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2025年07月02日11:22

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演劇パルコプロデュース2025『星の降る時』

6/29(日)、穂の国とよはし芸術劇場PLATでパルコ・プロデュース2025『星の降る時』を観る。

フォト

東京パルコ劇場で5/10〜25回、その後、山形のやまぎん県民ホールで6/8、1回、兵庫県立芸術文化センターで6/12〜5回、福岡のキャナルシティ劇場で6/21〜3回、最後がここ豊橋で6/27〜3回、全部で37回の公演があり、私が観たのはその千穐楽だった。

台本を書いたのは英国女性ベス・スティール。初演は2023年1/24〜3/16、ロンドン。2024年度ローレンス・オリヴィエ賞BEST・PLAY賞にノミネートされた。
翻訳は小田島則子、演出 栗山民也。

ある家族の三姉妹、その末娘が結婚式を迎える1日を描く。
人生で最も晴れやかな日になる筈だったが、それぞれの問題が噴出して家族は混乱の極みへ。

ロンドン近郊、ノッティンガム州マンスフィールドはかつて炭坑の町として栄えたが、石炭は掘り尽くし、今は失業している人も多い。三姉妹の父トニー(段田安則)も元は炭鉱夫だった。

末娘シルヴィア(三浦透子)はポーランド移民の青年マレク(山崎大輝)と恋に落ち、今日の結婚披露宴の準備の真っただ中。個性的な姉達に比べると静かで引っ込み思案だが、芯は強い。

先頭に立って支度をしているのは、長女ヘーゼル(江口のりこ)。彼女の二人の娘、思春期のリアン(西田ひらり)と、まだ幼さの残るセアラ(佐々木咲華/下井明日香のダブルキャスト)がその周囲で遊んでいる。
ヘーゼルの夫ジョン(近藤公園)は移民に職を奪われて失業状態。ヘーゼルが倉庫勤務をして、家計を支えている。
夫婦には、心の底にポーランド移民に対して面白くない気持ちがあり、言葉の端々についそんな思いが出てしまう事がある。

次女マギー(那須凛)は実家を出て離れて暮らしているが、今日は久しぶりで帰ってきた。多情で奔放な性格、3度結婚して3度失敗している。亡くなって既に長い母リンダ(つまりトニーの亡妻)からは「欲張りマギー」と呼ばれていた。
大分あとになって分かるのだが、マギーが家を出たのは、長女ヘーゼルの夫ジョンとの間に不倫の関係があり、それから逃亡したというのが事実らしい。

ヘーゼルはジョンと長くセックスレス。その原因にマギーがいる事を察知してかしないでか、心中に悶々と押し殺したものがある。

三姉妹の父親トニーの弟ピート(八十田勇一)が妻キャロル(秋山菜津子)とやってくる。キャロルは派手で物言いもはっきりした性格のため、三姉妹の母代わりとして何かと口も手も出すが、空気を読めないところがあり、3人からは時に煙たがられもする。
トニーとピートはもう長年に亘り絶縁状態で口を利かない。今日は久しぶりの顔合わせで、ピートは嫌々の表情。

表面的にはコミカルな会話が飛び交うが、何かひと騒動起こっても不思議はない気配もあちこちに潜んでいる。

末娘シルヴィアが自分で借りてきたウェディングドレスを着ようとするのだが、ファスナーが上がらない。2人の姉が力まかせに引きあげようとするが動かない。シルヴィアは納戸に母のウェディングドレスがあった事を思い出す。
それを着て出てきたところに、父親トニーが現れる。妻の純白のドレスを着た末娘シルヴィアを見て、息を飲む。

レストランかホテルか、場が変わる。
最後の晩餐のような横長のテーブルに、皆三々五々やってきて座る。中央にシルヴィア。ピートは兄を避け、妻と離れた一番下手に腰をかける。
最後に結婚相手のマレクが到着。何故か分からないが、マレク側の親族は誰もいない。
明るいマレクは皆の前で挨拶、アルバイトのためにポーランドからやってきたが、事業を起こすつもりだと張り切る。そして、ポーランド製のウォッカを注いで回る。
ヘーゼルの言葉の端には、マレク個人にではないものの、移民に対する差別がつい混じる。
キャロルは一気にグラスを開け、皆呆気にとられる。
マレクは歌を歌い、踊りだす。
皆も、浮かれて陽気に踊りだす。

マレクがシルヴィアに言った言葉、君は太陽で僕は月、ピートはそれを引用し、水星・金星役、地球役などを皆に当てがう。
舞台の床には光る輪が現れ、中心に太陽、水星・金星・地球はその周りをゆっくり回る。月役はどう動けばいいか、難しい。ピートはリアンを指導する。
何億光年も前に宇宙爆発があり、天体の関係ができあがり、そこから変化しないように見えているが、今も宇宙は少しずつ変化している。

休憩となり、皆バラバラになる。
キャロルは呑みすぎて、裏庭で吐いている。
隅で、マレクは新妻シルヴィアに、ヘーゼルの移民蔑視の口調に対する正直な気持ちを言う。内向的なシルヴィアだが、口論になる。
ジョンは何とかしてマギーに近寄ろうと試みるが、マギーは逃げ回る。
だが、遂に折れ、キスを交わす。
その現場をキャロルとリアンが見てしまう。
不穏な空気をよそに、古い思い出の因縁から、トニーとピートはまるで子供のように取っ組みあいを始める。

実家に戻っても、リアンの様子がおかしい。
母ヘーゼルは彼女を問い詰めるが、リアンは答えない。
ヘーゼルはジョンに相談しようとするが、彼は心ここにあらず。
彼女は夫に対し溜まっていたものを吐き出す事となる。
過激で赤裸々な言葉も乱れ飛ぶ。

トニーは、下の孫娘セアラが炭坑址で拾ってポケットに入れていた黒光りする石を渡され、静かに話しだす。
石は何も言わない(けんかもしない)が、これは紀元前何万年も前に生まれた。何万年もかけて石はこうなった。
生物発生以前の地球の話と宇宙・天体の話は、どこか似ている。

何を思ったか、リアンがマレクにキスをし、泣きながら飛び出ていく。
驚くマレク、シルヴィア、そしてヘーゼル。皆呆気にとられるばかり。
しばらくしてリアンの不在に気付いたヘーゼルは、慌てて近所を駆け巡る。
ヘーゼルはつい最悪の事態を想像して慄き、理由も分からぬマレクを責める。
だが、リアンは2階の納戸にいたのだった。

家族の崩壊の危機、その解決の糸口が見つからないまま、三姉妹は暗い部屋で鉢合わせする。
性格の異なる3人の、理屈でなく身体の反応。
狂ったように踊りだすヘーゼル。それを見て、マギーとシルヴィアも激しく踊りだす。
切ない踊りだ。
3人の足下に、また光る輪が現れる。
中心に太陽はないが、3人は今もその惑星のように見える。

宇宙から眺めれば、1惑星の1島国の家族のトラブルなど何でもない。
A星とB星がぶつかったら、星々の欠片が何十万も地表に落ちてくるだろう。
地球は崩壊してジ・エンドかもしれないが、でもそこからまたC星が生まれるかもしれない。
原題『Till the Stars Come Down』を思い起こす。
人間は勘違いや間違いを繰り返し、転び、ぶつかり、絶望し、が、また立ち上がって歩き出す。
何と愚かで、愛おしい。


作 ベス・スティール
翻訳 小田島則子
演出 栗山民也
美術 松井るみ
照明 おざわあつし
衣装 前田文子
音楽 国広和毅

[付記]
席は1階M列17番。

[参考資料]
パンフレット『星の降る時』
 執筆 栗山民也,小田島則子,品田知美,關智子
 発行 2025.5.10(株)パルコ
 
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