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2023年04月21日22:35

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映画日記『レッド・ロケット』

2023年4月21日(金)

『レッド・ロケット』(2023年)
監督:ショーン・ベイカー
名駅・ミッドランドスクエアシネマ2

テレビでは大統領を狙うトランプが、威勢よく演説をしていた。
テキサスの小さな町に、ポルノ男優として一時代を築いたこともあるのに、いまは一文無しですっかり落ちぶれた中年男マイキーが舞い戻ってきた。
17年もほったらかしにしてた女房の家になんとか潜り込み、職をさがしてはみたものの、口は達者だがうさん臭いマイキーは誰からも相手にされず、結局はパッとしなかった若い頃と同じように大麻の売人になるしかなかった。
そんなマイキーがひょんなことから立ち寄ったドーナッツ店で、バイトをしてる17歳の女の子、その名もストロベリーちゃんに出会ってしまった。
マイキーは年の差も考えず、ドーナッツ店に通うことになり・・・・

口先だけのサイテーな自己中男の奮闘記。
ポルノ自慢のマイキーだけでなく、妻と同居する口やかましい義母、隣に住むへなちょこなアンチャンに、大麻密売を家業にしてる一家など、出てくる連中がろくでもない奴らばかり。
いっぽう、かれらがぐだぐだと生きてる向こう側では、製油のためだろうか、巨大なプラント工場が四六時中稼働していた。夜ともなると高い煙突から炎が上がり夜空を照らしている。
そこは実直な人たちが働く堅気の世界だ。
堅気の世界を象徴するプラント工場と、どうみても社会的には卑小でゴミみたいな存在でしかないマイキーたちとの対比が、映画の通奏低音になっていた。
よく映画というのは、主人公の成長を描くものだ言われる。
ところが本作の主人公マイキーは映画の最初から最後まで、なにも変わらない。
なにひとつ反省することなく、ふたたびイチかバチかの危うい賭にでるところでエンドとなる。
そのラストシーン、マイキーといっしょに観客の私が見たのは、幻想か真実か???
そして、その光景は希望なのか????
謎めいたラストシーンだったが、私はダメ男がたどり着いた希望と見た。
まったくの見当違いな連想になるが、このラストシーンに、金と人生を競輪ですってしまった堕落坊主の小沢昭一が、競輪場の喧噪の中で当たり車券の予想を辻説法のごとく語り始める日活映画『競輪上人行状記』(1963)が重なった。
ダメ男にも、光あれ。


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