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2022年11月10日19:35

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本●「ひとり居の記」

本●「ひとり居の記」(平凡社)
川本三郎・著

読了。

雑誌「東京人」に2012年12月号〜2015年7月号までに連載されたエッセイ「東京つれづれ日記」を編んだ一冊。
「そして、人生はつづく」、に続くシリーズ第二集。
最初に手にした「台湾、ローカル線、そして荷風」が第三集になる。

独居老人、川本三郎の身辺雑記。
今回も映画に鉄道旅行と盛りだくさん。
著者といっしょにローカル線に乗ったり、見知らぬ町を徘徊している気分になり楽しい。
シリーズの三冊目となる今回は、精読を心がけた。
精読といっても、平易な文章なので辞書を片手にということではない。
それでは何を精読しているかというと、川本三郎が取りあげる本や映画の中から、気になった作家や作品、映画タイトルや地名などを備忘録として書き留めている。
宮地嘉六というプロレタリア小説家を初めて知る。
社会運動というより、勤労者の貧しい暮らしぶりを綴った作品のようだ。
読んでみたくなった。
高倉健は神奈川県のJR相模線沿いにある寒川神社を熱心にお参りしていた。新作映画の撮影前には必ず参拝し、撮影後にはお礼参りもしてたという。
健さんのファンなので、そうと知った以上は機会があったら私も参拝したいものだ。

今回もへえーとなった話題があった。
それは花街(かがい)についての一節。
花街は料亭、待合、芸者置場という三業があったことから産業地ならぬ三業地というらしい。
花街で遊んだことなどない川本三郎にとって、三業のうち待合がどういうところなのかよく分からなかった。
私も待合という言葉ぐらいは知っているが、内実についてはまったくお手上げだ。
川本三郎がある宴席で現役の新橋の芸者さんと話す機会があったので、思い切って「待合とはどういうところなのか」と聞いてみたそうだ。
以下本文より。

“芸者さんは、少し言葉を濁しながら「客と芸者が会うところ」と言ったあと、さらにこう説明してくれた。「料理屋も客と芸者が会うところですが、料理屋には風呂がありません。待合には風呂が付いてます”

そういうことなのか!!
著者といっしょに膝をうつ。
ちなみに、この芸者さんは成瀬巳喜男監督の『流れる』(1956)を繰り返し見ているという。
『流れる』に登場する山田五十鈴の芸者ぶりは自分たちのお手本であり、彼女が三味線を弾くシーンを絶賛していた。
こんなくだりを読めば、どうしても『流れる』をもう一度見たくなる。
三味線のシーンもそうだが、はたして『流れる』には待合は登場してたのだろうか?



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