3/16(土)、名古屋に出て名古屋フィルハーモニー交響楽団の第521回定期演奏会を聴く。
愛知県芸術劇場コンサートホールが改修工事中(’24.3.31迄)のため、今回も会場は金山のNiterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール。
今回は直前に指揮者変更の案内があった。
そのeメールが来たのは3/11(月)だった。
下はメールのあとに来たハガキ。
変更の理由は、文面にある通り、
「指揮者のアレクサンダー・リープライヒ氏は、高熱を伴う重度の副鼻腔炎と気管支炎のため、出演が不可となりました。代わって、松井慶太氏が出演いたします」。
当日のプログラムには、管弦楽版として世界初演となる藤倉大の協奏曲が入っていたので心配したが、曲目は変更せずにやってくれた。他の2曲は演奏経験もあるだろうから問題はないとしても、直前に請けた松井慶太は大変だったのではないか。
私は名前も初めて聞くが、松井は1984年生まれ、2022年9月からオーケストラ・アンサンブル金沢の指揮者を務めている由。
改めて当日のプログラムを紹介しておく。
[1]ブラームス《ハイドンの主題による変奏曲》Op.56a
[2]藤倉大 ヴィオラ協奏曲《ウェイファインダー》
ヴィオラ アン・レイレファ・ランジロッティ
〜休憩〜
[3]ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調Op.92
今日は[3]については措いて、[1][2]についてレポートする。
◆ブラームス《ハイドンの主題による変奏曲》Op.56a
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)は変奏曲形式を得意として、ピアノのためにはいくつも書いているが、管弦楽のための変奏曲はこれのみ。
1873年の作曲だから、ブラームス40歳になる年である。
彼が交響曲第1番を書いたのは大変に遅くこの3年後であるから、管弦楽法等、この曲を通して学んだ部分も多かった事だろう。
変奏曲とは言っても、彼は全体を交響曲のように構築している。
56aという作品番号は、並行して(事前にと考えるのが自然)2台のピアノのためにこの変奏曲を書いていて、そちらを56bとしているところから来ている。
本作は、以下のように、主題と8つの変奏及び終曲で成っている。
主題;アンダンテ 変ロ長調
序奏なしで、古風で心地好く簡潔なテーマが木管で奏され、チェロがピツィカートで伴奏する。(他の弦は休み。)
人を幸福感に満たす出だしで、誘われてつい体も動く。
変ロ音(♭シ)が耳に残り、この音の対位法やリズムやオーケストレーション等、様々な展開が、本作の変奏の主たるキーになる。
第1変奏;ポコ・ピウ・アニマート、変ロ長調
第2主題;ピウ・ヴィヴァーチェ、変ロ短調
…第1,2変奏が交響曲の第1楽章的位置づけとなっている。
通して変ロ音の反復が特徴的。
第1変奏は弦を中心に対位法的動きで立体感を持たせ、第2は木管の付点リズムで強弱の変化を見せる。
第3変奏;コン・モト、変ロ長調
第4変奏;アンダンテ・コン・モト、変ロ短調
…第3,4変奏は緩徐楽章的。
木管やホルンに現れる歌が長調と短調でコントラストを効かせ、次第にポリフォニックな展開を示す。
第5変奏;ヴィヴァーチェ、変ロ長調
第6変奏;同、同
…第5,6変奏はスケルツォ的。
第5はスタッカートが印象的で、第6はピツィカートの上にホルンとファゴットが軽快に生き生きとした動きを表す。
第7変奏;グラジオーソ、変ロ長調
…第7変奏も緩徐楽章的な位置づけで、のどかなシチリア舞曲風。
第8変奏;プレスト・ノン・トロッポ、変ロ短調
…第8変奏は間奏曲的とも言え、終曲につなぐ役割。不気味に動き回る弱音弦の上に木管が陰鬱な調べ。
終曲;アンダンテ、変ロ長調
…終曲はパッサカリア形式によるフィナーレ。
パッサカリアはバロック時代に流行した変奏スタイルで、執拗に繰り返される主題の低音旋律の上に様々な変奏を凝らす。
クライマックスでは冒頭主題のコラールが鳴り響き、一旦静まり返ったと思うと、突然テンポを上げて全曲を締めくくる。
冒頭の主題は、当時ハイドン作とされていたディヴェルティメントの第2楽章〈聖アントニーのコラール〉からブラームスが持ってきた。
だが、最近の研究では、このディヴェルティメントはハイドンの弟子イグナツ・プライエル(1757-1831)か、同時代の他の作曲家による作と考えられるようになった。〈聖アントニーのコラール〉の讃美歌風のメロディは、オーストリアの巡礼歌に由来すると言われる。
したがって、本来は《聖アントニーのコラールによる変奏曲》とでも呼ばれてしかるべきだが、《ハイドンの主題による…》があまりに定着してしまっている。
(続く)
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