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2021年07月23日15:12

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本棚401『方丈記』鴨長明 武田友宏編(角川ソフィア文庫)

 十二世紀の末、平安時代末期の京を生きた鴨長明は、大火や竜巻、飢饉、地震といった様々な天災を経験する。方丈記は、これらの苦難を五感を揺さぶるリアルな描写で描き出す。本書は丁寧な解説を混じえ、天災に翻弄される「無常」の世を嘆き儚むのではなく、「無常」に対して人間はどのように生きたらよいのかを問いかけ、無常や苦難に押しつぶされず、積極的に立ち向かう長明の姿を明らかにする。
 他方で、平家の福原遷都を、自身の不遇と重ね合わせて批判する様からは、人間長明が垣間見られる。その怒りも「行く河」に流されて泡のように消え、今は河の流れだけが当時と同じように存在する。

 また、長明の思想に基づき、「無常」に積極的な価値を見出す、解説の文章が心に残った。「長明にとって「無常」なしの人生はありえない。「無常」だからこそ人生は生きる価値があり、生きる喜びも生まれてくる。要するに「無常」の極限には人間の生死そのものがある。」
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