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日記一覧

「豆を煮るに豆がらをたく」―兄弟が傷つけ合うことのたとえ(広辞苑) 1991年のNHK大河ドラマ『太平記』では、足利尊氏が弟直義に毒を盛る場面が鮮烈だった。鎌倉幕府の打倒、南朝との対立にあたり、ともに力を合わせてきた兄弟であったが、1350年に起こっ

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 血を吐くまで鳴き続けるとされたホトトギスの異称を自らの名前とした「子規」。その名の通り、彼は死の2日前まで新聞『日本』に随筆を書き続けた。「病床六尺、これが我世界である。しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。」 病苦に苛まれ、一寸

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 秋が深まりつつある鎌倉の街のひっそりとした通りに川喜多映画記念館はあった。晩年をこの地で過ごした小津安二郎の企画展が今、開かれている。日本独特の風景や家族観、会話や仕草等を丹念に描いた小津の映画。そんな極めて「日本的」な映画について、欧米

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 大学の部活動の合宿中、道東の清里町駅から知床斜里駅まで、中休みの時に使う青春18切符を数時間かけて走って買いに行った釧網本線。札幌での友人の結婚式の翌日、富良野まで各駅停車で1日かけてゆっくりと旅した函館本線・根室本線―。本書を読んでいると

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 魅力的な推理小説の条件は何だろうか。トリックの精緻さや意外さは欠かせないだろう。北村薫の「円紫さんと私」シリーズには、もちろん謎解きの楽しさがある。大学で文学を学ぶ「私」が、落語家の円紫師匠の助けを借りて、日常の中の不思議な出来事を解き明

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「戦いまする」 2万の軍勢に城を囲まれ、味方の兵はわずか5百という状況で、このような言葉を相手方の使者に対して言うことができる男、それが「のぼう様」、武州・忍城の城代、成田長親である。どこかとぼけていて、農作業を手伝うと言ってはへまをする長親

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「今年は柿の豊年で山の秋が美しい。」 一話5ページ程の小さな短編122話からなる『掌の小説』。その中の「有難う」という話はシンプルな書き出しから始まった。  町に売られてゆく娘とその母親を乗せて、バスは秋の山道を進んでゆく。道々で馬車や荷車等が

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 1965年、四国観音寺の高校生4人組がロックグループ「ロッキング・ホースメン」を立ち上げた。楽器を手に入れるためのアルバイトや「がいこがいこ」の蝉の合唱に包まれた合宿、高校最後の夏の浜辺のデート等、青春小説の「定番」と言える要素がふんだんに詰

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 黒澤明と並ぶ日本映画の巨匠、小津安二郎。黒澤が「動」の監督とすれば、小津は「静」の監督と言える。小津の映画では、「大きな事件」というものは起こらず、娘の結婚と独り残される親といったテーマが繰り返し現れる。本書の表題は「たまにゃ、変わったも

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 「自分はあと何年すれば、この話の深さが分かるのだろう」 中学生の頃、藤子・F・不二雄の短編「山寺グラフィティ」を読んでそう感じた。 山形の名刹、山寺(立石寺)は死者の魂が集まる霊場であり、山寺に来れば亡くなった肉親の霊に会えると言われてい

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 悠久の「時間」と遥かな「空間」に思いを巡らせ、人間世界の総体を体系的、調和的に捉えようとする「全体知」。今、ここで起こっている現実の諸問題に取組む際にも、常に「全体知」を希求することの重要性を著者は説く。  「時間」について、著者は『孫子

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