「アブソリュート・チェアーズ」展を観たあと、そういえば同じチケットで同館の常設展にも入れるんだったと気がついた。
常設展は「2024年度第2期コレクション展」、会期は同じ7/18〜9/23。
先に日記に書いたように、名古屋市美術館と愛知県美術館、どちらの企画展も規模が大きく内容の濃いものだったため、少々疲れてはいたが、さっと観る事にした。
全部で70点程もの展示があり、近年コレクションに加えたものに良質なものが見られ、新鮮な思いがした。県美の継続的な蒐集活動に嬉しさを感じた。
例えばゴーギャンの《木靴職人》(1888)やバルテュスの《白馬の上の女性曲馬師》(1941/1951加筆)、キルヒナーの《グラスのある静物》等。
日本人作家では、ここはもともと岸田劉生や草土社の画家の作品を有していたが、ますます豊かになってきた。
コレクション展の一番最後のコーナーに、今年3月に亡くなった舟越桂の作品が2点あって、追悼の言葉がパネルに掲げられていた。父 保武の作品も1点あった。
先月、桂の姉 末盛千枝子の素晴らしいエッセイ集を読む機会があり、これ迄の桂作品との出会いを整理してみたばかりだったので、偶然の遭遇とは思えなかった。
展示されていたのは2点。
《つばさを拡げる鳥がみえた》(1985)
《肩で眠る月》(1996)
後者のみ撮影可となっていたので、様々な角度から撮った写真を下に掲示しておく。
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(3
(4
(5
そして、以下、県美追悼の言葉。
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追悼 舟越桂
彫刻家の舟越桂さんが、本年3月29日に72歳で帰天されました。安らかな眠りをお祈りいたします。
舟越桂(以下敬称略)は1951年、彫刻家舟越保武(中略)の次男として岩手県盛岡市に生まれました。三男の直木(1953-2017)も抽象彫刻家です。
桂は東京造形大学と東京藝術大学大学院で粘土による具象彫刻を学びましたが、大学院在学中に函館の修道院(*1)から木彫の聖母子像を依頼されました。楠(中略)で制作するうちに「この材質なら頭の中にもやもやとあるイメージ、人物をリアルに、ポートレートのように作ることができるかもしれない」と思ったといいます。
1980年に舟越は、楠の木彫に薄く彩色した等身大の上半身像を作り始めました。ワイシャツやジャケット、セーターなどの着衣像であることについて「普通のひとは、裸の状態ではいませんから」と述べています。
1982年からは顔に大理石製の眼球をはめ込んでいます(*2)が、 やや外側に開いた瞳は遠くへ視線を投げると同時に、自分の内面を見つめているかのようでもあります。無言の表情と静的なポーズは、瞑想的な雰囲気をまとっています。ここに展示している1985年作《つばさを拡げる鳥がみえた)(中略)はその一例です。
1988年のヴェネツィア・ビエンナーレで高い評価を得た後、角のような髪型で非日常的な服を着た中性的な人物像も作られ始め、90年代半ば以降は異形の像(*3)が主となります。2005年からのスフィンクスシリーズ(*4)では、半人半獣両性具有の裸体像によって逆に人間とは何かを問い直し、戦争など人間の愚行への怒りや嘆きも表されました。
1996年作の《肩で眠る月》は前年に始めた「山のような人」の1点で、グリーンのインクで着彩された大きく丸みある胴体は、山をイメージしています。舟越は東京造形大学に通う車の中から八王子城址の山を見て「あの山は俺の頭の中に入る」と感じたといい、約20年の時を経て人間の存在の大きさや想像力の雄大さを示すものとして造形化しました。
この作品では両肩に黒い小山と三角屋根の家があり、右肩の家には小さな出入口への階段(*5)も彫り出されて、大きさがさらに強調されています。また、ラグビーキャップのような帽子を被った頭の左後方にはもう一つの小ぶりな顔(*6)が表されています。詩的な題名とも相まって、この顔が月なのか、あるいは口をわずかに開けた正面の顔が眠り、もう一人の自分が目覚めようとしているのかなど、作品を観る私たちにも様々な想像を促します。
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注は全て私の備忘のため。
(*1) トラピスト修道院。
(*2)《マスク》。頭部のみ。
(*3)《月が走る》(1995)。また、更に遡れば、角が生えた人物像の《言葉が降りてくる》(1989)を挙げてもいいかもしれない。
(*4)《風の日のスフィンクス》(2005)。
(*5) 上の写真より(2 参照。
(*6) 上の写真より(3〜(5 参照。
《肩で眠る月》は、制作翌年の1997年、平櫛田中賞を受賞した。
像を観て、改めて桂のシンサリティが心に沁みた。
同じ舟越作品で、展示しているもう1点《つばさを拡げる鳥がみえた》が何故写真不可なのか、念のため係員に尋ねると、個人蔵で委託展示品のため、との事だった。
これで名古屋行にまつわるシリーズレポートを終わりにする。
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