京都の北部の小さな中学校で教師をしている著者の学校での出来事を綴ったエッセイ集。教師としての仕事の大変さもあるが、それを補って余りある歓びがある。生徒との心の通いあいが適度な距離感で描かれて、カラリとした明るさがあって心地よい。
二度と巡らない、中学生という輝ける時。その時間を生徒とともに過ごし、生徒とともに先生も成長し、かけがえのない多くの想い出を分かち合う。
そして、いつしか別れの日はやってくる。三年間という時間が醸す信頼と愛情。めったに涙を流すことのなかったという著者は、最後の学年末テストの試験監督をしながら、これが最後だと思うとふいに涙に襲われ、生徒たちのことが心底好きだったんだと改めて気づく。
「ありがとう、さようなら」を幾度となく繰り返す、「学校」という場の魅力がたっぷりと詰まった一冊である。
「卒業式は笑えるぐらい泣けてしまった。今まで私の目の前をたくさんの人が去っていったけど、誰かが去っていく時、こんなに泣いたのは初めてだ。だけど、それは悲しいからじゃなくて彼らが飛び立っていく姿が嬉しくて仕方なかったからだ。そして、今はちっとも寂しくはない。笑えるぐらいけろりとしている。まだまだ目の前にはすてきな中学生がいる。どきどきするようなことがまた始まろうとしている。」
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