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2026年04月03日12:00

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木内昇著 『かたばみ』~2

(続き)

多くものを失って戦争は終わる。
朝子の夫 茂樹は片腕をなくして帰ってきた。
それでも、料理好きな彼は明るく、物資のない中、皆の食事を作り、店で出す献立を工夫した。

悌子は権蔵と結婚する決心をした。
大恋愛で結婚するというような時代ではない。
悌子は教師を続け、権蔵はラジオ放送の仕事の手伝いを始めた。
権蔵はひ弱で力がなく、家での力仕事は全部悌子がやった。
一方料理が得意でない悌子は、下宿の朝子と茂樹の料理に助けられた。戦争が終わっても、食料は配給で、それも途切れがちだった。こんなではなかった筈と、朝子の子らは泣き、大人達は彼等に説明ができない。
力はなくても、人の話をよく聴く権蔵は、街角で人々の声を収録する仕事に向いていた。
2人は体格は正反対だが「自分をごまかさない」という本音は共通し、何となくウマが合い、やっと夫婦のようになってきた。

岐阜とは距離を置く悌子は、実家からの手紙も無視していた。
ある日、両親が一人の女性を連れて上京してきた。
清一が南方で死んだとの公報がきたと両親が話始める。
連れてきたのは清一の妻 雪代だった。

彼女の義父(清一の実父)が言うのには、清一が死んで家業を継ぐ者がいなくなった。ついては雪代に婿を取らせ、婿に家業を継がせたい。婿候補はいる。だが、その男は清一の子(清太/3歳)とは暮らせない、と。
で、清太を養子として育ててくれる人はいないかと考えた末、幼馴染みだった悌子はどうだろうかと尋ねてきた、そう悌子の父は話しかけた。私も決して賛成する訳ではないが、何度も手紙を出したのに返事がないので、せっつかれ、こうして連れてきた次第だ、と。

雪代は下を向いたまま、手放したくはないが、清太を連れて女手一つでは生きていけないので、何とか引き受けてくれないかと静かに言う。
悌子はその判断に驚いた、最優先するのは大事な子供と一緒に生きていく事だろう、そのためには、奇妙な論理に引き倒されるのでなく、雪代も自立して働けばいい。
だが、雪代は悌子の話を聴かず、清太を連れて女手一つでは生きていけない、の一点張りだった。

戦争が終わって兵隊が帰ってくると、社会に男性があふれ出した。帰還した男性に仕事は渡し、暗に女性はなるべく家庭に戻れとの考えもなくはなかった。だが、元兵士は身体も精神も傷ついている例が少なくない。
GHQからは民主主義や女性の権利の拡張が指示されるが、そうした指示以前から、悌子や下宿の朝子のように働いている女性もいる。参政権も1946年には保障された。
"男性が守ってあげなければと思うような女性 "とは、自立心のない戦前型の女性の謂いか。悌子はそう思えて、腹が立った。
連れ子と一緒には住めないと主張する婿候補の男性にも呆れる。その男と結婚しても雪代はきっと幸福にはなれない、悌子はそうも思った。

悌子は感情に突き動かされて、清太を引き取ると叫んだ。二度と息子に会わないという雪代の約束付きで。
あとから、夫 権蔵に相談しなかった事に気づき、悌子は畳に額をつけて詫びた。
権蔵は困惑するが、清太と3人一緒に暮らしだすと、時間と伴に父性に目覚めていく自身に驚くのだった。
さまざまな問題や迷いは発生するが、2人は一つ一つ乗り越えていった。
親が子供を育てるだけではない、子供に教わる事も数多い。
清太が成長する中で、こうせねばならないと押し付けるような親には絶対なるまい、そう2人は心を決める。
清太は、産みの母や実家の記憶はなく、権蔵と悌子の子として成長していく。

現下、血のつながりさえあれば家族たり得るのか?という問いに、たやすくYESと頷ける人も多くないに違いない。
親子関係に、算数のような答えは存在しないのではないか。

後半、清太は成長し、明るく野球好きな少年になる。
父親清一に似たのだろうか、と悌子と権蔵は内心心配になる。
物語は続くが、勝手なレポートはここ迄にする。


 執筆 木内昇
 装画 伊波二郎
 発行 2023年8/4、KADOKAWA


私は、木内昇はこれが2冊目。
1冊目は2012年に読んだ『笑い三年、泣き三月。』、終戦の翌年の上野,浅草を舞台にした人々や社会,風俗の物語。
『かたばみ』と近い時代を背景にしている。
以下参。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1873875646&owner_id=3341406&from=list_diary_search
 
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