mixiユーザー(id:3341406)

2026年06月12日17:20

75 view

日本初の回顧展 カール・ヴァルザー/東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリーのヴァルザー展、正式タイトルは少し長いが「スイス絵画の異才カール・ヴァルザー~世紀末の昏き残照」。

フォト

・会期 4.18~6.21

カール・ヴァルザー(1877-1943)は20世紀前半に活躍したスイスの画家。
ベルン近郊のビールで生まれ、シュトラスブルク(当時ドイツ領/現フランス領ストラスブール)の美術工芸学校で学んだ。
1899年にはベルリンに出、1902年、アカデミックな仕事から離れて革新的な表現を目指す「ベルリン分離派」の展覧会に初出品、翌年には会員となった。
彼の作品には世紀末の残照とでも言うべき昏さの漂う神秘的なものが多く、寓意や含意を感じさせる象徴主義的傾向も持つ。
分離派は最初1892年にミュンヘン、続いてクリムトが始めたウィーンが1897年、そしてベルリンが1898年に創設された。

カール・ヴァルザーの名はヨーロッパでもまだ高くはないが、母国スイスではその評価が高まりつつある。

ヴァルザーの生涯と仕事で、日本において特筆すべきは、20世紀初期に来日し作品を制作した事だ。
1908年、31歳になる年、ドイツの小説家ベルンハルト・ケラーマン(1879-1951)とともに来日し、東京や、天橋立で知られる京都の宮津などに半年程滞在、日本の風景や風俗を生き生きと描いた。
これらの作品は当時の様子を伝える貴重な歴史的資料であると同時に、美術的にも非常に優れたものだ。多くは水彩で描かれた下絵や素描だが、完成度の高い油彩画も残された。
本展は、これらの仕事に加え、作家となった1歳年下の弟ローベルト(1878-1956)の著作に描いた挿絵や、舞台美術、壁画でも活躍したヴァルザーの全貌を伝える画期的な試みで、全150点が全て日本初公開となる。

◆第1章「絵画と素描」
謎めいた神秘性を湛える、初期ベルリン分離派時代の象徴主義的作品。
冒頭に掲げたチラシに採り上げられたのは《婦人の肖像》(1902)。

丘の上のテラスか、端正な衣装で椅子に座り読書をする婦人。暗い画面で焦点が当てられた猫のような彼女の目は、本でなく、絵を観る者の方をじっと見つめ返してくる。
その向こう、林に囲まれた明るい場所には、放牧された羊か山羊が草を食んでいる。
画面上に緊張と弛緩が意志的に構成されている。

《隠者》(1907)
フォト

廃屋のような山上の建物、その前庭に破れかけた衣服を着、頬杖をして寝そべった老人が、古書を広げて読んでいる。
老人の身体は家に比べて大き過ぎる。
彼の後ろに立つ木はたくさんの花を広げている。廃屋もピンク色で、畑の野菜も実をつけており、彼の周囲には春の訪れを感じさせる。
隠者の内なる心の平安と豊かさを暗示しているかのようだ。

◆第2章「日本滞在」
先に触れたように、ヴァルザーは1908年4月、日本を訪れた。
出版兼画廊経営者カッシーラーに依頼され、同行した作家ケラーマンの紀行文(のち『さっさ よ やっさ 日本の踊り』なるタイトルでカッシーラー社1911刊)に挿絵を描くのが目的だった。
恋人の自殺から鬱病に陥ったヴァルザーを癒すのも隠された目的の1つであった。
約半年に及ぶ滞在期間に、2人は各地を巡るが、気に入って長逗留したのが京都の日本海に面した町 宮津だった。
ヴァルザーはこの町で、祭り、舞妓や歌舞伎役者、市井の人々の姿を、生き生きとした筆致と美しい水彩で描きとめている。完成度の高い重厚な油彩画も一部あり。
これらを通して、120年前の日本が鮮やかに甦る。

《花火》(1908) 水彩
遠近の極端な構図は浮世絵から学んだのだろう。
フォト


《歌舞伎の女形「阿古屋」》(《歌舞伎の一場面》のための習作)(1908) 水彩
フォト

傾城阿古屋の姿は下の本画の中に見事に活かされている。
ヴァルザーは動いているものを瞬間で写し取る才能に長けている。

《歌舞伎の一場面(『檀浦兜軍記』より「阿古屋琴責」)》(1908) 油彩
フォト


《祇園祭、京都・八坂神社》(1908) 油彩
フォト

《京都先斗町の鴨川納涼床》(1908) 油彩
フォト

共に、夜の漆黒の中に、提灯などの仄明かりによって人々の遊ぶ様子が浮び上がる。

◆第3章「挿絵と装幀」
ヴァルザーは生涯を通じて、挿絵や舞台美術、室内装飾や壁画の仕事で生計を立てた。
1歳年下の弟で詩人としても名を馳せたローベルトの本を始めとして、多くの挿絵,装幀の仕事をした。

〈ローベルト・ヴァルザー作『詩集』挿絵のためのエッチング少年の愛〉(1909)
フォト

〈ゲオルク・ビュヒナー昨『レオンスとレーナ』挿絵のためのリトグラフ 第3幕第3場ペーター王、宴会の式場係、ヴァレーリオ、レオンス王、女家庭教師〉(1910)
フォト

壁画作品はビデオ映像で紹介された。

◆第4章「舞台美術」
舞台美術の分野ではシェイクスピア他、演劇や歌劇、多く作品でセットやコスチュームのデザインを担当した。

〈シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』衣装デザイン 乳母〉(1907)
フォト

〈モーツァルト作曲 《フィガロの結婚》衣装デザイン 変装する小姓〉(1911)
「小姓」はメゾソプラノがズボン役で扮するケルビーノを指す。
フォト

〈ゲルハルト・ハウプトマン作『グリゼルダ』舞台美術のための下絵 第1幕第2場ガレリア〉(1909)
フォト

 
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年06月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930