mixiユーザー(id:44534045)

2021年07月13日23:21

30 view

2分小説『カラフル水道水』

 まさか外国人だとは知らなった。「友達も呼んでいいぞ」なんて軽々しく後輩に言ったが為に、望んでもない異文化交流をする羽目になった。
「私の国ではこの煙草を回し飲みするのが有効の証デース」
「二ホンはいい国ねぇ」
「女の子キレイよ」
「水道水が飲めるなんてあり得ない」
「私の国、水道水茶色い」
「そしてたまに青い」
 茶色は分かるけど青ってなんだ?ツッコみたいけど我慢して終始笑っていた。アゴが痛い。
 
 ##########

 朝、目が覚める。寝ぼけ眼で洗面台に立つ。
「眼が充血してるなぁ」
 蛇口を捻る。と――
「なんじゃこらー?!」
 茶色い水が出てきた。
「嘘だろおいっ!」
 シャー
 白い洗面台に、茶色い水が流れ落ちる。
「あの外国人、ナニ人っつてたっけ?」
 思い出せない。後頭部にキーンと痛みが一閃、顔が顰まる。
「まいったなぁ……」
 ここ日本だぞ。水道水が飲める国だぞ。言い聞かせながら、キッチンへ、そして蛇口を捻る。
「勘弁してくれよ」
 蛇口から出てきたのは薄緑色の水。
「いや、有りえんから」
 バスルームに入り、シャワーを捻る。と、青い水が出てきた。

 ・・・・・・

 そういえば、水道工事で断水するって、ポストに入ってた。確か昨日だ。昨日工事があった筈だ。だからか?だから水が変な色なのか?
「もしもし、水道局ですか?洗面所の蛇口から茶色い水が出るんですけど」
「は?『暫く流せば透明になる』って?いやいや、やったけどならんのよ。それどころからキッチンからは薄緑色の水が出る」
「いや、おたく俺の話聞いてる?理解している?バスルームのシャワーからは青い水が出たぜ。どうなってんの一体?今すぐ見に来い!は?今すぐは無理?ふざけてんのか?とにかく待ってるからすぐ来いよ。来なかったらただじゃおかないからな!」
 電話を切る。

 暫くして――ピンポーン。
「おはようございます」
 来たか?
「はい、え?え?水道局の人?」
「違います」
「その恰好……え?警察の人?」
「そのような者です。通報がありまして」
「え?水道局から、いや、確かにちょっと乱暴な言い方したけど、そんなことで――」
「違います私、麻薬取締部の者です」
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する