(続き)
3.《ウエストサイド物語》より《シンフォニックダンス》
《ウエストサイド物語》は1957年初演のミュージカル。脚本はアーサー・ローレンツ、作曲レナード・バーンスタイン。
1961年には映画化もされた。
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を基に、異なる民族的背景を持つ2つのストリートギャングの抗争を描く。
モンタギュー家とキャピュレット家は、欧州系移民によるジェット団とプエルトリコ系移民によるシャーク団に置き換えられている。
主役のトニーはジェット団に属し、恋人マリアはシャーク団のリーダーの妹である。
今回演奏の《シンフォニックダンス》は、バーンスタイン自身がオーケストラの演奏会用組曲として1960年に編曲したもの。メドレーではないため、代表曲でも〈アメリカ〉や〈トゥナイト〉他、ピックアップされていないナンバーがある。
以下の9曲による構成。
・〈プロローグ〉アレグロ・モデラート
・〈サムフェア〉アダージョ
・〈スケルツォ〉ヴィヴァーチェ・エ・レッジェーロ
・〈マンボ〉メノ・プレスト
・〈チャ-チャ〉アンダンティーノ・コン・グラツィア
・〈ミーティング・シーン〉メノ・モッソ
・〈クール〉アレグロ
・〈ランブル〉モルト・アレグロ
・〈フィナーレ〉アダージョ
何れもよく知られた曲なので、個別の説明は省く。
〈マンボ〉は、体育館で行われるダンスパーティシーン。ジェット団とシャーク団のダンスバトル。様々なラテンパーカッションの使用、オーケストラメンバー全員による「マンボー!」の掛け声も愉しい。
今回は、ヴィオラのメンバーが、同曲演奏中、ギャングの気分で一斉にサングラスをかけるという演出があり、大いにウケた。
〈ランブル〉はジェット団とシャーク団の決闘の場面。トニーは銃で撃たれ、駆け寄ったマリアの腕の中で死ぬ。
フルートのソロがマリアの深い慟哭を表している。
〈フィナーレ〉はトニーの葬列か。絶望的なエンド。
4.バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版)
このバレエ音楽は、ストラヴィンスキー初期の三大バレエ曲の2番目として、1910年に作曲された。何れもディアギレフ率いるバレエ・リュスの公演のために書かれた。
原曲の1911年初演版は4管編成だが、1947年版は新古典主義に転じたあと、3管に縮小されている。
元々ピアノ協奏曲として発案されたので、ピアノの活躍が目立つが、1947年版の方がより一層の活躍を示す。ティンパニ,トランペットも同様。
1830年代、帝政ロシア、サンクトペテルブルクの冬。
4つの場で構成されている。
第1場 謝肉祭の市場
第2場 ペトルーシュカの部屋
第3場 ムーア人の部屋
第4場 謝肉祭の市場(夕景)とペトルーシュカの死
第1場
・導入
・人形使いの見世物小屋
・ロシアの踊り
第2場
・ペトルーシュカの部屋
第3場
・ムーア人の部屋
・バレリーナの踊り
・ワルツ(バレリーナとムーア人の踊り)
第4場
・乳母の踊り
・熊を連れた農夫の踊り
・行商人と2人のジプシー娘
・馭者と馬丁達の踊り
・仮装した人々
・格闘(ペトルーシュカとムーア人の喧嘩)
・終景、ペトルーシュカの死
・警官と人形使い
・ペトルーシュカの亡霊
冒頭、まとまりのない群衆が、頻繁なリズムの変化によって表現されている。ストラヴィンスキーはこうした雑多な喧噪の群衆表現が実に見事で、度々現れる。
ドラムロールで魔術師の登場。魔法の横笛(フルートソロ)で、見世物小屋の3つの人形(ペトルーシュカ,バレリーナ,ムーア人)に命を吹き込む。
人形達によるロシアの踊りが終わると、ペトルーシュカは暗い部屋に放り込まれる。
(いわゆる「ペトルーシュカ和音」がここで現れる。上声部はハ長調のドミソだが、下声部は嬰へ長調の#ラ#ド#ファ。こうした不協和音の使い方を「複調」と言って、ストラヴィンスキーは多用した。)
人間扱いされないペトルーシュカだが、密かにバレリーナに恋心を抱いている。
ペトルーシュカは帝政ロシアにおける下層の抑圧された人々の象徴である。
一方のムーア人の部屋は何故か豪華に飾り立てられていて、贅沢な暮らしをしている。
バレリーナは見た目に動かされる。
2人はワルツを踊りだす。(フルートとトランペットのデュオ)
暗い自室を抜け出たペトルーシュカはムーア人の部屋に闖入。2人の様子に嫉妬し、ペトルーシュカは体当たりを喰らわせる。
怒ったムーア人は逃げるペトルーシュカを追いかける。
謝肉祭の市場では、いろんな連中が次々に踊る。さまざまな楽器が特徴を生かして活躍し、踊りが目に見えるようだ。
そこへペトルーシュカが逃げてくる。追うムーア人の手には刃物。
追いつかれたペトルーシュカは斬られて倒れる。(タンバリン)
群衆の中でペトルーシュカは痙攣し、息をひきとる。(ピッコロソロ)
警官が来て魔術師を尋問するが、所詮ペトルーシュカはおがくずの詰まった人形である。
群衆はちりぢりに帰っていく。
夜が更け、魔術師がペトルーシュカのむくろを担いで行こうとすると、見世物小屋の屋根の上にペトルーシュカの亡霊が現れる。その雄たけびは怒りの抗議に。(トランペットデュオ)
怖れをなして逃げる魔術師。
広場は静まり返り、幕が下りる。
絶望的な雰囲気が場内に満ちる。
しばらくして大きな拍手が湧きおこり、指揮者は、活躍した各楽器の奏者を順次指名して礼をさせた。
聴衆は一人一人に拍手と歓声を送った。心地好い場面である。
アンコールは、同曲第1場最後の〈ロシアの踊り〉をもう一度。
〈参考資料〉
パンフレット「Incidental Music TBSK Orchestra The 14th Regular Concert」
執筆 高橋佑希,五十嵐和幸,山田慧,三宅雅也
発行 2023年8月、TBSK管弦楽団
YouTube
・《第6の幸福をもらたす宿》(M・アーノルド)
指揮 リチャード・ヒコックス
演奏 ロンドン響
・《ウエストサイド物語》より《シンフォニックダンス》(L・バーンスタイン)
指揮 L・バーンスタイン
演奏 ニューヨークフィル
録音 1976年
・組曲《マ・メール・ロワ》(M・ラヴェル)
指揮 沖澤のどか
演奏 N響
収録 2022年7/9、Bunkamuraオーチャード定期第120回
・バレエ音楽《ペトルーシュカ》(I・ストラヴィンスキー)
指揮 シルヴァン・カルブラン
演奏 読売響
収録 2022年6/30
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