MOMAT『重要文化財の秘密』特別講演会。
講師である貝塚先生は、ぼくに松本竣介の魅力を初めて伝えてくれた恩人であり、ニッチなところではルノワールの姪っ子の誕生日まで教えてくれたこともある。
アーティゾン美術館の名物学芸員であり、この4月からは乞われて千葉県立美術館の館長を引き受ける。
今回は講演のテーマよりも「アーティゾン、お疲れ様でした」を伝えたくて雨の竹橋へと乗り込んだ
藤島武二『匂い』+青木繁『運命』
ところが、自分の行動に常に現れる奇跡がまたここに起きる。
アーティゾンに所蔵されている重要文化財がその作家のものだから、当然のテーマなのだけれど、貝塚先生の講演は藤島武二、そして青木繁。それぞれの重文作品2点ずつに沿って語られた

「作品(絵)と学芸員は、ボケとツッコミみたいなもの。作者が得てしているものを調べ上げて、突っ込んであげる。こんな研究が面白い」
まるで名探偵のような貝塚解釈。
1時間の持ち時間を熱が入って15分オーバー。タメになった講演だった。
貝塚先生に御礼を激励を告げる。

「昨年の7月、シャルパンティエを教えていただきありがとうございました」

「誰やねん」

「とても勉強になる講演でした。実は、明日、海の幸へ行くんです」

「それはそれは」

「千葉県立美術館でのご活躍をお祈りいたします」
そんな一方通行型会話を繰り返し、ルーティンのようにサインをいただいた
その夜、3年振りに集まった同級生たちとともに、ウーロン茶をジョッキ4杯平らげて、それでも睡眠時間6時間を摂ったのち、やがて日曜日を迎える。
雨の東京湾。黒パッソを積み込んだフェリーに乗って、あっという間の40分
アクアラインなら10分で渡れると言うなかれ。
房総半島の突端は、久里浜からの航路が洒落ている。
目指すは3年振りとなる海鮮食堂
《海鮮食堂・だいぼ》
3年前の3月。コロナくん自粛の走り。
大衆迎合を嫌い、ひとりハンドルを握ってやってきた館山あたり。
週末は常に混雑する人気レストランも、付和雷同に自粛する人たちが増殖していて、昼過ぎの《だいぼ》には、AV撮影隊とおいらしかいなかったようだ。当時の日記がそう語っている。
今回は日曜日なれど、お陰様の大雨
これなら客足も少なかろうと見繕って尋ねたものの、驚きの4組待ちになっていた。
ただ、前夜に飲んだくれたウーロン茶4杯分の小便をたしているすきに、あっという間に番号が呼ばれて、美味しい美味しい大漁盛りにありつけた
どうやら、布良の海岸が至近になってきた。
青木繁のタブローのような海景が、どこを見渡しても視界に入ってくる。
いよいよ、念願の、そして3年振りとなる『海の幸』記念館再訪。夢は叶うものだ。
(つづく)

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