(続き)
◆聴覚に問題を抱えている人々のために
・字幕機
舞台上のある高さに左右に1台ずつ、字幕表示のパネルが設置された。この機材は、リアルタイムで俳優のセリフを自動表示する。日本語は同音異字も多いため、字の修正は人の手で頻繁に行われた。
文字・文章の読みやすさなどの面も随分検討したらしい。
ディスプレイには舞台美術と連携した装飾がなされ、違和感の低減も施されていた。
下は会場で配布された字幕ガイド。
セリフや歌詞だけでなく、効果音や音楽など、文字表現しにくい側面も障害を持つ人達に伝えようと努力している事が分かるだろう。
・手話通訳
舞台上に手話通訳者が立って俳優のセリフを通訳。彼らはただ舞台脇に立って手で表現するだけでなく、事前練習を相当に積んだのだろう、俳優の近くにスピーディーに且つ邪魔にならないように位置を変え、コーラスメンバーと同じ衣装をまとい伴に動き、歌い、踊り、演者的な活躍も大きく、これには感動した。
・音声補聴
(事前予約が必要だったが)補聴器を使っている人へ鑑賞のサポート情報を飛ばした。
・台本貸し出し
申込者には事前に台本を貸し出しした。事前理解があれば物語の進展にもついていきやすかろう。
これらは皆、取って付けたようなレベルでなく、極めて繊細に舞台効果や演出に溶け込んでいて、さすがに「アクセシビリティ版」と銘打っただけの事はあったと思えた。
今回の公演ツアーは以下の通り。
これらはアクセシビリティの取り組みに積極的な会場だと理解してよいが、まだまだ数が多いとは言えない。
・神奈川 6/27,28 KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ
・愛知/豊橋7/4 穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
・長野/松本 7/10~12 まつもと市民芸術館小ホール
・兵庫 7/18,19 伊丹市立文化会館 東リいたみホール
・鳥取 7/26 鳥取県立倉吉未来中心エースパック未来中心
・愛知/知立 8/2 知立市文化会館パティオ池鯉鮒かきつばたホール
・東京 8/5~9日 吉祥寺シアター
・岩手 8/22 北上市文化交流センターさくらホールfeat.ツガワ中ホール
・新潟 8/29 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
木ノ下裕一による〈人物相関図〉
今回のキャスト
紙屋 治兵衛 日高啓介
紀の国屋 小春 湯川ひな
おさん(治兵衛妻) 伊東沙保
おさんの母(治兵衛叔母) & 茶屋「河庄」女将 西田夏奈子
おさんの父(五左衛門) & 恋敵 太兵衛 大鷹明良
粉屋 孫右衛門(治兵衛兄) 武居卓
三五郎(紙屋 丁稚) & 善六(太兵衛 子分) 緒方壮哉
コーラス 西田夏奈子,大鷹明良,武居卓,緒方壮哉,田中結夏
…コーラスの役割は義太夫。
ヴァイオリン演奏/中の巻のみ 西田夏奈子
…ヴァイオリンは三味線の役割だが、演奏するのは現代音楽。この物語が
遠い江戸時代の他人事でなく、現代に通ずる問題を含むとイメージさせた。
西田夏奈子は登場人物2役とコーラス,ヴァイオリンと八面六臂の大活躍!
舞台手話通訳 田中結夏
…上で書いたように、田中結夏は単なる手話通訳専門の技術者でなく、
演者,コーラスの1人として素晴らしい活躍をした。手話通訳の新たな領域を開発
したと言って過言でない。
スタッフ
原作 近松門左衛門
監修・補綴 木ノ裕一
演出・音楽・作詞 糸井幸之介
美術 角浜有香
照明 横原由祐
音響 星野大輔
振付 北尾亘
舞台監督 大鹿展明
他に、手話監修,字幕制作・オペレート,音声ガイド制作・ナレーター,アクセシビリティ制作協力・アドバイザー,ろう者モニター等々のクレジットが並ぶ。
〈付記〉
席はC列(第3列)18番。
〈参考資料〉
プログラム
執筆 木ノ下裕一,糸井幸之介,稲垣貴俊 他
発行 2026.6.27、松本市民芸術文化振興財団
隔月刊「悲劇喜劇」2026.7月号 特集「現代演劇に息づく伝統芸能」より『刺さる矢、刺さらない矢』、本公演戯曲付き
執筆 木ノ下裕一
発行 2026.7.1、早川書房
季刊「PLAT NEWS」2026.5~7月号より「木ノ下歌舞伎『心中天の網島』アクセシビリティ版」
インタビュー 木ノ下裕一×塩見直子(PLAT事業制作部チーフ)
発行 2026.4月、豊橋文化振興財団
プレトーク&レクチャー
講師 木ノ下裕一
日時 7/1(水)19:00~21:00
会場 穂の国とよはしPLAT芸術劇場アートスペース
本番終演後トーク
インタビュー 木ノ下裕一×岸本匡史(PLAT芸術文化プロデューサー)
日時 7/4(土)16:00~17:00
…この場でも、木ノ下はアクセシビリティについて熱く語っていた。
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