3/13(木)に上京、東京都現代美術館で開催中の企画展「音を視る 時を聴く 坂本龍一」を観てきた。
・会期 2024年12/21〜2025年3/30
チケットを事前予約できなかったので、当日券を購入し、会場に入る迄に40分程時間がかかった。
観客は年齢層が幅広く、かなり混み合った。
坂本龍一(1952-2023)については、これ迄興味をもって動向を見つめてきた。
様々な機会を捉えてレポートしてきたが、正直に言って、私の興味が偏っている事は否めない。
世の中には、坂本龍一の展覧会って何? 何が観れるの? という方も少なくないのではないか。
今年2/2、NHK-Eテレの「日曜美術館」で本展の特集『音を視る 時を聴く 坂本龍一×アート』が放送されたので、その内容も加味し、音楽を超えた領域の坂本についてレポートする。
坂本がYMOを結成したのは1979年26歳の時。シンセサイザーやコンピュータなど当時の尖端のテクノロジーが坂本の武器になった。1983年散開。
1985年、33歳の時「つくば科学万博」で、ジャンボトロンを使用した実験的ライブパフォーマンス《TV WAR》(コンセプト浅田彰)に参画。坂本は音楽を超えた領域に一歩進み出る。
40歳代になると、坂本はメディアアーティストの最先端の1人 岩井俊雄(1962- )とタッグを組んだ。
本展に展示された《Music Plays Images × Images Play Music》には 1996‒1997年と2024年2つの年代が並記されている。
2人は1996年、水戸芸術館で音楽と映像のコラボレーションパフォーマンスを行った。坂本が弾くMIDIピアノから出力された演奏情報が、岩井のプログラムにより瞬時に映像となり、スクリーンに投影、可視化された。
当時まだ珍しかったインターネット中継を用いて、視聴者と坂本のセッションが試みられるなど、音楽と映像メディアを融合させる様々な実験が行われた。
これは翌1997年9月、オーストリアのリンツで開催された世界的メディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ」のインタラクティブアート部門でグランプリを受賞。
同年12月、恵比寿のザ・ガーデンホールで行われた「MPI×IPM」では、坂本の演奏するMIDIデータを配信し、全国各地の中継会場に設置されたピアノをリモート演奏させる公開実験も行われた。
坂本は常に新しいメディアの使用に積極的で、画期的な試みはのちのメディアアーティスト達に多大の影響を与えた。
2024年は、この現代美術館での展示に合わせて、岩井のアーカイヴ資料から、アルスエレクトロニカでの坂本の演奏のMIDIデータと映像データを発掘し、再現展示を試みた。IT環境が様変わりしていて、これは簡単な事ではなかったようだ。
反転された坂本の演奏映像は鏡を使ってガラスに反射され、あたかもその映像が生ピアノを演奏しているかのようなイリュージョン。ガラスの向うに行くと、無論演奏者はおらず、自動演奏ピアノがデータに反応し、坂本の指のタッチから細部のニュアンスに至る迄表現しきっているという訳だ。
坂本が初めて発表した本格的インスタレーション作品、《LIFE-fluid,invisible,inaudible…》(2007)。
〜坂本龍一+高谷史郎
本展の1展示室の天井からは9つの水槽が吊り下げられていて、中に霧を発生させ、上から映像が投映される。空間には22個のスピーカーが設置され、場所によって音の聴こえ方が変化する。霧と水の揺らぎにより、400以上のシークエンスを持つ映像と音は、空間と床で刻一刻変化する。
その音と映像殆どの基となったのは《LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999》。
21世紀を迎えようとする年、20世紀を総括しようというコンセプトで、浅田彰を始め当時を代表する頭脳が参画した。映像を依頼されたのは高谷史郎(たかたにしろう/1963- )。彼はその後、坂本のアート作品のヴィジュアルの多くを共作した。
今年2/2、NHK-Eテレの「日曜美術館」の特集における関係者の発言をピックアップしてみる。
高谷史郎
…坂本龍一は1999年、《LIFE》という、20世紀を振り返り、そして次はどういう世紀にしなければいけないか、そんなメッセージを籠めたオペラを作った。20世紀の記録、戦争,革命,科学,哲学など、パフォーマンスも加えつつ次々見ていくというスタイルで、流れ去っていくデータのようだった。
公演後、それらの1つずつをじっくり味わえるような方法はないかと考えた時、インスタレーションがある、と私は答えた。
当時京都の庭を一緒に歩く事があったのだが、坂本は、庭みたいに好きな時に好きなだけ見られるものを作りたい、そう考えていた。
大徳寺の真珠庵を訪ねた時の体験は大きかった。小さな茶室は光もない暗い部屋。入った途端に大雨がきて、ザーッという音とバチバチする振動を体験した。
坂本は言った、"紙一枚隔てる事によって、外にいるよりも外を感じた"。外に出たら雨は上がり西日が射してきて、光の中へ。…
のち坂本は、時間を超越し宇宙に放り出されたような感覚だったと、そのインパクトを語った。
同番組にゲストとして呼ばれた批評家 浅田彰(1957- )は、《LIFE》でコンセプトデザインとして関わっていた。
浅田彰
…《LIFE》はオペラと称し、20世紀の歴史を全部振り返りながら、20世紀の音楽史も同時に総括するという、良くできた作品だったとは思う。ただ、起承転結で構成されているため、長時間、直線的にずっと見続けなければいけない。そういうふうに押し付けたくない、それぞれ好きな方向から入って好きな順番で楽しんでもらえればいい、と坂本は考えた。
結果、2007年の《LIFE-fluid,invisible,inaudible…》は、自由に歩き回り、床に寝転がったりして見てくれればいいものに仕上がった。…
(続く)
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