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2006年11月21日01:12

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『明日へのチケット』

11/17〜18上京のファーストプログラムは、映画『明日へのチケット』(渋谷シネアミューズ)。

監督 エルマンノ・オルミ(伊),アッバス・キアロスタミ(イラン),ケン・ローチ(英)3人の「コラボレーション」

出演 
第1話 カウロ・デッレ・ピアーネ,ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ他

第2話 シルヴァーナ・デ・サンティス,フィリッポ・トロジャーノ他

第3話 マーティン・コムストン,ウィリアム・ルアン,ガリー・メイトランド他

3監督の「オムニバス」だと思っていたが、少しイメージが違う。で、「コラボレーショーン」とした。

舞台は、追憶の場面を除き、通してヨーロッパ鉄道の駅及び車中だ。第1話において、第2,3話に重要な役割を持つ人物が出てくる。そうさせる事で全体を通した有機的な連携感が生まれている。なかなか旨いやり口だ。
オムニバスと言うと、普通、第1話タイトル○○、キャスト△△、スタッフ××、本編・・・で第1話が終わり、別の第2話が同じように始まる。こんな風。全体に、総タイトルに通じるようなイメージなり何らかの意匠が串刺しにされている程度。

今回の作品は、場所と時間設定が一つであり、一部の登場人物達も関連し合う事で、もっと緊密な連携がある。エピソード間に区切れもなく、いつの間にか次の話に移行している。

オルミの最初の挿話は老教授(ピアーネ)の追憶とファンタジー。

恐らく仕事と孫が全てだった老教授に、この列車の切符の緊急手配等親身になって世話をしてくれた出張先企業の秘書(ヴァレリア)に対する、淡い想いが芽吹く。こんな事は何十年振りだろうか。
しかし、何か行動に出す訳でもなく、列車は出て行く。
車中にあって、老教授の心の内側をたゆとう想い。幼い頃の恋の想い出は、ショパンのエチュードと重なっている。
教授は彼女にメールを書き始めるが・・・
車中の喧騒や小さな事件が、何度も老教授を現実に引き戻す。
ついにヴァレリアに出そうと書きかけたメールを棄て、老教授は、席もなく連結車両にたむろする貧しい移民家族の泣く幼子に、暖かいミルクをやろうと、席を立つ。
第1話はこれだけの短い詩である。

そしてこの移民家族が、第3話で重要な役割を果たす。

キアロスタミの次の挿話は、しばらくして留まった小さな駅で乗り込んできた太った中年女性(デ・サンティス)と青年(フィリッポ)の引き起こす、まるで掛け合い漫才。
女性は昨年夫である将軍を亡くした未亡人。その傍若無人の身勝手振りが、次々に回りの人々に迷惑をかける。かけても、一向に反省せず我を通すばかり。
青年は兵役義務の代替を、将軍未亡人の世話をする事にあてている。青年の未亡人への態度はおざなりそのもの。なるべく夫人とは距離をおこうと、目を離せばすぐコンパートメントを出て、そこらの若い女性とおしゃべり。
夫人の我儘についには切れて、車中雲隠れ。
夫人はローマ近くの某駅で降りる。大きな荷物は、車中でもめた見ず知らずの人に持たせる始末。
青年は降りてこない。
列車は、大荷物に腰をかけ、1人溜息をつく夫人を後に、走り始める。

ローチの主人公は、イギリスからヨーロッパ鉄道に乗ってきた若者3人組(コムストン,ルアン,メイトランド)。
ローマでのファンチームの試合に応援する為、スーパーの少ない給料から交通費を捻出しやってきた。
車中で移民家族の少年とサッカーの話で盛り上がる。
その後、車掌の検札時に、3人の内の1人の切符がなくなっている事に気付く。
罰金も切符を買い直す金もない。
トラブルの果てに、移民の少年が盗った事が判明するが、移民悲話を聴き3人は悩む。
ここで盗みがバレれば、強制送還され、ローマ駅で待つ父親との再会は果たせない。
さっき迄興奮して暴力さえふるいかねない若者達だったが、一体どうすればいいのか。自分達が警察にしょっ引かれるのか、移民家族を警察に引き渡すのか・・・

ラストは言わぬが花だが、電車の切符、そしてサッカーの試合の切符・・・

1話の詩、心をつなぐ想い、2話の人間観察、孤立、そして3話での成長への悩みとヒューマニズム、・・・ここにあるのは、根源的なつながりを求める人間を突き通す切符(チケット)なのだ。
映画の原題は、単に『チケット』である。
 
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