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2025年08月25日14:48

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松本第1日目〜OMF オペラ《夏の夜の夢》��

8/20(水)、松本の旅第1日目の続きは、OMF(セイジ・オザワ松本フェスティバル)のプログラムからベンジャミン・ブリテンのオペラ《夏の夜の夢》。今回の旅の主目的である。

元はと言えば、恩師齋藤秀雄(1902-74)の没後10年を記念し、小澤征爾が秋山和慶らに声をかけて催されたメモリアル・コンサートからSKO(サイトウ・キネン・オーケストラ)が生まれ、1992年には「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」創設、2015年からはOMFに発展した。
その小澤征爾(1935-2024)は昨年2月に亡くなったが、OMFはこれからも続いていく。

今年は8/2〜9/9の間、様々な企画があるが、本オペラはそのめだまで、8/17,20,24の3回、まつもと市民芸術館で公演が行われる事となった。

タクトを振るのはOMF主席客演指揮者となった沖澤のどか、演出はロラン・ペリー。
注目の公演で、愉しみにしてやってきた。

16:00頃ホテルを出、歩いて本町通りを左折、あがたの森通りを10分強東進すると、曲線の美しいまつもと市民芸術館が右手に現れる。設計は伊東豊雄(1941- )。

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ホール入口と、夢に誘うようなホワイエへのスロープ。
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4層の客席は最大1800。東京文化会館大ホールが2300なので、その78%という規模感。

私は1階9列34番の席(25000円)を買う事ができた。9列と言っても、オーケストラピットが入ると3列目である。右側のブロックだが、すぐ左が通路なので、視界は良好。
開演は17:00、第2幕後に休憩、第3幕の幕が降りるのが19:55の予定である。


イギリスは世界に植民地を拡げた大帝国だったが、音楽面ではヨーロッパの後進国だった。バロック時代のヘンリー・パーセル(1659-95)以来、200年間もさしたる作曲家が生まれなかった。その間、英国王朝は、ヘンデル,クリスチャン・バッハ(大バッハの末子),ハイドン,ブラームス,チャイコフスキー等を招聘して代用した。
近現代になってようやく、エルガー(1857-1934),ホルスト(1873-1934)、そしてベンジャミン・ブリテン(1913-76)が活躍するようになる。中でも、歴史的価値で言えばこのブリテンが突出する。
実に多様な作品を書いたブリテンだが、オペラは16本を数える。今回の《夏の夜の夢》は11作目に当り、Op.64となっている。

本作は1959年に着手、翌年完成させた。
オールドバラ音楽祭で使われるジュビリー・ホールの改修・杮落し公演に間に合わせるため、時間が足りず、台本作家に依頼する事をやめ、自身とテノール歌手にして生涯のパートナーとなったピーター・ピアーズ(1910-86)2人で台本を書きあげた。
原作はウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)、同題の戯曲全5幕(1590年代か?)。これを3幕に仕立てた。言語は勿論英語。シェイクスピアが書いたセリフをそのまま使っている部分もかなりある。
初演は第13回オールドバラ音楽祭前掲ホール、演出はジョン・クランコ、指揮は自身が当たった。作品は国際的なヒットとなった。

本オペラの登場人物はかなり多いが、3つのグループに括る事ができる。即ち、妖精達、恋人達、職人達である。
ブリテンは音楽の様式を使い分け、3つのグループを描きだしている。

・アテネ郊外の森に棲む妖精達
オーベロン 妖精の王(カウンターテノール)
タイターニア 妖精の女王/オーベロンの妃(コロラトゥーラ・ソプラノ)
パック/別名ロビン・グッドフェロー オーベロンに仕える妖精(語り)
子供の妖精達 タイターニアに仕える(児童合唱)

・アテネの恋人達
ライサンダー ハーミアの恋人(テノール)
ハーミア ライサンダーの恋人(メゾソプラノ)
ディミートリアス ハーミアを横恋慕する男(バリトン)
ヘレナ ディミートリアスを片思いする女(ソプラノ)

シーシアス(ギリシャ名テセウス) アテネの公爵(バス)
ヒポリタ アマゾン族の女王(メゾソプラノ)

・劇中劇を演ずる村の職人達
ボトム 機織屋/劇中劇ではピラマス役(バス・バリトン)
クィンス 大工/同作家役(バス)
スナッグ 指物屋/同ライオン役(バス)
フルート ふいご修理屋/同シスピー役(テノール)
スナウト 鋳掛屋/同壁役(テノール)
スターヴリング 仕立屋/同月の光役(バリトン)

第1幕は妖精達が棲む月夜の森の中。低弦のグリッサンドの繰り返しによる序奏で、観客は現実世界から夜と夢の超自然界に誘いこまれる。管弦楽は小編成だが、2台のハープ,チェンバロ,チェレスタ、そして様々な金属系打楽器が使われ異国情緒も醸す。(*)
頭に小さな明かりをつけた無垢な子供の声の妖精達が現れ、自己紹介したり、妖精の女王タイターニアに仕えている事などを歌う。
そこへパックが登場。背が低く、だぶついたシャツで舞台を走り回る。中年のオジサン顔だが、女優が演じているらしい。彼には歌はなく地声の語りのみ。
子供の妖精達が歌うところでは、オーベロンに仕えているパックはいたずら好きであわてん坊、失敗も多い。

 (*)第2幕の序奏は、眠りを象徴する4つの和音が弦楽器,金管楽器,木管楽器,ハープと打楽器の順で演奏される。2つの序奏は、実は共に12音の音列から導きだされているのだが、ブリテンの音楽は、前衛と調性の語法を巧みに融合させ、決して無機的な境地に陥らないのが不思議だ。

そこへオーベロンとタイターニアが天上から降りてくる。ワイヤーで吊られているらしいが、そのダイナミックな動きが、異世界の王と女王らしさを引きだす。
第1幕では、別に、クレーンに乗って客席の前方迄せりだしてくる場面もあった。よく見るとクレーンは影で複数人数の黒子達が手で動かしており、動きのにスムースさに驚かされた。
ワイヤーリフトとクレーンの巧妙な使用は、本オペラの魅力の1つとなった。
第2幕以降で使われる巨大な鏡も、オペラの舞台空間を現実世界から夢の世界へと拡大させる上で大きな効果があった。
これら大道具はフランス・リール歌劇場のプロダクションを使用している。

妖精の王オーベロンの声はカウンターテノールで、性を超越したイメージをもたらす。
古典派以降殆ど使われなくなったが、バロック時代にはカウンターテノール(その多くはカストラートが当たった)は英雄など男性の主役によく使われた。ブリテンは、性のみにあらず、遥かな時代の往還もオーベロンの声によって感じさせようとしたのだろう。
オーベロンは、タイターニアが囲っているインド人の小姓を我がものにしようとして彼女と言い争う。タイターニアは色よい返事をせず、子供の妖精達と伴に去っていく。

オーベロンは苛立ち、パックを呼び寄せ「惚れ草」を探して来いと命令。
眠っている人の瞼にその花の汁を垂らすと、目覚めた時目の前にいる者を好きになってしまうという代物だ。
パックは思慮もなく返事をするとすぐさま飛び去る。
パックの軽薄な動きには、軽やかなトランペットと太鼓がいつも伴う。ワーグナーのライトモチーフをブリテンが意識していたのは間違いないが、そこ迄のしつこさはない。

(続く)
 
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