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2026年04月19日11:00

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「テート美術館 YBA & BEYOND〜世界を変えた90s英国アート」~2

(続き)

◆第2章「おおぐま座〜都市のイメージをつなぐ」

英国の伝統的な製造業は1990年代初頭迄に衰退し、サービス業や金融業といった分野に追い越されるようになっていた。結果、都市開発は停滞をきたし、未完成のビルや空き店舗、廃墟と化した建設現場が都市の至る所に目立つようになっていた。
失業率が悪化、移民が増加する中、こうした都市の打ち捨てられた周縁部は、安価なスタジオや展示機会を探す若い作家達にとって予期せぬ創造の場となった。芸術への公的支援が極めて少なかった時、DIY的精神によって結びついた芸術と都市生活の関係は、当時のアーティスト達が困難を乗り越え、創意工夫を凝らす一因ともなった。

作品制作と発表のための新しい場が開拓された1990年代、アーティスト達は、都市の変化のあとを追い、活発な活動を展開した。打ち捨てられた物や空間に目を向け、都市に新しいイメージが生まれる社会的・経済的な背景を探究。地域社会の原理を侵食する諸問題に批判的な目を向け、都市に広がるメランコリーや人々の疎外感を表現するようになっていく。

レイチェル・ホワイトリード《A〜クラプトン・パーク・エステート、マンデヴィル通り、ロンドE5〜アンバーゲート・コート〜ノーバリー・コート、1996年10月》(1996)
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R・ホワイトリード(1963- )は1993~95年にかけて12点から成る写真シリーズ《破壊》を制作。上はその一部。
1990年代初頭、ホワイトリードは低所得者層が住むロンドン東部で生活していた。この地域ではサッチャー政権の住宅政策により高層住宅の取り壊しが実施され、多くの人々が住む場所を失った。
一連の最後の写真では、完全に壊されて廃材になった物が木々の間に積み上げられているのが分かるだろうか?

社会的弱者に悪影響を与える政府の姿勢に疑問を感じたホワイトリードは、団地の取り壊しの経過を記録。社会の経済的状況の変化によって消滅する場所や暮らしのメタファーでもあるそのイメージには、既になくなった存在への追悼の意も籠められている。

◆第3章「あの瞬間(とき)を共有する」

1990年代の英国では、美術,広告,ファッション,音楽の各業界が、多様な関係を築き上げるようになっていた。
社会規範に挑戦すると同時にある種の共同体意識を促したブリットポップやレイヴ・カルチャーの隆盛に加え、「i-D」「ザ・フェイス」「デイズド&コンフューズド」などの誌面を彩ったユニークなストリート・ファッションから、革新的なデザイナー達よるオートクチュール・ファッションに至る迄、英国の文化とアイデンティティにとって独自の文化的局面が構成されていった。そこでは、ユース・カルチャー,大衆文化,セレブリティの概念が更新されていった。

若者達の歴史とアイデンティティを捉える新しいイメージが広がっていく状況下で、英国の多くのアーティストたちは芸術の伝統的な枠組みを打ち破るため、音楽の開放的な力に積極的に関わるようになっていく。
雑誌,サンプリング・サウンド(複数の音源の組み合わせ)、ファウンド・フッテージ・フィルム(既存の映像の断片をつなぎ合わせたフィルム)等が絡み合いできあがった作品は、変化する政治や社会の中でかけがえのない瞬間や、人間同士のつながりを大切にする価値観を共有していた。
音楽が英国社会においてどんな役割を果たし、如何にしてその歴史がサウンドと共に時を重ねていったのかを振り返る時、90年代に作家らが創出した恍惚感溢れるイメージは、「今この瞬間に生きている」と実感される鮮烈な感性を呼び起こした。

ウォルフガング・ティルマンス《ザ・コック(キス)》(2002)
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…本展チラシより。
1990年代の大半をロンドン,ベルリン,ジャマイカのクラブシーンを横断して過ごしたW・ティルマンス(1968- )は、ストリート・カルチャー,クラブ・カルチャー、また、テクノ・ミュージックとの密接な関係を築き、更に平和運動を支援、同性愛者の権利獲得運動やエイズ問題にも積極的に関与した。
当時は「i-D」のような雑誌が重要な発表の場となり、友人らや静物、クラブシーンを捉えた写真は次々特集ページとなった。
雑誌写真はレイアウトを再構成され、連続性を表現するインスタレーション作品としてギャラリーに展示された。
ティルマンスは、更に、発色現象方式による手焼きのプリント、ドラッグストアの現像機、デジタル時代の黎明期に生みだされたレーザー複写機など、様々な写真技術を駆使。鋭く被写体を捉えた幸福感に満ちたイメージは、当時の人々の生活を鮮烈に呼び起こす。

ジュリアン・オピー《ゲイリー・ポップスター》(1998-99)
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…本展チラシより。
デジタル技術によってシンプルで感情のない人間描写を追及するJ・オビー(1958−)は、ブリットポップのバンドをモデルにした作品をてがけ、アルバムのジャケットや世界中の音楽関連グッズに再使用された。
様々なヴァリエーションで展開された作品は、芸術と商業世界の境界を曖昧にするものとして位置づける事もできる。限られた要素によって作られる架空の著名人のイメージは「個性を示す情報とは何か」を私達に問いかけもする。

(続く)
 
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