(続き)
◆第5章「作家の生きざまと美~アトリエ&創作の現場」
作家のアトリエは、歓喜や苦悩、葛藤、孤独などあらゆる感情が交錯する美の裏舞台だ。
番組「日曜美術館」は1980年から「アトリエ訪問」シリーズを開始し、多くの作家の創作現場を紹介してきた。散乱した空間もあれば、道場のように整然とした場もあり、作家それぞれの生きざまと個性が刻まれている。
作品がまさに誕生する瞬間に立ち会う事は、創造の核心に触れる特別の体験だ。
日常の何気ない出来事から着想を得る姿からは、作家の内面や秘密を垣間見る思いがするし、制作過程で語られる言葉一つ一つには創造の深い意味が宿っている事もある。
見えないものを描こうとする探求や、人間や社会、自然への思索は、美を超えて生き方そのものを問う哲学的な往還でもあるだろう。
〇三岸節子(1905-99)《太陽讃歌(山はくれない)》(1969/一宮市三岸節子記念美術館
〇同《花(ヴェロンにて)》(1989/同)
「アトリエ訪問 三岸節子」(1992.10.11)
・本人
…花が好きですから、体の中にいっぱい詰まっているんです、花が。それが出てくるんですね。
花ぐらい美しいものないと思うんです。ですから体の中に花の美しさ詰まってるんです、ぎっしりと。
〇岡本太郎(1911-96)《遭遇》(1981/川崎市岡本太郎美術館)
「アトリエ訪問 岡本太郎~作家 金井美恵子」(1981.3.8)
・本人
…職業なんてないんだと。人間だと。
誰だって人間だから、しょうがないから、芸術だと。芸術家なんてもんじゃない、芸術だと。
セクションの中に入っている事が芸術じゃないんですよ。全人間的に生きる事が芸術なんです。
〇諏訪敦(1987- )《大野一雄》(2006-08/作家)
「記憶に辿りつく絵画~亡き人を描く画家」(2011.6.26)
・本人
…その人が欲しているなら、ちゃんと応えるべきだろうと。
既に90歳を超えていた大野一雄の動きに圧倒され筆を走らせた。予想外の動きについていくのが精一杯だった。
例えばバレエダンサーとか普通のダンサーっていうのはいわゆるアスリートのような美しさってあると思うんです。競走馬みたいな肉体のハリというか、そういう強さとは全然違う種類のものですよね。
それに動きが伴うと別の生き物に見えますよね。不思議な生き物っていうか。
大野は2010年6月に亡くなった。103歳。
〇山口晃(1969- )《ショッピングモール》(2015/桐生市大川美術館寄託)
左
右
「画伯!あなたの正体は? ドキュメント山口晃」(2015.4.19)
・本人
…(真っ白いカンヴァスに向かって)描き始めるのに時間が一番かかるんですね。何というか怖い訳ですよ。描かないと宝の山ですから。可能性100%の素晴らしいものがあって、描いていくっていうのはものが出来ていくんじゃなくて、100%の可能性が90%に削られて80%に削られてって可能性がどんどん無くなっていくような…
可能性を無くして、そういう確定性に変えていくっていう。
レポートは以上とします。
第1章の海外作家の作品、第3章の工芸作品を中心に制約とキャプションに不充分があり、ここに掲示できなかったものも多かった事、一応触れておきます。
〈参考〉
NHK-Eテレ「日曜美術館~アートシーン特別編」『日曜美術館50年展/静岡県立美術館』
ゲスト 栗原類
解説 静岡県立美術館学芸員 日本美術担当 石上充代
西洋美術担当 貴家映子
放送 9.6(日)再放送
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