その限りなく降る雪が、峻烈に心を刺してくれるだろう、という雪へのあこがれである。」 朝日新聞のコラム「天声人語」を1970年代

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 デパートの和菓子店みつ屋を舞台にした『和菓子のアン』の続編。本書でも個性的なお店の面々や和菓子を鍵とした謎解きの魅力は変わらない。ただ、変わらぬ面白さの中に、タイトルにあるように、青春ならではの悩みや葛藤が織り交ぜられている。自分の進むべ

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 戦災で焼け落ちた名古屋城の再建、船が錯綜する東京湾の安全のための海上交通システムの創出などいずれのプロジェクトも印象深いが、圧巻はやはり黒四ダムの建設の話だった。延べ一千万人が携わった未曾有の規模だけでなく、その過酷さも凄まじかった。「黒

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 本書は中学生の頃に読んだけれど、この本の良さ、本質は分かっていなかったように思う。時を重ね、人生の様々な荒波を生き、大なり小なりの敗北を重ねて初めて、この老人の苦闘の意味や価値を見出すことができるし、「人間ってやつ、負けるようにはできちゃ

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 孔子とその弟子達のやり取りが生き生きとよみがえる。『論語』の512章のうち130章が引用され、それらが物語仕立てで再構成されている。 「過って改むるに躊躇してはならぬ」「生の真相がはっきりつかめないうちに、死の真相がわかるものではない」「朝に道

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 「水蓮のひらく音がする月夜だった。」 冒頭の一文から、幻想と現実とのあわいがぼんやりとした長野まゆみの魅惑的な小説世界へと誘われる。 夏の終りも近い満月の夜。アリスと蜜蜂のふたりの少年は教室に忘れた鳥の本を取りに、月明かりに包まれた夜の学

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 現代の情報化/消費化社会は多くの「光」をもたらしたが、その反面、大きな「闇」も存在する。 人びとの「必要」に制約されない無限の消費に向かう欲望を、情報を通じて再生産する現代社会。際限なく自己増殖する力を得た生産·消費のシステムは、環境

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 たった100頁ばかりであるのに、本書は何度読み返しても色褪せることない輝きを持っている。季節、空、雨、海、山、花々、木々、異文化や人との出逢い―これら地上の生の素晴らしさ、歓びを余すことなく伝えてくれる。それは決して観念的ではなく、著者の具

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 「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても 帰るところにあるまじや ひとり都のゆふぐれに ふるさとおもひ涙ぐむ そのこころもて 遠きみやこにかへらばや 遠きみやこにかへらば

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 デパ地下の和菓子店「みつ屋」を舞台にしたミステリー。ミステリーと言っても大事件が起こるわけではなく、和菓子に込められた想いなど「日常の謎」が中心となっている。ちょっとぽっちゃりとした主人公をはじめ、みつ屋の個性的な同僚たちが皆生き生きと描

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 「辛酸を神の恩寵と見、それに耐えることによろこびを感じたのか。それとも、佳境は辛酸を重ねた彼岸にこそあるというのか。あるいは、自他ともに破滅に巻きこむことに、破壊を好む人間の底深い欲望の満足があるというのだろうか。 正造がそのいずれを意味

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 インドを離れ、旅はシルクロードへ。パキスタンでは、対向車とチキンレースをする長距離バスに乗り、あまりのつまらなさに映画館を途中で抜け出ると爆弾犯に間違えられ警察官に殴られる。落日に照らされた砂漠を遊牧の民が進んでいく姿を見ながらアフガニス

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 日本は辺境であり、その辺境性が日本人固有の思考と行動を規定していると著者は説く。中国の影響を受けた古代や西洋文明に採り入れた近代のように、「世界の中心」「ほんとうの文化」はどこか他のところにあるという思いが日本には常に通底している。 この

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 辻邦生の初期短編集。南米を舞台に、負傷して半死半生のゲリラ兵と彼を看病する女性の想い、意識の流れが、切れ目ない文章で交互に現れる実験的な作風の『叢林の果て』。フランスから日本へ向かう船中で出逢った、貧窮と悲惨の中に進み入ろうとする修道女マ

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 社会に出る前の「温室」のような中学校での生活。好むと好まざるとに関わらず、生徒たちは人生の日々の大半を学校で過ごす。 実際に中学校で教師をしていた著者による、学校を舞台にした心温まる作品を読んでいたからか、本書で描かれる凄絶ないじめや学級

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 太平洋戦争後の占領期·復興期から、高度経済成長期、モータリゼーションを経て現代まで、国鉄からJRへの変遷を中心に、私鉄にも目配りをしつつ、鉄道の歴史をまとめている。 37兆円もの負債を抱え経営破綻した国鉄。輸送構造の変化への対応の遅れや歪

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