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2025年12月26日13:00

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スイッチインタビュー 佐野史郎×桜木紫乃~2

(続き)

桜木「凄い球が飛んできたなあ!
でも佐野さんは俳優になるべくしてなったのですから、その悩みもないようだと"佐野史郎"なるものはでき上らない。ずっと悩んで下さい!
長く続けられる環境に自分を置くって、自分の中に蓄積したものをどんどん使っていくという事。物語の中の人が、自分の(肉体や意志や悩みなど)全部を使って表現してくれている。」
佐野「僕の家族や背景なども勿論その一部という事でしょうね。」
桜木「そうそう」
佐野「この家族関係とか、"家じまい"を目の前にしている事をまるごと受け入れた上で…、まあ、それを達成していないからこんな話をしているんだろうけど。」

桜木「自分に起こる事は、それが何であれ、絶対に面白いような気がしています。」
佐野(笑顔が戻る)「自分に起こる事は面白い!」
桜木「自分にもし強みがあるとしたら、5年6年発表できなくてもやり続ける事。きっと、それでも書く事をやめないんだろうなと思う。
(小さい時に父親からされたように)殴られ続けると、1回や2回殴られてもびくともしない。」
佐野「文字通り、打たれ強い、と!」
桜木「そうなんです(笑)。」
佐野「意味が違いますけどね(笑)。」
桜木「時間がかかるのは当たり前、今日書いたものが明日評価されるなんてないですから。
そういう点では、(共に理容師だった父母)職人に育てられた事、職人と職人の間に生まれたって事は、大きいのかな?と思う。」

佐野「お父さんを見てると、乗り越えられる、褒めてもらえるって…」
桜木「父が私の事を認めてくれた、こいつは小説を書く人間なんだって、こいつは職人なんだって認めてくれた日を、私は憶えています。直木賞の授賞式だった。」

2013年、桜木は『ホテルローヤル』で直木賞を受賞した。
林真理子が壇上でこう言った、「『ホテル・ローヤル』、ラブホテルを舞台にいろんな人間が交差するのだけれども、切なさに溢れている。すごい作家が現れた、と私は思った」。

桜木「ちゃんと着物を着ていろんな人に挨拶している私を見て、父は、もう自分の娘じゃないと思ったみたいです。それは母も同じだったと思う。あの日から一回も向こうから電話がかかってくる事はない。」
佐野(真に驚いた表情で)「あっそうですか!。」
桜木「職人の考え方、例えば、朝からの電話で心が揺れ動いてはいけない、仕事に差し支えるから、と。」
佐野「もの凄く心が通っていますね!」
桜木「今、彼(父)の事を、理解したい、もしかしたらできるかもしれないと、思うようになりました。」

書く事で桜木が向き合い続けてきた父、「タケオ」は現在87歳になる。且つてラブホテルのあった場所で、紫乃の母「サトミ」と2人で暮らしている。

桜木「母は認知症で、私の事もよく憶えていない、5分前の事も分からないのだけれど、昔苦労させたからって、父がずっと面倒を見ている。お前達は嫁に行った人間なんだから、俺達のやる事に口出さないでくれって、好きに生きてきた男のセリフだなと。世の中がどう思うか分からないが、できるだけ口を出さないで黙って見てるのが最後の親孝行かな、と。父は、あれで責任をとっているつもりなんだと思います。」
佐野「今迄の…」
桜木「"落とし前"をつけている。"落とし前"って言葉が、彼にはきれいにはまるんじゃないか。」
佐野「男だ!」
桜木「何だかんだ言っても。小さな時は随分殴られたけど、嫌いにはならないです、私も。」
佐野「いいなあ。娘にそんな事言われてみたい。」
桜木「そうですか。嫌いじゃないですよ、そんな人生もあるって事を教えてくれた一番近い人なので。」

桜木は「タケオ」と「サトミ」の晩年を小説『家族じまい』に描いた。
認知症が始まった「サトミ」と伴に暮らす「タケオ」、そして2人と向き合う家族達。
わだかまりを超えて関係を結び直す、その日々を"家族じまい"として描いている。

桜木「"家族じまい"は"お終い"ではなく、最近辿り着いたのが"お片づけ"という言葉で、片づけるって、人それぞれ気持ちのいい形に持っていくという事だと思う。」
佐野「同感です!」
桜木「"お片づけという言葉に行き着いて良かった。その後を暮らしやすくする、生きやすくするという点で、片づけて身軽になって、また歩いていく。」


ディレクター・編集 金本麻里
 
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