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2023年11月06日23:18

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第9回静岡国際オペラコンクール〜本選

11/5(日)13:00〜、アクトシティ浜松大ホールで行われた第9回静岡国際オペラコンクール、その本選を聴きに行った。
第1次予選は10/28〜30、第2次予選は11/1〜2と行われたが、今回、私は本選だけチケットを買った。本選後17:00〜、結果発表と表彰式も見る事ができた。
本来第9回は3年前の2020年の予定だったが、新型コロナの影響を受けて、延期となった。第8回は2017年だったので、6年振りである。

以前にも書いたが、第8回は22ヶ国から191名の応募があったが、今回は33ヶ国、271名。
予備審査で参加者は76名に絞られたが、その後の辞退等もあって、実際第1次予選に臨んだのは60名だった。
60名を分析すると、日本が20名、韓国が19名、中国が10名と、東アジアの3か国が多い。欧米からの参加者は6名だった。
浜松国際ピアノコンクールのように、欧米からの参加者を増やす対策を今後望みたい。

そして、第2次予選の結果、本選出場者は6名となった。
抽選によって決まった演奏順の通り、以下にリストアップする。

1. パク・サムエル 30歳/バリトン/韓国
2. パク・ジフン 32歳/テノール/韓国
3. 伊藤尚人 26歳/バリトン/日本
 〜休憩〜
4. チョー・チャニ 31歳/バスバリトン/韓国
5. 山下裕賀(ひろか) 31歳/メゾソプラノ/日本
6. キム・ジャングレ・ノア 29歳/バリトン/韓国

フォト

左から1〜6の歌う順になっている。

第8回の本選はは結果的に全員男性だったが、今回は女性が1名本選に出場した。
高音域の歌手はテノール1名のみ、他はバリトン,メゾソプラノに集中したコンペティションとなった。

伴奏は第1次・第2次予選はピアノ、本選はオーケストラである。

 指揮 高橋直史
 オーケストラ 東京交響楽団

開始前、ピットの中で準備に余念がないオーケストラの面々。
フォト


本選では、出場者はオペラアリアを2曲歌う。1曲は「自選曲」。自分でこれを歌うと決めて事前申告した曲。
もう1曲は「選定曲」。こちらは、やはりコンクール前に出場者が予めリストアップして本部に申告しておいた4曲、その中から、審査委員会が第2次予選終了後に1曲選んで指定する。出演者の実力を測るのに都合の良い曲(なるべく自選曲とは性格の違う曲)を審査委員会は指定したいところだろう。
いずれにしても、第1次・第2次予選で歌ったオペラやアリアと重複してはならない事となっている。

以下、6人が本選で2曲何を歌ったか、併せて、会場でメモした私の感想を書き残しておく事とする。勿論、単なる1ディレッタントの私が注目する点と、審査委員が見るところは違うだろう、テクニカルな部分は素人には分からない。

1. パク・サムエル(Br)
・自選曲《タンホイザー》(ワーグナー)よりヴォルフラムの〈夕星の歌〉
・選定曲《ファルスタッフ》(ヴェルディ)よりフォードの〈夢か現か〉

ピアニッシモの出だし、ふらつかず落ち着いて安定感がある。長い節で少しずつ行うクレッシェンド、そのコントロールが良い。低域はすこし弱いか。
ヴェルディは性格表現が巧みで、ドラマとしての説得力があった。
2曲とも派手さはなく、コンクールに向かないような気もするが、審査委員はそうした事に捉われる事はないだろう。

2. パク・ジフン(T)
・自選曲《連帯の娘》(ドニゼッティ)よりトニオの〈友よ、今日は楽しい日〉
・選定曲《イル・トロヴァトーレ》(ヴェルディ)よりマンリーコの〈いとしの君よ〜恐ろしい炎〉

つい前のサムエルと比較する。テノール歌手は主役が圧倒的に多いから、選曲では優位だ。
明るく楽しい声と性格。中間部の高く跳ねる3つの音、難しいがよくコントロールした。ラストは派手に盛り上げ。
短調で暗い曲はどうこなすか興味があるが、本選の2曲では分からない。審査委員は第1次・第2次予選で確認しているに違いない。

3. 伊藤尚人(Br)
・選定曲《フィガロの結婚》(モーツァルト)よりアルマヴィーヴァ伯爵の〈溜息をついている間に〉
・自選曲《イーゴリ公》(ボロディン)よりイーゴリ公の〈疲れ果てた魂には眠りも憩いもなく〉

大変に豊かなしっかりした低域だが、声質にザラつきがある。そのため、表現に幅がなく、一本調子になりやすい。2曲とも重く鬱屈とした表現になった。

 〜休憩〜

4. チョー・チャニ(B・Br)
・自選曲《カルメン》(ビゼー)よりエスカミーリョの〈諸君の乾杯を喜んで受けよう(闘牛士の歌)〉
・選定曲《セヴィリャの理髪師》(ロッシーニ)よりドン・バジーリオの〈陰口はそよ風のように〉

自信があるのだろうか、大変いい笑顔で登場した。が、エスカミーリョで欲しい押しの強さ、低域の強さは不十分だった。
だが、2曲目になるとだんだん声が前に出るようになった。身体の演技力も大変良い。

5. 山下裕賀(Ms)
・選定曲《ウェルテル》(マスネ)よりシャルロットの〈ウェルテルが私の心にいると誰が想像できたかしら(手紙の歌)〉
・自選曲《ナクソス島のアリアドネ》(R・シュトラウス)より作曲家の〈私たちはきっとまた良くなりますよ〉

繊細な感情変化の表現に惹きこまれた。
どちらの曲も一面的でなく、一筋縄ではいかない人物造形が必要だが、素晴らしい表現力で、私はつい涙が出た。

6. キム・ジャングレ・ノア(Br)
・自選曲《ファウスト》(グノー)よりヴァランタンの〈故郷の土地を離れる前に〉
・選定曲《セヴィリャの理髪師》(ロッシーニ)よりフィガロの〈私は街の何でも屋〉

ぎすぎすせずまろやかな心地よい低域。バリトンは脇役が多いが、明るく的確な人物表現で、いつの間にか主役を食っているようなバリトンになりそうだ。
ロッシーニの例の早口歌唱(アジリタ)も見事で堂に入ったもの、オーケストラを引っ張っていた。


1時間半程時間を空け、17:00から表彰式をするとのアナウンスで、私は駅ビルで軽食とワイン。
出る前に、ホワイエで、各自"これが私の思う1位"の出場者に投票をする。最も票を獲得した人が「観客賞」を受賞する事になる。
それぞれ素晴らしい歌や人物造形を愉しめて、サンドイッチもワインも一層美味しく、心地よいひと時を過ごした。


結果発表はこのようになった。

・1位 パク・サムエル(Br/演奏順1番)
・2位 パク・ジフン(T/2番)
・3位 キム・ジャングレ・ノア(Br/6番)

・三浦環特別賞 山下裕賀(Ms/5番)

・観客賞 キム・ジャングレ・ノア(Br/6番)

「三浦環特別賞」は日本人で将来性が最もある歌手に贈られる。"今後の向上に必要な経費に対し助成金を授与する"と規定にあるがあるが、いくらなのかは書いてない。
前回は城宏憲(T)、前々回は吉田珠代(S)だった。共に現在は二期会会員。
ちなみに、1位は賞金300万円、2位150万円、3位75万円。
本選に出場した歌手、1〜3位以外の3人は入賞として40万円。
「観客賞」は"副賞"とある。

表彰状授与は、静岡県知事 川勝平太(本コンクール実行委員会会長を兼ねる)他が行った。


〈付記〉
席は、アクトシティ浜松大ホールの1階7列14番。
7列と言っても、5列迄はオーケストラピットになるので、実質は前から2列目。中央ではなく、やや左のエリアだった。
 
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