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2022年11月23日23:53

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本●「終着駅への旅」「エリ子、十六歳の夏」

朝から雨、終日読書。
図書館から借りてきた読みさしの2冊読了。

本●「終着駅への旅」(JTBパブリッシング)
櫻井寛・著

鉄道写真家の櫻井寛がタイトル通りJR線の終着駅を目指す。
北海道の稚内駅から鹿児島の枕崎駅まで、その数81駅。
奥付には2013年発行とある。
JR線の完乗を思いついたのが5〜6年前のことなので、増毛駅、江差駅、夕張駅、岩泉駅などすでに路線自体が廃線になっていたり、反対に路線が延伸されたことにより終着駅ではなくなった広島の可部駅や、鹿島サッカースタジアム駅のような特殊な駅をのぞき、ほとんどの駅に降り立った。
たいぶ記憶がうすれてしまった駅もあるが、いまでも降りたときの様子をまざまざと思い浮かべる駅もある。
稚内と枕崎より根室駅のほうが「さいはて」の駅にやって来たという感慨がいちばん強かった。
ただし稚内の駅ビルには思いがけず映画館があったので、映画ファンとしては別の意味で思い出深い。
神奈川県鶴見線の海芝浦駅、兵庫県にある山陽本線の支線・和田岬線の和田岬駅、山口県の小野田線の支線にある長門本山駅、いずれも発着が朝夕に集中し、しかも本数が極端に少なくかったこともあり、たどり着くのに難儀した。
その最たるものが2年前に廃駅になった北海道札沼線の新十津川駅。
朝一番に到着した列車が折り返しの終列車になってしまう。
その終列車を見送ったのち、4キロほど離れた函館本線の滝川駅まで歩くことになったのだが、予想より時間がかかってしまい、予定の列車に乗り遅れそうになりハラハラしたことが、いまでは楽しい思い出だ。
本書に載っている大半の駅を再訪することはもうないだろう。
そうおもったら、最後にページを閉じたとき、ちょっぴりさみしくなった。


本●「エリ子、十六歳の夏」(新潮文庫)
結城昌治・著

四捨五入すれば70歳という元刑事の爺さんが、家出した16歳の孫娘エリ子の姿をもとめ、新宿、六本木、錦糸町、吉祥寺、恵比寿etc、真夏の大東京を駆けずり回る・・・・

5編からなる連作長編。
少し前に、発端となる最初の一編を読み、続きが読みたくなった。
爺さんが探偵となるハードボイルド。
初出は1988年、35年も昔の作品なので描かれる風俗などが古めかしい。
正直、1988年というよりヒッピーやフーテンが街中をフラフラしてた1970年代の雰囲気だった。
その古さが、私みたいな年寄りには好ましい。
あの頃の夏の暑さというか、時代の熱さを思い出す。
古い日本映画を見る楽しさに通じるものがある。
いっぽう描写は古めかしいが、小説自体はとてもテンポがいい。
爺さんと、いつのまにか彼の相棒役となるキティという16、7のフーテン娘とのポンポンと弾けるような会話は読みどころ。
とにかく爺さんや大人相手にへらずぐちを叩くキティという娘がめちゃ可愛い。しかも、一見パープリンながら元刑事の爺さんですら感心するほど賢いとこがある。
「軍旗はためく下に」の結城昌治が、彼女のような愛すべきキャラクターを書いてたことに、今さらながらうれしくなった。



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