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日記一覧

 今から4〜5百年前に生まれた、処世訓の『菜根譚』。著者は、明代末期に官僚として活躍後、政争に巻き込まれ隠遁したとされる、洪自誠。 NHKの『100分de名著』で、『菜根譚』の講師を行っていた著者の説明は明快で、その世界に惹き込まれた。それは著者の

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「秀吉に喧嘩を売った男 九戸政実」 本書の副題に書かれているように、豊臣秀吉が圧倒的な兵力をもって、全国各地を制圧していくなか、陸奥は南部藩にあった九戸政実は秀吉に喧嘩を売った。十万の秀吉軍に対して、二戸城に五千名の兵とともに立て籠もって闘

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 優しく上品な関西弁で語られる桂米朝の上方落語を聴くと、関西出身の自分はどこか郷愁を誘われる。 例えば、お堅い番頭さんが隠れて遊びに出かける『百年目』のおかしみ、会えない若旦那のことを一途に想い続ける小糸の恋を描いた『たちぎれ線香』の切なさ

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「人間はどんなところでも学ぶことができる。 知りたいという心さえあれば。」 「狐」のペンネームで日刊ゲンダイに書評を書き続けた著者の本を読んでいると、漫画『MASTER キートン』で出てきた上記の言葉を思い出す。 著者は大学図書館に司書として勤める

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 仙台から東京に戻る前、まだ雪の残る時期だったか、山形県高畠町にある、童話作家浜田広介の記念館に行った。 浜田広介の童話では、「泣いた赤おに」が最も有名な作品だろう。村人と仲良くしたいと願っているが、自分の容姿を村人は怖がって近づこうしない

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 今月末、谷口ジローの漫画『孤独のグルメ』の続巻が18年振りに刊行されるという。主人公の男性がひとりでふらりと食べ物屋に入り、食事をするというだけの話なのだが、えも言われぬ魅力がある。料理を前にした主人公の心理や、料理以外の周りの雰囲気の捉え

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 今から70年前、太平洋戦争の最終局面における沖縄戦は、「鉄の暴風」と呼ばれる凄まじい地上戦で、全戦死者は日米双方で20万人を上回り、沖縄の住民の戦死者は9万4千人にも達した。 沖縄戦についての書籍は様々なものがあるが、このノンフィクションでは、

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 社会人になって一年目の地方自治体研修で山形県の金山町に一週間お世話になった時、英国の紀行作家イザベラ・バードの記念碑を目にした。明治の初め、東京から蝦夷地までの旅の中で、彼女は金山町も訪れ、旅行記『日本奥地紀行』の中で、「ロマンチックな雰

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 西洋の12の肖像画と12の風景画からもたらされるイメージをもとに紡がれた24の物語。 なかでも、ブリューゲルが描いた「雪の狩人」をもとにした、「氷の鏡」という物語が強く印象に残った。鈍色の空に沈み、雪に閉ざされた真冬の村。左手には狩りから帰って

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「誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた めかくし鬼さん 手のなる方へ すましたお耳に かすかにしみた よんでる口笛 もずの声 ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた」 ぴんと張った

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 「津軽海峡・冬景色」、「北国の春」、「リンゴの唄」、「俺ら東京さ行ぐだ」など、関西出身の自分でも知っている北国の唄々について、「東北学」を提唱する民俗学者が論じ、「戦後の精神史を北から照らし出す」ことを目指している。 久しぶりにこの本を本

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 アイザック・アシモフといえばSFの巨匠の印象が強いが、本書のようなミステリー作品も多く著している。 弁護士、暗号専門家、作家、化学者、画家、数学者の6人が月に一度、「黒後家蜘蛛の会」という晩餐会を開き、雑談に花を咲かせる。この会に招かれるゲ

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 「金閣寺」「豊饒の海」「仮面の告白」など、新潮文庫の赤い背表紙の三島由紀夫の小説は重厚で、それでいて精巧なガラス細工のようなラインナップだ。一方で、角川文庫やちくま文庫の、肩肘張らないユーモアにあふれた作品も味がある。 この小説は、職業も

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 『ビルマの竪琴』の映画では、月夜のビルマの村で、対峙する日本軍とイギリス軍が、お互いに「埴生の宿」の歌を合唱する場面が印象的だったが、この本はそうした感傷的なイメージとは対極に位置している。 著者は京都大学で西洋史を学んだ後、大学で研究を

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「青春の全てを寝技に捧げた男達の物語。」 相撲部屋の人間模様を描いた漫画「おかみさん」の作者、一丸が舞台を柔道に変えて連載中の漫画「七帝柔道記」。漫画はまだ第一巻が刊行されたところだが、続きが気になり、原作である本書を手に取った。漫画の宣伝

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 住み慣れた場所から遠く離れた土地にいるからか、この古典を読みたくなった。 歌人である紀貫之が、土佐守(国司)として今の高知県に4年間赴任し、その任期を終えて帰京する船旅の経験をもとに、前土佐守に仕える女房になりきって書いた紀行文である。 

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 読書をすることの「幸福」が伝わってくる本である。 作家であり文学者でもある両氏が、1996年から1年4ヶ月にわたって朝日新聞紙上に掲載した往復書簡をまとめたものだ。あえて面識を持たないまま始められたやり取りは、主に水村氏が話題を投げかけ、年長の

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